大会準備
正月にかけられた腰への呪いはいつの間にか全身へ…
第八話、始まります
水曜日…『紅天ノ鳥、大会に向けて特訓(天望 ソラ/葉月 クレハ/斑鳩)』より
『そっちに一人おるで』
「確認した」
壁に当てて目的の位置に落ちるように手榴弾を投げる
その後、SMGを構えてフルオートで速射する
気絶をとったらそのままキルモーションで始末する
これ有能、だって弾の消費ないもん
『終いやね』
俺の後ろから現れた敵を斑鳩さんのARから放たれた弾丸の雨が襲う
シールドが割れて、相手も俺だけは殺そうと突貫してくる
「ビンゴ!」
そこに、先程の手榴弾が落ちてきて爆発した
もう、指パチン!って鳴らしてカッコつけちゃう(鳴らない)
そして、パシュ!っと軽めの音を立てて
煙の中で気絶した相手にトドメが刺される
画面に大きく『WINNER』の文字が出て
紅天ノ鳥の勝利を示してくれた
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『全く、最後の詰めが甘い』
そうやって、ヘッドホンの向こうから聞こえてくるプンスカ声は
先程の戦いで、見事SNRでラストキルを取られたクレハさんだった
『いや〜でも凄いわ〜クレハはんのエイム力』
『いえいえ、私なんてまだまだ』
と、口では言っているものの、満更でもなさそうだ
元々紅葉は細かい作業は得意な方でARだけでなくSNRを持つことによりヘッショ率高めな子に進化したのである
さすがにクイックショットは撃てないが四秒ほどで相手の頭をスコープに収めることは出来るようになった
なお、同じ条件で俺がスコープ覗いて標準を合わせようとすると倍の八秒はかかる
俺って、エイム力無さすぎだろ
やっぱり投げ物最高っすわ〜
ゲームが作り込まれてないと使えないっていう条件はあってもあれはいい、戦術の幅が広がる
SMG?下手な鉄砲かずうちゃ当たるというありがたい言葉があってだな…
まぁ、他の理由もないわけじゃないが
…そうだ、一試合終わったし、コメ欄の確認をーーー
『変態』『まじの変態』『普通投げ物であんな曲芸できない』『やっぱ変態だろ』『もげろ』
ワーオ、俺って変態?
「そうか、俺は変態か…なら」
『?』
「下着の色は何色ですか?」
『変態!』『そういう意味じゃねえよ!』『アホか!』『一周まわって天才』『もげろ!』
もちろん、この言葉は通話している二人にも聞こえる
『ふぇ?…って、あっ、ちょっと…へ、変態!』
「なるほど、俺は変態なのか」
『草』『クレハちゃんの必至ボイスを聞けたので許す』『耳が幸せ』『もげろ』
すると、そこにさっきまで静かだった彼女が
『ウチは白どす〜』
と、爆弾を落としまして
『解釈一致』『不一致やろ』『は?キレそ』『何か、もう少し派手な色かと思ってた』『それはない』『ないな』『とりあえず、ソラはもげろ』
「解釈論争が…というか、さっきからもげろもげろ言ってるやつ、前から居ただろ名前覚えたからな!いつもご視聴ありがとうございます!」
Kiefer Eternalさんだな覚えたぞ!
読み方なんだ?Kiefer?Eternalは分かるぞ!
『ソラはん、興奮しました〜?』
「あーウンソウダネ、コウフンシマシタワー」
コメントのせいで忘れてた
『ふぇっ?!ソ、ソラ!私は今、黒よ!』
「興奮した」『興奮した』『よくやった』『死んだ』
『へ、変態!』
「ありがとうございます」
『ちょっと〜!』
「『あはははは』」
結成から一週間も経ってないが、三人でふざけ合える仲にはなっていた
すると、手元のスマホから音が鳴りもう配信終了の時間が来たことを教えてくれる
「もう時間だな」
『そうどすな〜』
『そうね』
「それじゃあ、本日はお疲れ様でした、チャンネル登録…あと、紅天ノ鳥の応援、よろしくお願いします」
『します〜』
『よろしおす〜』
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「終わった〜」
『…』
『終わったな〜』
「とりあえず、野良マッチならなんとか勝てる程度に連携は出来るようになったな」
『そうやね〜でもな、結成してからこの早さならえぇほうなんじゃおざりませんの?』
「まぁ、早いとは思う」
あと、早いと言えば
先日の斑鳩さん襲来事件配信の直後、神綺さんに連絡しようとしたら
『登録しておきました。皆様と戦えるのを心待ちにしております。』
と、ありがたいDMが送られてきた
あれも早かった
いや〜斑鳩さんに関しても帰って貰うのにまぁまぁ時間がかかった
そんじゃ、そろそろお姫様のご機嫌取りでもしますか
「黒色」
『ちょっと!』
いっけね〜つい思ったことを〜
「いや、ごめんな、コメ欄で変態って連呼されたものでな」
『うぅ…』
画面の向こうで頭抱えてる紅葉の姿が容易に想像できる
ちょっと画面カチ割ったら出てこないかな?
『ウチの白は〜?』
クソっ!この清楚の皮を被ったセンシティブ女め!
リアルも可愛いからずるいんだよ!
「にしても、これから少しだけ練習出来ない日が増えるかもな」
『そうね〜』
『どうかしましたんどすか〜?』
「『文化祭』」
今は十月の第一週、芸術の秋真っ盛りである
俺と紅葉が通う高校も文化部最大の見せ場イベントである文化祭を行うことが決まっている
クラスの出し物の準備もある影響で帰りが遅くなる日も出てくるし、文化祭直後に定期テストがあるためその課題も並行してやるとなると、配信やゲームをする時間はかなり削られる
文化祭は第三週、テストは最終週
そして、大会は十一月の第一週に開催のため
圧倒的キツキツスケジュールなのである
文化祭をサボろうものなら、クラスの文化祭実行委員と我らが生徒会長様にぶん殴られる
えっ?なんで生徒会長と知り合いなのかって?ここで詳しく話す気はないが、あの人は俺の姉の狂信者です
あの自分の研究のことしか頭にない姉貴のどこが素晴らしいんだろうな
ちなみに、姉は大阪の大学院生で生徒会長とは一切面識がないはずなんだけどな…
話を戻そう
文化祭はサボれない
テストをサボった場合は…考えたくもないな、ただ一つ…母上が怒ってPCがぶっ壊される
大会をサボるのはありえない
つまり…
「はぁ…」
『なにをため息ついてはりますの?』
「憂鬱だ」
『そんなこと言っても始まらないわよ』
どれを取っても手詰まりだな
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「あ〜!クソっ!面倒くさい!」
購買で買ったパンにかぶりつき、飲み込んでから叫ぶ
…美味いな、焼きそばパン
「だよなぁ〜文化祭あるし、テストだし」
「…成績が」
松永殿も加藤殿も辛そうですな〜
俺はそれにもう一つあるんだぜ、すごいだろ
「カラオケでも行こうかな…」
「あ〜、いいな」
「ちゃんと自分の文化祭準備を終わらしたらね」
「ヒェッ」
「そんなに怯えなくてもいいじゃない」
そ、そんな、オコ気味な実乃里様に怯え以外の感情を持てると?
ていうか、この間どさくさに紛れて家に帰ったの根に持ってらっしゃる
こうなったら
「松永、君に決めた!」
「おまっ?!」
隣の松永を掴んで、実乃里さんに投げつける
二人が向かい合う…
そして
顔を赤くし互いに目を逸らせる
「ま、まぁ、こいつも、サボる気はないらしいし、ここは大目に見てやれないか?実乃里」
「ま、まぁ、ハ、ハルが良いって言うなら私はいいんだけど」
…初々しいですな〜
「性格悪いわよ」
おっと
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「…てな事があって、クレハに散々怒られた」
『そら、アンタが悪いわ』
「斑鳩さんまで」
『そんな事に、初々しい二人を利用するのは酷どす』
「…だって楽しいんですもん」
今二人でしているのは
家に帰った直後から始めている配信無しでの練習
…この人、高校三年生だよな?
「斑鳩さんって『もうほとんど推薦で入るとこ決まっとるよ』
「質問より先に答えを言わないで」
『あははは、ソラはんが分かりやすいのが悪いんやで』
と話してる傍らで野良で優勝していく
『あら』
「勝てた」
『普通は野良でもこうはいかんのやけどな〜ソラはんの元々のスペック高すぎますわ〜』
「ありがとうございます〜」
『思ったんやけど』
『ソラはんが前にしてた、FPSって《LoG》とちゃうん?』
と、そこで紅葉が通話に入ってくる
『えっ?!入ってきたら何この空気…』
「あ〜バレた?」
『そりゃ、分かりますわ〜PSYとか他のFPSとは根本的に戦い方が違うんやもん』
LoG、正式名称は『Legend of Guns』
前に説明した通り、リアリティを追及したガチンコサバイバルなゲームでリアリティ追及しすぎて発砲の音が銃によって変わったりする
同じハンドガンでも自動式と回転式で音が違うのだ
そして、斑鳩さんの言った、『根本的に違う』という部分だが
『ソラはんの戦い方はLoGらしいな〜』
「LoGらしい戦い方とは?」
純粋な疑問だ、正直バレるとは思っていたが…というか隠す気など元々ないが
俺としてはバレた理由はPSYで行った投げ物技が可能なFPSは他にLoGくらいだから…という理由かと思っていた
『その投げ物や』
「は?」
『その投げ物重視の戦い方は二年ほど前にLoGだけで流行ったモノや』
…二年前?
『あの、名推理中に悪いんだけど』
『?なんや、クレハはん』
『ソラがFPSしてたのっていつまでだったっけ?』
「…中学二年の終わりまで」
そうだ、そうなんだよ
『それって』
『三年前…やな』
「つまり、斑鳩さんの推理は答えは合ってるけど内容が間違っていたという事で…」
『そんな〜いけず〜!』
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それからは、学校行って、帰って特訓して
また、学校に行くの繰り返しだった
いつの間にか、野良マッチがランクマに変わりそこでも戦えるようになったころには
文化祭もテストも終わり、残すは大会だけになっていた
おかしい、PSY編とか言った割に短い
とまぁ、ソラくんたちにはもっと様々なことをして欲しいからこそ短くなりました
さらに、会話の中でこれ見よがしに出てきた文化祭等の話はあくまで『黒月 空』の物語であり『天望 ソラ』としての物語ではない…とカッコつけて言ったものの絶対自分で矛盾を起こします
ここで言う『黒月 空』の物語はまた別の機会にでも番外編として書こうかな〜と軽く思っております
とりあえず、この物語はVTuberとしてのソラとその方面で広がった人の輪がメインです
高校生としての空の物語とは別なのです
…なんで空は男子は苗字で女子は名前で呼ぶんだ?
それではいつもいつもとなりますが
ブックマークと評価ありがとうございます!
総合評価が100ptと書かれていた時は二度見しました。
それでは、また次の配信でお会いしましょう
I want to see you again…
キャラ設定
松永 春樹
友人その1、登場時自らのギガを犠牲に物語を説明しやすくしてくれた男、結構好きなやつなのでどうにかして活躍させたいが上記の通り彼が配信者になるとかしない限りそれほど関われない…不遇
実乃里さんとは幼なじみで好きの自覚がないが彼女を直視出来ないため、本気で病気かと悩む恋の病罹患者
モデルはリアルの友人
加藤 涼太
友人その2、松永と違い幼なじみポジがいなかったために、ここで初めてフルネームが分かった可哀想なやつ
ゲーミングPCを組み立てれる程度に機械に明るいため『加藤PC取り付けサービス』なる怪しい商売もやっている(なかなか人気)
その他得意な事として気配を消すことも出来るがドッキリ程度にしか使えない
彼にも春が来て欲しいものである…
モデルはリアルの友人
佐条 実乃里
ヒロインの友人ポジ、男勝りの根性と好きな人の前では顔を赤らめる乙女の心を持ち合わせた、我らが文化祭実行委員
松永をハルと呼ぶことで周りの女子を牽制する強かさを持ち合わせてたりする
恋の自覚は幼稚園の頃からあり
二人の距離は繊細にゆっくりと時に大胆に近づく、とっととくっつけ、DよりのC
モデルはリアルの友人
なお、松永のモデルの人と実乃里のモデルの人は両片思いでもなんでもないただの友人同士です
リアルの二人がくっついたらひっくり返る自信がある