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 朝10時

 さわやかな朝の平穏をぶち壊す、女が一人、現れる。


 「おい、椎名!これはどういう事だ!」


 見舞いOKの時間になった瞬間に生徒会長が、奇声を上げながら俺のいる病室に入って来た。

 そして、会長の手にはスマホがあり、その画面にはあるネットニュースの記事が映っていた。


 「どういう事も何も、そういう事ですよ」

 「お前、ABAXのゲーマー【ショウ】だったのか!」

 「まあ、そうですね。身バレがめんどいんで仮面被ってたんですけど、あれも邪魔なんで次出る時はつけなくていいかな?」

 「そう言う話をしているんじゃない!」


 ちなみにABAXは、前の世界での通称【エペ】のこの世界版だ。


 俺ことゲーマー【ショウ】は、狙撃だけなら世界一と言われるプレイヤーだ。何度か、国内の大会で優勝経験があり、国際大会でも入賞経験がある。


 自分でいうのもなんだが、ぶっちゃけゲームで食っていける。

 ジジイからの仕送りで、今は生活しているが、今後結乃の高校や大学の費用はあるに越したことは無い。

 それに、金があるならその分、結乃のやりたいこと。そして玲羅と過ごすための余裕ができる。


 まあ、玲羅と過ごすことが多かったから、最近は全く活動してないんだけどな。


 俺の部門は【ランダムマッチ】

 即席のチームでどれだけの成績を残せるかを競い、全部で10試合行い総合成績で結果を決めるもの。故に俺には、チームメイトがおらず、迷惑をかける相手もいないため俺は休みたい放題という事だ。


 俺が、脳内で説明をしていると、会長がわなわなと震えている。

 なんかやばいことした?


 「そういう事は、早く言ってくれ……」

 「会長……?」

 「さ……さ……」


 なんだ、会長って暴力系……?ヒス系……?いや、そんなキャラ設定はなかったはず


 じゃあ、なんだ?


 「ささささ……サインくださいっ!」


 ポク ポク ポク チーン


 「は……?」


 俺は、唖然として言葉が出ない。え、サイン?


 「サインをください!ファンなんです!」

 「!?」

 「なにをそんなに驚いている?あんな華麗にライフルで狙撃を決める姿。見惚れてしまうじゃないか!」

 「!?」

 「というわけだ。サインをくれ!」

 「どういうわけだよ!」


 俺は、あまりの展開に困惑していると、六道先輩が遅れてやってきた。


 「会長、落ち着いてください。椎名君、ごめんなさい。会長は、結構ゲーム好きで大会とか見てるんです。そんな中でも、椎名君の【ショウ】って言うプレイヤーの狙撃が鮮やかだ!って、いつも言ってるんです。」

 「それは嬉しいですけど、ぶっちゃけ狙撃プレイヤーってあの手のゲームで嫌われるんですよね。なのになんで俺なんですか?」

 「嫌われても、自分のプレイスタイルを変えずに華麗な狙撃をする姿。カッコいいではないか!」

 「「会長落ち着いて」ください」


 まさか、会長がこんなにも熱狂的なファンなんて思わなかった。でも、悪い気はしない。

 俺は渡された色紙(どこからか出てきた。四〇元ポケット?)に、サインを書いて会長に渡す。


 「ありがとう!宝物にする!」

 「なんか嬉しいですね、こういうの」


 ツンツン


 会長に色紙を手渡したら、後ろから肩をつつかれる。誰かと思い、振り返ると六道先輩だった。


 「私にもサインをください」

 「え、ファン?」

 「いえ、売れそうなので」

 「あんた最低だな。普通言わないよ、本人の前で」

 「冗談です。あなたと知り合いという証拠が欲しいんです」

 「なんか変な感覚だな……はい、大切にしてくださいね。売られてたらちょっとだけ傷付くかもしれないですよ」

 「大丈夫です。私、フリマアプリとか使ってないので」


 なんやかんやでそれから1時間ほどが経過した。というか、暇なのだろうか?この二人は朝早くから俺の病室に来て。


 そう思っていると、今顔を見たいランキング1位が病室にやってきた。


 「翔一……ずいぶん楽しそうだな……」

 「な、なんで急にヤンデレ風味!?」

 「冗談だ。見舞いに来たぞ、翔一」


 そう言って笑う玲羅。ああ、天使はここにいる。滅茶苦茶可愛いじゃないか。


 「じゃあ椎名。あと二人でごゆっくり」

 「椎名君、さようなら」

 「あ、二人ともありがとうございました」


 玲羅と入れ替わるように、会長たちは帰っていった。


 「翔一、体は大丈夫か?」

 「ああ、大丈夫だ。心配してくれてありがとうな」

 「よかった……」


 胸に手を置いて安堵する玲羅。超エモい!超かわいい!超天使!


 「そう言えば結乃は?」

 「結乃は、矢草と一緒に遊びに行った」

 「そうか。ならいいか」

 「あの二人は仲が良いのか?」

 「仲が良いどころか、両思いだぞ?」

 「えっ!?」


 その言葉に驚きを隠せない玲羅。そりゃそうだ。恋とは無縁みたいな性格をしている結乃が、恋をしているかもしれないという話だ。まず、驚かない方が凄い。


 「矢草が結乃に惚れた感じだな。結乃もなんだかんだ矢草だからこそ惹かれたって感じ」

 「そうか……妙に仲が良いと思ったが……。両思いか……実ると良いな、その恋が」

 「実るさ。両思いだぜ?俺達みたいにラブラブになれるさ」

 「ら、ラブラブだなんて……」


 ラブラブ、その単語に恥ずかしくて赤面してしまう玲羅が可愛い。


 実際、言い逃れが出来ない程、俺達はイチャイチャしている。俺があらぬ疑いを掛けられなければ、学校公認になれたかもしれないレベルに。


 そんな俺も、真っ赤な顔で照れる玲羅を見ると、シたくなってきた。


 「玲羅、髪の毛にほこりがついてる」

 「えっ!?どこだ?」

 「ほら、こっちに来て。取ってあげる」


 そう促すと、玲羅は頭を俺に近づけてくる。テンプレみたいな動きだが、玲羅は思惑通りに動いてくれる。


 「これでとれるか?」

 「ああ、これで思う存分できる」

 「え?……あっ……」


 俺は近づいてきた玲羅の頬に手を添える。すると、俺の思惑を理解したのか、目を閉じて口を少しだけこちらに差し出してくる。


 「んぅ……しょう……いち……」

 「れい……ら……」


 しばらくは唇を合わせるだけのキスだったが、次第に過激になり、最終的に舌まで入れてディープキスにまで発展した。


 それから、俺達は10分も唇を重ね合っていた。とても気持ちよく、心地よい時間だった。


 しかし、顔が至近距離になったからだろう。俺は気付いてしまった。


 「玲羅、寝てないな。いや、寝れてないのかな?」

 「気付いてしまったか……。実は、お前が心配で最近は全く寝れていないんだ」

 「ふーん……。じゃあ、おいで」

 「わひゃぁ!?」


 俺は、玲羅をベッドの中に引きずり込む。すると、びっくりしたのか玲羅が素っ頓狂な声を上げている。


 引きずり込まれた玲羅は、俺と向かい合うように寝転がる。


 「本当に良かった……。翔一が死ななくて……」

 「大丈夫。俺は死なない。もう、玲羅を残して死んだり、死のうとしたりしないから」

 「約束してくれるか?」

 「ああ、約束する」


 俺は、玲羅に約束のキスをした。それで安心したのか、だんだんと玲羅の瞼が閉じられていく。

 それに追い打ちをかける様に、玲羅の頬を撫でる。


 「んぅ……気持ちいい……すぅ……」

 「おやすみ……玲羅……ちゅ」


 それからしばらくして、見舞客が来た。


 「やっほー翔一。見舞いに来たぜー!」

 「来るな」

 「は!?」


 俺はやってきた蔵敷を俺は、来ないようにする。なぜかって?


 俺は、玲羅の寝顔を見る。















 「―――この寝顔を見ていいのは俺だけだぞ」

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