9ページ目【島で会った人】
9ページ目【島で会った人】
中学1年生の夏休みのお盆頃、親戚が居る島に行ったら不思議なことがあった。
行くとこ行くとこ同じ人に会う。絶対同じ人。怖い。
日記はそこで終わってる。思い出した。
中学生の時、親戚のお家に遊びに行った。
海水浴場で泳いだり、池でザリガニ釣りしたり、夜は花火をしたり、とても楽しかったのを覚えている。
でも不思議なことがあって今でもあれは何だったんだろう
と思うことがあった。
最初に見たのは親戚の家の前の坂を降りたところにある商店の前で居た二人だった。親にお小遣いをもらったので商店でアイスを買おうとした時に遭遇した。
高齢者の多く人口が少ない島で、私達姉弟みたいな子供があんまり居ないし、親世代の年齢の人もいるけど、圧倒的おじいちゃんおばあちゃん遭遇率が高い島で、若い上下白い服を着た二十代前半くらいの男性が、暑さでクタっとしたお婆ちゃんをのせた車椅子を押しているのだ。
お婆ちゃんも白い服で、二人共シミのない上下白い服は日光で眩しかった気がする。
仲良いお孫さんとお婆ちゃんだなぁと思って見ていたんだけれど、ふとお孫さんらしき男の人と目があった。
ニコッと笑ったので、私も軽く会釈した。やわらかな優しそうな笑顔だった。
それがいけなかったのか何なのか、事あるごとに彼らと出くわすのだ。
最初は親戚のご近所さんかなと思っていた。
近くの商店、近くの海岸付近をキコキコと古い車椅子を押しているお孫さん。いつも遠目に遭遇する。真ん前に来ることは無かったと思う。
でも少ししたら、何だかよく会うなあと思うことが増えた。
ある時、近所のスーパーで買えない物があるとかで、母親と車に乗って島の反対側のスーパーまでドライブしたことがあった。
スーパーの中で、お婆ちゃんの車椅子を押すお孫さんを見た。別人かなって思ったけど、また二人ともペアルックよろしく白い上下の服を着ている。
まあ、島の中だし生活圏被る事もあるだろうなくらいの気持ちだった。よく島中散歩してるかも知れないし、もしかしたら私達子供が珍しいから見守ってくれるんだろうかとか適当に考えていた。
雨の日も近所を散歩しようと傘をさして出たら、傘もささずに車椅子を押すお孫さん。
奇妙なのが傘をささずに散歩している。二人共白い服が雨でグショグショなのに一定の速度で車椅子を押している。距離を保ちつつ、別の道に私は平静を装いまがった。振り返ったらと思うと、失礼だけど恐怖で叫ぶかも知れないから、深呼吸しながら早足で去った。
結構な雨なのにお婆ちゃん風邪引かないの?散歩に傘もささないって何で?健康の秘訣とか?そういうものなの?頭がはてなでいっぱいになった。
ヒエッと思ったのは家に帰る日。荷物を詰んで車に乗り込む時、遠目にまた二人が散歩してるのが目の端に映った。
相変わらず毎日仲良いなぁと思ったのだけど、島と本州を繋ぐ橋を渡り終わってから、車の外を見ると本州側にあの二人が居る。距離的に5分もかかってないのよ。
え?え?さっき島に居ったよね?よく似た他人の空似?
私達の車より先に車椅子を押して歩く男性。
上下白い服。同じ髪型。え?瞬間移動した?健脚過ぎんか?そんな事ある?背中がゾクゾク寒気がする。
高速乗って、パーキングエリアについたら流石に居なかったけど、またあの車椅子の音が聞こえたらと思うと怖かった。
難なく家に無事着いたのだけれど、あれは何だったのたろうか。親や親戚に聞いたらいいんだけど、親が居るとき、妹弟、親戚といる時に出会わなかったので、聞きようが無いのが悔やまれる。
人だと思いたい。が、しかし、お孫さんの男性の顔が思い出せるのに、車椅子の椅子の色も思い出せるのに、お婆ちゃんの顔が全く思い出せない。あんなに遭遇したのに。
大人になってまた親戚の住んでいる島にお邪魔したことがあったが、もうあの二人に会うことは二度と無かった。