5ページ目【自転車】
5ページ目【自転車】
真夏に自転車に乗って図書館に行こうとしていた。
田んぼのあぜ道をそのまま広くしてアスファルト舗装したような道なんだけれど、田舎だから道以外田んぼしかない。
ひたすら自転車を漕ぐけれど、途中で必ず誰かが荷台に乗った感覚がある。後ろを振り向いても誰もいない。
周りに人がいないのに肩をグッと掴まれ続けている気がするし、タイヤもひとり分沈む。ペダルも心なしか重い。
坂でも無いのに立ち漕ぎしないと前に進まない。
図書館に着く手前でいつもの急に軽くなるのが怖いというより不思議だった。余計汗をかくから腹が立つ。
日記にはあまり怖くなくて不思議なことみたいなスタンスで書いてあるけど、実際思い出すと気色の悪い体験だった。
図書館に行くにはその一本道が一番近道で学校の友人達もその道が一番近いと言っていた。
妹も弟も学校の友人も、その道は途中で自転車の荷台が重くなるって言ってたから恐怖感が麻痺していたようだ。
そこはいわくつきでもなんでも無く、影になる建物がない道なので、平らな道に見えて実は少し傾斜しているお化け坂なのかと思う。
ただ不思議なのが田んぼを抜けて道端の屋根付きのお地蔵様をお祀りしてあるところで、肩に置かれた手がパッと離れて降りてくので、あまり怖くなかった。
図書館に行こうとするたびその道を利用していたが、一、二分位遅くても別の道でも良かったのではないかとおもう。
今思えば、その道で荷台に乗って来るナニカに魅入られてたんじゃないかな。頑なにその道だけを使い続けていた。