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2ページ目【戸締め妖怪が出る九州の家】

    2ページ目【戸締め妖怪が出る九州の家】

 

 私が小学生低学年だったころの話。転勤族だった父が九州に行くことになり私たち家族も一緒に引っ越すことになった。

 

 父、母、私、妹、弟の5人家族で引っ越した家は、社宅で元々その土地の名士が住んでいた、すごく古くて大きい豪邸だった。

 閑静な住宅街で、周りの家もとても大きかったように思う。


 その家は何足も靴を置けそうな広くて大きな玄関、一階のトイレは洋式の男女別。台所と風呂場、お客様を呼べる広い座敷、暖炉の跡がある洋室。そして、住み込みのお手伝いさんが住んでいたと言われている狭い部屋。


 階段を上がると和室が二つ、どちらも何故か部屋の中に小窓がついていて、開けると屋根の中が見れるというもの。メンテナンス用だろうか。覗くと薄暗くて怖かった。


 そして、家を取り囲む大きい庭。塀に沿って植えられた椿の木、松の木、ツツジの木。



椿の花を髪の毛に飾ったり、ツツジの花の蜜をすったり、それを妹弟と取り合いしたりした。


松の木は三メートル位あるヒョロ長いもので、前の住人がつけたと思われる木製のブランコがくくりつけてあった。


 母は、木に吊ってあるロープが不気味だというけれど、私たち子供はジブリ作品に出そうな家だと庭を走り回って大喜びだった。

 

 そのブランコも風雨に晒され木が朽ちかけていたからか、妹と二人乗りしたら子供の激しい遊び方に耐えきれず、一週間で板の真ん中からぶち折れた。

 母は、やっと片付けられると喜んでいた。父が木登りしてロープを外した。


 そんな幼い私たちには家まるごと遊び場になっていたのだが、厄介な見えない存在が私たち家族以外にいたのだ。


 母が、ある日トイレに入ったまま出てこない。

 「香織ちゃん、いたずらせずに開けて!」と扉が開かないのは私がいたずらしてるからと思ったらしい。

 

最初はご近所に迷惑になると思い、小さめに優しく言ってたそうだ。

 扉の上部にあるすりガラスには人影らしきものが写っていたらしい。

 

 私はその時遊びに来ていた祖母と台所でインゲン豆の筋を取る手伝いをしていた。父は仕事で、幼い妹弟はお昼寝中だった。 

 


 十五分くらい経っても大人の体全部を使って解錠している状態で押してもびくともせず開かなくておかしいなと怖くなったそうだ。


 「開けてー、誰でもいいから開けてー、お願い開けてー。」


 その大きな声と扉を叩く音に私たちはびっくりして祖母が飛んでいって扉に手をかけて開けたら、すんなり開いたようだ。

 中から真っ青な顔で汗だくの母が出てきた。


 聞いてみるとトイレに閉じ込められたらしい。祖母に扉の前に誰かいた?ってきいていたので、私か他のこどもがイタズラしたんじゃないかと思ったけれど、私は祖母と台所にいたし前述の通り誰もトイレに近付居ていない。

 

 祖母は古い家だからそんなこともあるだろう。建付けが悪いかもしれないしと言っていた。


 母はよほど怖かったのか、それ以来家に一人でいる時はトイレのドア全開で使うようになったそうだ。


 さてこのトイレ戸締め事件からしばらくして、今度は私がトイレに閉じ込められた。

 トイレの鍵はかけていないのに押しても押しても開かない。


「お母さーん、トイレに閉じ込められた。開けてー!開けてー!」


 大声で叫ぶと母がこれまたすんなり開けてくれた。それから家で一人でいる時は私も扉を半開きにして完全に締まらないようにして使うようになった。


 その家に住んでいる間、何回も戸締めにされることがあった。


 トイレだけじゃなく部屋のドアが開かないようになることもあった。


 一番肝が冷えたことがある。

ある日妹が、二階で一人で走り回ってて、私は一階に居た。天井からドンドンと足音が響いてくる。


急に静かになったと思ったら


「お姉ちゃーん、助けて!出れない。助けて!」



 大絶叫している。私は慌てて階段を駆け上がり妹がいた部屋に行くと大きな洋服タンスの扉が観音開きに開いた状態で倒れていた。 

 妹がコートなどを掛けて入れる扉が全開の状態で床に伏せられ、その中に閉じ込められていた。


 その中から声が聞こえてきたので、怪我をしてないか聞いたけれどただ閉じ込められただけだと聞いて安心した。

 この大きなタンスは私じゃ重すぎて持ち上がらないので、庭で草むしりしていた父と母を慌てて二階の窓から呼んで来てもらって二人ががりでタンスを立てて事なきを得た。


 妹はボロ泣きで可哀想だったので、早く落ち着くように、自分も落ち着くように、泣き止むまで頭をよしよしした。


 それからというもの我が家では戸締めにされたら誰かを呼ぶとすんなり開けられることがわかったので、誰も動じなくなった。人が居るときしか起こらないので、解決策が見つかれば慣れたものである。

 

 そこで日記が終わっている。

 

 

 考察だが、母が閉じ込められたケースでは、窓に人影が写ったと言っていた。

 

 私のイタズラだと思ってたようだが、私の背はその扉のすりガラスの窓まで背丈が届かない。


 高学年にもかかわらず食べ物の好き嫌いが多かったので、背もあまり伸びずクラスでも前列ばかりであった。


 なぜ私だと思ったかきいたら、クスクスと女の子の笑い声がしたから私だと思い込んだようだ。大人並みの身長で子供の声の何か。考えるとこわいな。


次に、私のケース。ただ単純に建付けが悪くて閉じ込められたのかもしれない。でも人が開けるとすんなり開いた。その時は人影も声も聞こえずただただ閉じ込められただけ。


 最後に妹のケース、最初は妹がタンスによじ登ってひっくり返したんだと思ってたが、よくよく話を聞いてみると、扉が勝手に開き妹の上に倒れてきたそうだ。


 幼稚園ぐらいの子供の言葉なので怒られたくなくて嘘をついたんじゃないかと思ってたんだけど、日記には書いてないけど後に妹が小学生になってからもう一回あったことを思い出した。


 タンスを嫌ってその部屋では遊ばないようにしてたけれど、捜し物をしてたときにまた勝手に扉が開いて妹のいる方向に倒れて来たらしい。


 最初に倒れてきたとき、畳が平面じゃないから段差で倒れたのだろうと母たちは思って下に薄い板を敷いて水平になるように置き直していた。にも関わらずよじ登ってもいないのに倒れてきたタンス。でも運良く空いていたスペースに入って事なきを得た妹。この現象は何なのだろうか。

 一連の戸締め事件は男性には起こらない。父も弟も戸締にされたことがないなだ。

 私は戸締めの妖怪のせいだと今でも思っている。

 

 今現在その家は解体され別の新しい戸建てが建っていた。

googleストリートビューで確認済み。


遠くて行けないので確認しょうがないが、未だにあの戸締めの妖怪は新築でも人を閉じ込めて怪我をさせない程度に遊んでいるのだろうか。

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