1ページ目【幼少期住んでたアパート】
1ページ目【幼少期住んでたアパート】
私の幼少期、1番古い記憶はと言われたら、いつも思い出す天井いっぱいの赤い顔である。
天井に吊るされている赤ん坊をあやすおもちゃが付いた回転する飾り。自分が寝かされているベビーベッドの木枠、少し古くて茶色い木目の天井。
その間にある赤い赤い大きな赤鬼のような力み過ぎて顔面パーツが真ん中に集中している顔。天井いっぱいに広がっていて、サイズ感がおかしくて。赤ん坊だったはずの私が鮮明に覚えている記憶。目が開くか見えるかぐらいの頃のはずなのによく覚えているのは不思議だなと思う。
だからといって何かされるわけでもなく。ただこちらを凝視する顔が怖くて泣きじゃくっていた記憶もある。
日記帳にはこう書いてあったが夢かもしれないので、後日、母に尋ねてみた。
「お母さん、赤ちゃんの頃住んでた家ってこんな感じだったよね?」
「よくそんなはっきり覚えているわね。あなたが3歳くらいまで住んでたアパートよ。」
母はよく覚えているらしく、その賃貸アパートに住んでた頃あったいろんな話を教えてくれた。
父と母が新婚時代から住み始めたアパートで、2階建て4つの世帯が住んでる真ん中に階段がある建物で、住み始めてから母の様子がおかしくてなっていたという。そのアパートは4世帯しか住んでいないのに、とにかく永く住む人が少なくて、どの部屋も入れ代わりが激しかったそうだ。
2階の角部屋だった我が家は高い建物が他にはなく日当たりがいいはずなのに、玄関から一歩入っただけで湿気とどんよりした空気が漂い、母は次第に神経質になっていたという。
ある時、部屋に飾ってあった人形の目が生きてる人間の目玉を付け替えたようにギョロリとこっちを見た。小さくつぶらなひとみが濁った白目と黒目がある人間の目玉のようにぐるりとこちらをみたそうだ。隣のぬいぐるみも同じくこちらの動きを目で追って来るのだそうだ。
母は慌てて私を抱いて近所に住む母の実家に避難した。父が帰ってくるまで、子供と二人でこのアパートで居るのは無理だと思ったようだ。
ある時は、家のあらゆるところがパチッパキっとそこかしこで鳴ったり音が止まらないらしい。木造住宅とかによくある家鳴りという現象だろうか。その後必ず赤ん坊の私が火がついたように顔を真っ赤にして泣きじゃくって手がつけられない程泣き止まなかったらしい。
またある時は、食器が場所を移動して勝手に割れていたらしい。ポルターガイスト現象か。
父は育児ノイローゼだろうとあまり取り合わなかったらしいが、度々こんな感じの不可思議現象があるので母が参ってしまい、祖母の知り合いの霊能者の方に家の相を見てもらったそうだ。
その霊能者は、この家は相性が悪く夫婦は長続きせず、喧嘩が絶えないとても住める状態じゃない家であるから、出れるなら早く出た方が良いと言われた。
父はそのアパートを気に入っていたから、他の家の相を観る占い師3人に見てもらったけれど、霊が居すぎるとか、早く出た方が良いとか、ほぼほぼ同じような事を言われてやっと引っ越しを決意したという。
ちなみに母は、撮った写真を装飾してアルバムに保存するのが好きらしく、昔の写真アルバムが実家に沢山ある。
そのアパートで撮った写真には私の身体にもれなく赤い光が纏わりついていたり、私の手や足だけがぶれていて、その手足がどう見ても自分のサイズじゃなく大人の手足だったのには引いた。
次の賃貸アパートで撮った写真には何も写って無いところを見るとやはりあの家は早く出て正解だったんじゃないかなと思う。今で言う事故物件だったんじゃないだろうか。