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第20話 これは冒険ではない

「避難計画の子細は承知した。引き続き抜かりなく遂行するのじゃ」

『はっ!』

「して、道中の町と村は全て避難が完了しておるのじゃな」

「間違いなく!」

「今ヤツは何処まで来ておる?」

「六つ先の村を破壊している最中とのことであります!」

「想定通りの速さじゃな。救国パーティーが会敵するのは、想定では三日後に三つ先の町近辺であったな?」

「御意!」

「では予定通り、二つ先の町を中心に前線を南北に展開させるのじゃ! 戦略魔法師団の集結を急がせよ!」

「はっ!」

「宰相! そろそろお時間です!」

「あいわかった。あとは任せたぞ、軍部大臣」

「はっ!」




「おい、泣くのはよせ。いつまでも年寄りに甘えるなよ」

「……今だけです。僕に何も力が無いのが悔しいだけです」

「そんなことはない。お前がいるからこの国が在るんだ。俺と違って、お前はよくやっている」

「兄上こそが国の英雄ではないですか!」

「その名で呼ぶな。俺はそんなんじゃない。ただの死神だ」

「……まだ父上と母上がお亡くなりになった時の事を……?」

「……それもあるな。お前にも余計な事を言って、つらい思いをさせた。すまない」

「余計なんかじゃないです! 勇者様がもうすぐ来るから、なんとかなるから、勇気を出せって……それだけが心の救いで、ここまで生きてこられたのです。なのに勇者様は……」

「おい! ……その事はもう忘れてくれ。俺も忘れた。お前も、もう忘れていい年頃のはずだ。現実を見て、出来ることをするんだ。お前になら出来る」

「……兄上が剣の修行を本格的に始められたのは、今の僕くらいの年頃とのことでしたね。僕も立派な王にならないと……!」

「その意気だ。国はちゃんと残してやるから安心しろ」

「……お願いします、兄上」

「任せとけ」




「おい、お前が次に死ぬ奴か?」

「ヒエッ!?」


 あーあーまたそんなこと言うから勇者殿が竦んどるよ。いや、勇者殿じゃなくて流星殿じゃったか。でも今ので勇者殿に戻っちゃったのう。


「これから一緒に旅をするんですから、仲良くしてくださいよ」

「お前こそ俺らと仲良くする気は有るのか?」

「ありません」

「ふえぇ……」


 だめじゃこりゃ。


「お主ら、別に仲良うしろとは命じんが、無駄に喧嘩をするでないぞ」

「ああ」

「いいでしょう」

「うう……」


 ええと……そうじゃ。


「オホン、二人はこの有様じゃ。流星殿がしっかりと手綱を握ってくだされ」

「……! よかろう、我に任せよ」

「なんと心強い! さすが流星殿じゃ、ほっほっ」

「ほっほっ」

「……ん?」

「気にしないでください」

「……ああ」

「では、ゆくぞ皆の者! 怪獣退治の冒険へ!!」

「……一人で勝手に行きやがった」

「念のため私は付いて行ってます。あとから合流してください」

「わかった」

「……あの子の事を、くれぐれもお頼み申す。賢者殿も命だけは必ず守ると約束してくれておるが、お主も守ってくれるならば、あの子にとっても一番、安心安全な居場所になるはずなんじゃ」

「勝手に暴走さえしなきゃ、守れるだけは守ってやるさ。あの怪獣とやらは無暗に襲ってはこないんだろ?」

「そのようではあるが、今のところ、というだけなんじゃ。確かなことは何も言えぬ。もしかしたら話が通じるやもしれぬが、この城を叩き潰す意思は断じて揺るがないとのことじゃ」

「なら止めるまでだ」

「あの子も、友達の居場所は守る、って張り切ってくれての。最初はどうなるかと思っておったが、まあ良かったの、ほっほっ」

「そうか」

「あの子には何か、わしらには見当もつかない、何か大切な役割があると思うんじゃ。きっと何か、思いもつかぬことをしてくれるはずじゃ。わしはそう信じておる」

「いい方に転がればいいがな……ん? なんか外がヤケに騒がしくなったな。何だ?」

「中から出てきたのが二人だけで、肝心のお主が居らんからじゃよ。そろそろ行っておあげなされ」

「糞どもが。じゃ、行ってくる」

「ご武運を」

「ああ」


 行ってしもうた。皆、面倒を押し付けてしもうて、申し訳ない。特に流星殿には、勝手な都合で困難な旅に巻き込んでしもうて、本当に済まぬ――勇者よ、わしが直接してやれるのは、最早これのみじゃ。


「……ゴッドスピード」


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