⑦御嬢様の取引事
当節目安(3分程度)※400字1分計算
言葉の通り、1歩近付き見上げながらに。
「ご両親の失踪」
・・・⁉︎
さらに。
「借金3億7千万」
・・・ッツ‼
「これで少しは私にご興味をお持ちになって頂けましたか?」
俺に関心を持たせることなら成功したな。
この女。
「目が怖いですよ?守仁くん?」
「取引、と言ったか」
「はい、先ほどにも述べた通り、私の望みは在学中の成果です。そのお手伝いをしていただけるのであれば貴方の借金3億7千万という重荷、帳消しいたしましょう」
「帳消し?代わりに払うとでも?」
「やはりきちんとした挨拶が必要ですね、・・・」
制服の内ポケットから革製のホルダーを。
その中から1枚の名刺を差し出してきた。
「私は比呂 瑚珠、【比呂財閥】の当主、比呂 雄登の娘、次期当主です。」
なるほど、あの【比呂財閥】のね。
まぎれもなく本物の【比呂財閥】のマークに高級紙の名刺。
毎月督促状がその財閥の名前で届いていたにも関わらず『比呂』と聞いてもピンとこなかったな。
「これで信用していただけますか?」
「・・・まさかあそこのご令嬢だったとは」
段々と冷静になり、なんとなく気が抜けた。
別にどうしてもバレたくないってわけではなかったが、初めて話すクラスメイトからまさかの『両親失踪』と『借金3億7千万』というワードを聞かされたため警戒してしまった様だ。
「やっと優しい目になってくださいましたね」
「わるい、ちょっと驚いて。今はご令嬢ってことのほうがあれだが」
まあ財閥関係者ってなれば知っていても驚きはないな。
「それで手伝いとは具体的にどうすればいい?」
「では取引をしていただけると?」
きれいな目だなー。
すげー期待してるし。
はたから見たらお嬢様と貧民って感じか。
いや『はた』は俺らの内情は知らないから告白の答えを待ってキラキラしている女子と、もったいぶってるませた男子か。
ちくしょちげーよ!
「その手伝いの内容次第だが」
「1言に言うと簡単です。守仁くん、α組の制作は貴方の制作で進め、成果を出してください。」
いやいやいや、いや。
「もちろん、私も最大限サポートをさせて頂きます。仰る通りこの学校で成果を出すためにはクラスの皆さんの制作力のベクトルを揃えて差し上げなければなりません。ですが貴方の制作力ならその向きを揃えて差し上げる事は可能です」
「できるのか?」
「簡単です。他の皆さんのベクトルをいくつか発生前に揃えれば良いのです」
なんだかこの子と話してると無駄に体力を失ってる気がする。
もうなんでもいいや・・・。
「わかった。面倒臭そうだが借金がなくなるのは助かるし」
断る方が面倒そう。
「ふふっ。成立ですね。ありがとうございます!」
「高校生活は適当に楽したかったがな」
あっやべ。
口にしちゃった。
「あら、そんなことを考えていらっしゃったのですか?」
うわーニコニコしてるなー。
「それは難しいのではないでしょうか?だって守仁くんの入試内容を知った時からα組での成果を望めるのは貴方の制作しかいないと思っていましたから。それに・・・」
表情が変わった。
「私のためにも」
比呂の表情は、憎悪と欲望に満ちたそれだった。
ここまで目を通して頂きましてありがとうございます。
初めての執筆となりますがやはり中々に難しいですね・・・。
ここでひとまずは【序章】を締めます。
次回【一章】では工の生い立ちや才能、またお友達などが登場しますのでどうぞお暇な時にお読み下さい。