とじる鍵
あける鍵のほぼ続編といってもいいものなので、
これを読む前にあける鍵を読んで下さると幸いです。
あるところに鍵があった。
その鍵はこの世の物のすべてをとじる事ができた。
どんな家の扉や窓、どんな大きな金庫や小さな箱でも、
さらには人の心の扉さえもとじることができた。
今、その鍵はある子供の手に握られている。
その鍵はさっきそこの街角で拾ったもの。
町の中心の辺りが騒がしくなってきていた。
そこには人々がお互いを憎みあい、殴り、盗み、殺しあっていた。
その子供は鍵を使い、憎しみの心の扉をとじていった。
人々は正気に戻り、街がすべて元の形に戻っていった。
けがをした人のキズはふさがり、盗まれたものはすべて戻り、殺された人はよみがえった。
子供はいつも遊びに行く草原を見に行った
そこには草原の草を食べつくした虫や動物が飢えに苦しんでいた。
その子供は鍵を使い、虫や動物の食欲の扉をとじていった。
すると草原に草は生い茂り、花は咲き誇り、温かい風が草原を包み込んだ。
子供は草原を越えて海に出た。
そこには港町は海に飲み込まれ、船は沈み、空は暗雲に覆われていた。
その子供は鍵を使い、嵐の扉をとじていった。
すると海に飲み込まれた港町は元に戻り、沈んだ船は再び動き出し、空は真っ青に晴れ渡った。
子供は世界の果てまでたどり着いた。
そこには雷鳴が轟き地面が真っ二つに割れ、下には真っ赤なマグマが流れていた。
その子供は鍵をつかい、
最後の扉をとじた。
すべてをあける事のできる鍵とともに。