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高校2日目

 「翔一、学校にはちゃんと行くんだ。絶対に私が助けて見せる!」


 玲羅はそう息巻いて、早々に家を出て行った。

 なので、俺は独りで登校中だ。


 俺と美織の様子を撮られた動画というものの存在を知ったのは昨日だ。あの動画の件でおそらく俺はいじめ、またはそれに準じたものが行われるだろう。所詮漫画の世界の高校だ。偏差値なんかよくわからない学校だからな。あからさまな不良も在籍する。


 まあ、唯一不幸中の幸いと言えるのは、あの動画がSNSにアップされていないことだな。さすがにネット社会にばらまかれたら、処理が面倒だったろうな。


 それにしても寂しいな。


 高校2日目、別に中学のころからずっと一緒にいたわけじゃない。一緒じゃないこともよくあった。なのに――――


 「俺って、結構なヤンデレ属性持ってんのかなあ?」


 この言葉の通り、俺は玲羅がいなければ、昔の俺に戻ってしまうと思う。本当に、漫画のキャラなのにここまで依存するとはな……。―――可愛いから、離れたくないからとかもあるけどな。うん、そうだ。玲羅が可愛いから、一緒にいたいと思うんだ。


 うん、何言ってのか俺にもわかんね。


 よし、現実逃避終わり!切り替えてくぞ。さあ、現実を見る時間だ。


 「あいつ、女子中学生を襲って自殺に追い込んだらしいわよ。面構えが違うわ。」


 ここは漫画の世界。他の漫画のセリフをパロったりするのは、よくある話。だから、俺は見逃してやろう。それがたとえ、俺に対する悪口だったとしてもだ。


 大丈夫、学校ならいつでも玲羅の姿を見れる。彼女が学校では、カレカノ関係を隠したいというのなら、できるだけ見るのも避けよう。迷惑をかけるわけにはいかない。


 学校の校門に近づくにつれ、生徒の数も多くなってくる。それに比例して、俺に向けられる視線も多くなる。

 はあ、ネット社会には広まんなくても、学校では広まったみたいだな。だぁるい……。


 「おはようございまーす!」


 校門で生徒会が挨拶をしてる。あれ?なんか白銀先輩に見られてる気がする。―――気のせいか。


 そんなこんなで教室の前に来ると、中から聞き覚えのある声が聞こえてくる。


 「だから翔一はそんな奴じゃない!」

 「だから証拠を持ってきなさいよ!あいつが彩乃を襲って傷付けたのよ!それ以上もそれ以下もない、あいつはクズなのよ!」

 「違う!翔一はやってないんだ。どうしてお前は、翔一を信じないんだ!」

 「信じる信じないは私の自由意思よ。あなたにどうこう言われる筋合いはない!というかなんなの?あなた、あいつの口車に乗せられて掌で踊らされてる感じ?だとしたらやめときなさい。あの男は本物よ。」


 言いたい放題だな。まあ、美織も美織なりの考えがある。わざわざ、物語にあるようなざまあ展開を狙う気もない。


 もし、万が一にでも俺の冤罪が晴れて、美織が白い目で見られることがあるのなら、その時は助けてあげよう。俺としては、美織にも幸せでいて欲しい。


 ガラガラガラ


 教室に入ると、努めて笑顔でいるようにする。


 「玲羅、ありがとな。」


 そう言うと、玲羅は迷わずに俺に抱き着いてくる。俺はそれを優しく受け止めた。


 「ごめん翔一。お前が私のためにやってくれたように私もしたんだが、やっぱり私じゃ何もできない。ごめん……なさい。」

 「なんで謝んだよ。あの時はあいつらを納得させる、玲羅の評判があったからできたんだ。今の状況じゃ、逆の立場でも、無理だったよ。」

 「でも、でも!」


 本当に可愛くて、綺麗で、純粋で、魅力あふれた娘だ。ずっと守っていたい。ずっと愛し合いたいな。


 「ふーん、その人が次の(おもちゃ)なのね?」


 俺と玲羅の甘い時間をぶち壊すように美織が話しかけてくる。


 「美織、玲羅もそういうんじゃ「翔一はそんな姑息な男じゃない!」


 すると、食い気味に玲羅が強めの否定をした。


 「翔一は、優しくて、料理上手で、勉強もできて、私にはもったいないくらいの男だ。私の……私の彼氏を侮辱するな!」

 「な、なによ。うまく洗脳してるみたいね?でも、私がそんなことを許「なあ?」


 俺は、美織の言葉を止めて話始める。


 「俺をどう言おうが、俺をどう貶そうが、俺にはどうでもいい。だが、他人を巻き込むな。」

 「はあ?あなたが起こしたことでしょ?罰くらい受けて当然なのよ」

 「そもそもあれは、俺の家と姫ヶ咲家の問題だ。お前は部外者なんだよ。」

 「そ、そんなの関係ないでしょ!彩乃は私の友達だったのよ。友達のためにあなたに罰を下す!」

 「それはお前のすることじゃないし、俺はすでに罰を受けてるだろう?」

 「くっ……おぼえてなさい!」


 なにをだよ。――――そういや、あいつもラノベオタクだったな。無意識に言いたかった言葉が出た感じか?


 条華院美織。この人物は、俺が転生しようと、しなかろうと存在している人物だ。なら、こいつは本物なのだろうか。俺の世界の美織か。それともこの世界のモブに過ぎない美織なのか。それとも、主人公ハーレムに加わる物語後のメンバーの一人なのか。


 条華院美織。お前は誰なんだ。




 そして、それを考えることが出来ないこの時の俺は、相当追い詰められてたんだと思う。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 まあ、色々あって今は食堂にいる。俺が予定を把握せずに弁当を作り忘れたのだ。ちなみに、自殺未遂で俺は、2週間の料理当番の刑を科された。

 文句はない。


 現在、俺はうどん、玲羅は唐揚げ定食を食べてる。


 「ごめんな。俺が予定をしっかり把握してれば。」

 「別にいいんだ。翔一と結乃には、毎日ごはんを作ってもらっているんだ。居候の身分で申し訳ない気持ちでいっぱいだ。」

 「じゃあお互いさまってことだ。」

 「ふふ、そうだな。」


 守りたいこの笑顔。自然に思える、玲羅の無邪気な笑顔はもはや凶器だ。この表情で、人を殺して欲しいと頼まれたら、俺は嬉々として殺すだろう。そのぐらいに強烈な破壊力をもってやがる。


 そこに、息を切らしながらこちらにやってくる人物がいた。


 「はあ、はあ、やっと見つけた……」

 「……?ああ、あんたは!」

 「ちょ、翔一、白銀先輩は仮にも生徒会長だぞ!あんたっていうのはやめるんだ!」

 「いいんだ天羽。それよりも椎名翔一!」


 白銀先輩が息を整えて発したセリフは、本来なら主人公に向けてのセリフだったのだろう。そのくらいぶっ飛んだものだった。


 「椎名翔一、お前を、帝聖生徒会副会長に任命する!」

 「あ゛!?」

ただいま、新作鋭意制作中。出来たら見て欲しいな!

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― 新着の感想 ―
[良い点] >もし、万が一にでも俺の冤罪が晴れて、美織が白い目で見られることがあるのなら、その時は助けてあげよう。 向こうは翔一を社会的に抹殺しに来てるのに、心優しい大人な対応ができるのは凄いことで…
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