②当高校の特殊性
当節目安(4分程度)※400字1分計算
「来て下さってありがとうございます!守仁くん!」
お嬢様。
そう彷彿させる可愛い女子だ。
「大丈夫、えっと比呂 瑚珠さん、だっけ?」
手紙には名前がなかった。
女子と浮かれていて違った場合は凄い恥ずかっただろうな。
「はい、名前を覚えて頂けていまして嬉しいです!今後は気軽に敬称なしでお呼び下さい」
「なんとなく覚えてた。じゃあ比呂、俺に何か用か?」
「実は守仁くんに提案がありまして、」
提案、ね。
ちょっと雲行きが怪しい。
「守仁くん、私と取引を致しませんか?」
はい、よくある告白の可能性は消えました。
「言っている意味がよくわからないんだが」
比呂はクラスでも可愛い方と思っていたので正直ここに来た時に待っていたのが比呂で、内心高まった。
故に告白でないとなると少々残念ではあるが表情は笑顔のままにしておく。
「守仁くんもご存知の通り、私達の通うこの高校では各クラスごとに制作を行い、それのアプローチをしていかなければなりません。そこで私の所属するαクラスで駄作な物を作られてはたまりません。そこで守仁くんにお声がけさせて頂きました」
比呂はさも当たり前なことを言っている様に言い放ち、軽くお辞儀を向けてきた。
「もし、先日のクラス内会議の様な方針で進められてしまってはまず良作は生まれない、つまり各行事での成果は望まない結果になってしまうでしょう」
比呂の続けられる言葉につい先日、水曜のLHRの際に行われたクラス会議の内容を思い出す。
「では皆さん!入学後初めてとなりますので今回のクラス会議では私が進行役を務めさせてもらいますね!」
先週は入学式、校舎案内、学力測定、体力測定とで朝と帰りのあいさつくらいでしか関わりのなかった担任、端壬 温奈からの1言でLHR内のクラス会議が始まった。
「本日の会議ではこの高校の仕組みを聞いてもらった後に、今回の議題である各自の役職、今後のクラスの方針を決めてもらいまーす!」
端壬先生は『永遠のハタチでーす!』という初回のあいさつが許されてしまうような容姿の先生だ。
あくまで俺自身の主観であってその時の他生徒の目、特に女子の白い目には思うところがあったが。
「皆さんもこの高校に入学するだけあってうちの高校の大まかな仕組みは知っていると思いますが一応資料を基に説明しますねー!」
その後テキパキと端壬先生は可愛い口調で説明を始めた。
あまりにも可愛いが過ぎるので内容をまとめる。
【国立創製高等学校・制作カリキュラム】
機械工学α組、電子工学β組、情報工学γ組、生命工学δ組、化学工学ε組。
3年間クラス替えはなく、20名で構成されたクラスのジャンルにおいての制作物で卒業までに何かしらの成果を出す。
3年間での成果によって卒業後は大学への無条件入学や大手企業の入社が約束され、『必ず出世する、大富豪確定』と国から注目されるカリキュラムとなる。
多くの受験生はこのカリキュラムに魅力を感じているようだ。
制作にあたっての資源や資金等は国からクラスごとの成果によって支援をされる。
なるほど。
「というわけでこれからクラス一丸となってジャンジャン制作していって下さいね!私はこのα組が1番の支援を得て、より良い制作が繰り替えされることを期待しています!」
俺は機械工学α組に配属された。
入試の筆記とは別の試験、制作見極めは、その年の各クラス担任5人が試験監督となり、受験生の中から直々に選ぶ形式となっている。
当然各ジャンルにおいて秀でた者がそのクラスに配属されるのだから俺にもその結果に不満はなかった。