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誘拐

 豊西達が翔一の家を出ていったころ


 結乃の通う学校の前に不自然に高そうな車が止まっている。

 それを見つけた結乃は、顔を真っ青にさせながら目立たないように帰ろうとする。


 しかし、その車に乗っている男に見つかってしまう。


 「やあ結乃!今日こそ一晩を共にしてもらうよ!」

 「やめてください。私はあなたと婚約なんて死んでも嫌です」

 「つれないなあ……でも、1週間後にはそんなこと言ってられなくなるよ」


 男はそう言って指パッチンをすると、結乃にスタンガンが押し当てられる。


 バリバリバリ


 「うっ……」

 「ふふ……1週間後、君は自分から僕を求めるようになるよ。この僕、内藤大翔の体をね」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「なあ、なんで内藤商事の縁談を断ったんだ?」

 「だって、なんか嫌な目をしてたから」

 「そうか……結乃がそう言うんだったら、そうなんだろうな」

 「はあ、私もお兄ちゃんみたいないい男来ないかな?あや姉が羨ましいよ」


 今、目の前にいるのは今年小5になった椎名結乃、俺の妹だ。


 俺が、彩乃に学校でビンタされた事件から、ちょうど半年くらいだ。


 今、俺は小6で、中学進学が控えている。それに応じて、学校の先生からは最高学年らしい生活をしろと言われているが、それが具体的になんなのか言ってほしいものだ。


 「結乃は、どんなところが嫌だったんだ?」

 「んー?なんかね、あの人の愛は、愛じゃなくて支配な気がする。それに、2歳も年上だし」

 「そうだな。小学生に2歳差の恋愛は重いよな」

 「ねー、相手は何考えて、この椎名家の本筋の次女に婚約を申し込んでるの、って感じ」

 「あはは!マジウケる!」


 そんな談笑をしていると、俺達は学校へ行く時間になっている。


 俺たちは、使用人に連れられて玄関先に出る。


 そして、出発の準備が整うと、俺達は家を出て学校に向かう。

 うちは送迎などはない。基本的に体第一の家系なので、まず車を使う事があまりないのだ。


 そうこうしていると、もう一人が俺たちに合流する。


 「おっはよー!」

 「ああ、おはよう、彩乃。今日も元気だな」

 「あったりまえだよ!人は元気が一番!ほら!翔一も笑って!」

 「こうか?」

 「もー、翔一は表情が硬いの!もっと柔らかく!」

 「こう?」

 「だー!違う!」


 アホなやり取りだが、俺たちは、毎朝このようなやり取りをしている。そして、こんなことをしていると、もう一つ近づいてくる影がある。


 「ったく、今日もおめでたい奴らね」

 「あ、美織もおはよー!ほら、笑顔!」

 「嫌よ」

 「もー、美織ったら恥ずかしがり屋さん!そんなんだからしょう「わー!その口を閉じなさい!」


 そんな俺たちのやり取りは、周りから見ればまたやってるよ、あの4人みたいな感じだ。ただ、結乃はこれに参加してることが少ないので、3人と言えば3人だ。


 ところで、昨日の結乃のお見合い相手は中学生なので、この小学校にはいない。


 幸いというかなんというか。まあ、俺は見合い相手の内藤大翔のことは一ミリも知らないから、どんな奴かもわからないんだけどな。


 昨日の結乃の話を信じるんだったら、そいつはとんでもない男だろう。


―――授業中―――


 俺にとって、小学生の授業など児戯に等しい。こんな詰まらない授業を聞く理由が分からない。


 昔は授業をさぼっていたのだが、最近は彩乃にしっかり出ろと一喝されてしまったので、出席はしている。


 キーンコーンカーンコーン


 なんだかんだ、授業をぼんやりと聞いていると、昼休みを告げるチャイムが鳴る。


 それと同時に、彩乃と美織が俺の席にやってくる。


 「翔一、一緒にお弁当だべよ!」

 「なんだ、急に訛って?」

 「彩乃、あなたまた何かの漫画読んだでしょ?」

 「えー、でも訛りって可愛くない?」

 「モノによるだろ?可愛くないって言われてる方言もあるくらいだし」


 彩乃はこういうところがある。すぐに漫画の影響を受ける。まあ、彩乃が見てるのは、万人受けしているものから、あまり知られていないものまで。その漫画の所持数は、1千を超えている。


 さらに彼女の凄いところが、それらを全て2周以上して、内容もだいたいを把握している。


 勉強はあんまりのくせに、こういうのはちゃっかり俺をこえてきやがる。羨ましいやら、惚れてしまいそうやら


 「結乃ちゃん遅いね?」

 「そうね。いつもこのくらいの時間に食べているのに」

 「まあ、友達と食ってんじゃないの?」

 「そうだね。私たちだけで食べようか!」

 「そうね」

 「そうだな」


 いつもなら、合流しているはずの結乃を置き去りにして、俺達は弁当を食べ始める。

 最近は、この3人に結乃を入れた4人でよくご飯を食べているのだが、今日は結乃抜きだ。なんだか、心の均衡が乱れた気分だ。


 そんあことを考えていると、彩乃の手が俺へと延びてくる。


 「タコさんもーらい!」

 「あ、てめえ!なら俺も、てんぷらもらった!」

 「あ、楽しみにしてたのに!」

 「お前楽しみって、その天ぷらまだ3個見えるけど?」

 「そういうのじゃないの!私はおいしいものは最後に残して、いっきに食べたい派なの!」

 「それは悪かったな」

 「わかればよろしい。じゃあ、そのタコさんウインナーを頂戴!」

 「嫌に決まってんだろ!」


 このタコさんウインナーは、結乃が早起きして、一生懸命に作ってくれたものだ。たとえ婚約者と言えど、これは俺の物だ!


 「ほんと、二人は仲が良いわね」

 「そ、そんなことないよ。」

 「そうだな、俺達は結局、親同士が決めた婚約者だかんな」


 俺がそう言うと、彩乃が悲しそうな顔をしたが、気のせいだろう。


 そうこうしてると、美織が思い出したように喋り始める。


 「そういえば、結乃って昨日くらいにお見合いがあったんでしょう?どうなったの?」

 「まあ、破綻してたな。結乃が、相手のことが気に入らないって言って、婚約の話はなしになったらしい」

 「ふーん。結乃ちゃんが言うってことは、相当ひどい人なんだね?結乃ちゃん、あれでいて、このすごい温厚だから」


 そう談笑しながら、弁当を食べていると、5時間目の予冷が鳴った。


 というわけなので、俺達は教室で準備をしていたのだ。


 すると、そこに結乃のクラスの担任が、やってきてこう言った。


 「結乃ちゃんが……結乃ちゃんが誘拐されました!」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ん? 過去編にも誘拐されたの? 途中から小学校の話になっているみたいだけど… ちょっと前話の異常者が内藤で物語中の現代でも誘拐起きたんだろうけど。 [一言] 間に合うと良いが誘拐…
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