配信開始
書いてみて分かった
雑談を文字だけで表現するの難しい…
ということで初配信で謎の話を始めるソラ君です
第三話、始まります
配信開始直後に突然、自己紹介をさせられた俺は…
「え〜と、正直VTuberになれといまさっき言われたので実感がありませんが…え〜と、その〜」
動揺しまくっていた
…もう一度深呼吸をする
よし、落ち着いてきたぞ
とりあえず、紅葉…いや、クレハの設定と矛盾しないように俺の設定を組み立てていこう
まずは、彼女との関係
「改めまして、天望 ソラです、クレハとは同じ高校に通う同級生で幼なじみです」
彼女は高校生という設定だからそれに合わせる
「そ〜なのよ〜ソラは仲のいいクラスメイトよ」
隣も上手に援護してくれる
「俺自身は普通の高校生なので…」
「またまた〜」
よし!俺は普通の高校生だ、特に大事な所だからな、テストに出されるからな
そう頭の中で独り言を言っているとコメ欄に色付きのコメントが流れる
『なんで突然仲のいいクラスメイトと一緒に配信を?』
スパチャでわざわざ質問してくれる人が出てきたな
「正直、俺も分かってない…クレハ?」
隣で紅葉が少し考えるような動きをする
「え〜とね、ソラにバレたから?」
まぁ、そうだろうな
だけど、面白いから少し意地悪してやる
「バレたイコール俺がVTuberになるってことに?」
「う〜んと、何となく?」
透かされた?!何となくって…
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「ソラはこれからどんなことがしたい?」
「これからか〜」
だいぶ時間が経って、ある程度、会話になれてきたくらいでクレハが聞いてきた
「ゲーム配信とかしてみたかったんだよなぁ〜」
『ワイもクレハちゃんのゲーム配信見たい』
『ソラさんホラー強そう』
などなど、俺の名前を出してくれるリスナーも出てきた
さすがはクレハちゃんのリスナー…相当、訓練されていらっしゃる
…俺もリスナーだったわ
「…ソラ、ホラー強かったっけ?」
「お前よりはビビりじゃないぞ」
「えっ?私は大丈夫よ」
「またまた〜そんなこと言っちゃって、中三の時の夏祭り」
ビクッと彼女の体が跳ねる
『草』『そこんとこ詳しく』
「ほら?リスナーさんも知りたがってるぞ」
「…」
「しょうがないなぁ、あれは確か…
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とても、蒸し暑い夏の日のことだった
とある件とさらに高校受験という負荷のせいで憔悴していた俺は追い討ちとばかりにクラスメイトの悪ふざけに巻き込まれ、当時から高嶺の花であった、紅葉を夏祭りに誘う羽目になっていた
「紅葉、夏祭り行こう」
「…私たち、受験生なんだけど?」
「うるせェ!行こう!」
「どこのル〇ィの真似してるの?!全然似てないんだけど…」
「デスヨネー」
わざわざ学校で誘わせる必要はないと思うな…
おい!チラチラ視界の端に入ってくるな!
ニヤニヤ見てんじゃねーよ!
にしても、彼女の反応…こりゃ無理だな
「…迷惑かけたな、誰かと一緒に行く約束でもしてたか?」
「…してないけど、そもそも私たちは受験生よ?」
何その、『自覚ある?』って感じの言い方、傷つくよ…
「あ〜、ごめんな、そうだよな…すまなかった」
そう言って、俺は立ち去ろうとする
「ちょっと待って!」
「へ?」
「あんた、私以外に誰か誘ってる?もしくは一緒に行く人…」
なんですか?それは、友達のいない俺への当てつけですか?こんちくしょう
「いない、お前だけ」
「そ、そう…」
…
「ねぇ…」
「ん?」
「夏祭りって何日だったっけ?」
「えっ?!」
俺はもちろん、奥でニヤニヤしてた連中も固まる
「え〜と、確か29日…」
「分かったわ」
「お前?!行かないんじゃなかったのか?」
「何?私、行かないなんて一言も言ってないんだけど、それにいいリフレッシュにもなるし」
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「ワーワーワーワー!!」
「なんだよ?今いい所なんだから」
「絶対、今のくだり必要ない!」
「え〜」
要らないの?
『はよ、続き』
コメントで急かされる
「分かったから」
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その後、なんやかんやあって
夏祭りに行って、色んな屋台を見て回って最後に近くの神社の所で休憩しようってなった
あと、クレハの浴衣は綺麗な紅色で可愛かった
「疲れた〜」
「あんたはどうして息抜きに来たのに疲れてるのよ」
「そう言うお前は?」
「…疲れた」
理由は簡単、ずっとクラスの奴らに監視されてたから
もちろん、俺に紅葉を誘わせた連中である
あいつらは暇なのかね…
そして、めんどくさいことにあいつらにストーキングスキルは皆無らしく追いかけられているのが二人ともすぐに分かった
だからこそ、人混みをかき分けてあいつらを引き離して、なおかつ人が来ない、近くの神社まで移動したのである
「あいつらも隠れるのならもう少し上手に隠れろよな」
「全くよ…」
そう言いながら、彼女は五段ある社の前の階段(と言っていいのか?)の上から二段目に腰掛けた
それを見て、俺は下から二番目、彼女の斜め下ら辺に座る
…
話が続かない
少し辺りを見渡す
境内はまぁまぁな広さで手洗い場や閉まっているが何かの受付もある
祭りの喧騒はどこへ行ったのか、完全に静まり返った二人だけの空間、手を伸ばせば届く距離がもどかしい…と、恋愛モノのラノベなら書かれる光景
ただ、祭りに電力が持ってかれているのか?
と思うほど、周りは暗かった
まぁ、月明かりがあるので見えないわけではないが
「ねぇ、空…」
「ん?なんだ」
彼女に話しかけられたので、少々体を捻って斜め上の彼女を見る
「…あなた、志望校とかあるの?」
「あ〜、そうだな」
俺の口から出たのは彼女の目指している高校よりワンランク下の高校の名前だった
「…やっぱり」
「どこがやっぱりなんだよ」
「いかにもあなたが選びそうな高校よね、上でもなく下でもない、可も不可もない感じ」
「嫌味か?」
「ううん、空らしくていいと思うわ」
その時の彼女の笑顔は淡く儚く感じられた
「…帰るか」
「うん…」
二人同時に立ち上がる
その瞬間、
ーーーポチャン…
「ピャゥ?!」
手洗い場の水が落ちる音に驚いて、紅葉が体勢を崩した
「おっと」
支えやすい場所に居たので思わずキャッチする
…柔らかい
「あ、ありがとう」
「どういたしまして」
幼なじみだけど
これは新事実、お前さては思ったよりもビビりだな?
彼女が前を歩きだす
俺はその後を追いかけたのだが
その時、不意に足下の小石を蹴り飛ばしてしまった
カツン!
「キャァァァァァァ?!」
軽快な小石の音に対して、目の前でしゃがみこんでしまった娘の悲鳴はまるでゾンビに出くわした一般市民のように切羽詰まっていた
「…大丈夫か?」
「…大丈夫、じゃないかも」
「具体的には?」
「腰が抜けた…」
腰が抜けた…コシガヌケタ…あぁ、あれね!最近(二年前)流行り(?)の腰が抜けたから背負って帰ってとかいうあれ?
…マ?
「あの程度で?」
「あの程度とか関係ない!死活問題!」
いや、小石の音にビビって腰抜かすとか…
「それで、俺はどうすれば?」
「背負って…」
「は?」
「背負って!」
「マジで?」
「マジ…このままじゃ動けない…」
…
「分かった!分かったからそんな目ので俺を見るな!」
「私だって、好き好んであんたに背負ってもらいたいわけじゃないからね!」
「あいあい、分かっていますよ」
お前が俺をどう思っているかなんて
という言葉は飲みこむ
「ほら、どっかキツくないか?」
「なかなか快適じゃない」
「そっすか」
彼女の温もりを(女性として何か足りないものと一緒に)背中に感じつつ
俺は帰途についた
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『ただの惚気じゃねーか!』『もげろ』
「辛辣ぅ!」
ちょっと酷くない?!君たちが聞きたいって言ったんだよ?
隣を見ると、過去話をされて恥ずかしいのか
紅葉は顔を真っ赤に染めて固まっていた
その後、時計を見ると残り時間が五分を切っていたので、紅葉をどうにかして元に戻して最後の挨拶ということになった
「え〜、今日の配信はここまでかな…ソラにはチャンネルを作らせるから登録してあげてね」
『はっ!』『仰せのままに』『そこの男がどれほどの者か拙者が試してやるでござる』
「あはは…VTuber活動するの確定してらぁ…」
「当然よ」
「不安…」
頭を抱える俺の肩を優しく紅葉は叩く
「まぁ、できることは私がサポートするし…それに」
「それに?」
えっ?!怖い、何モジモジしてるのらしくない!
「私にゲーム、教えてくれる?」
「可愛い」『可愛い』『可愛い』『可愛い』
ハッ!!一瞬でリスナーに戻っていた!
というかコメ欄も可愛いの嵐が吹き荒れてる
そんなに激しいと俺が吹き飛ぶのでやめて欲しい
「それでは、今日は重大発表、聞きに来てくれてありがと〜う、お疲れ様でした〜また会おうね〜バイバ〜イ」
無言になっていた、俺を肘で小突いてくる
「あ〜お疲れ様でした〜」
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「おっわった〜!!」
「はい、お疲れ様」
そう言うと、紅葉は俺にコップを渡してくれる
一口飲むと程よい温度の麦茶の味が広がる
「それじゃあ、空」
「ん?なんだ?」
彼女はパソコンの画面を示してくる
「チャンネル」
「あ…」
「作らないと」
その満面の笑みやめてください死んでしまいます
「わかったよ」
とりあえず、ゲーム時用のアカウントからチャンネルを立ち上げる
「よ〜し、それじゃあ」
俺が必要手順を全て終えると今度は彼女が俺を押しのけてチャンネルのアイコンなどを入力し始める
「お、おい」
「出来た」
「仕事早っ?!」
「あとはこれを青い鳥のやつで…っと」
そう言いながら彼女は、青い鳥のやつの葉月 クレハのアカウントで俺のチャンネル(仮)を拡散し始めた
「これでよし!あとは…」
「まだあるのか?」
「今から、空の家…行っていい?」
「は?」
最初の配信で過去話を始めるソラ君ェ…
相当訓練されたクレハリスナーの方々は突然自分たちのアイドルが男を連れてきても暖かく迎えてくれます
何故かって?そりゃ、同じ匂いがしたからでしょうね…
次回は紅葉が空宅に訪問してなんやかんやあったりなかったりします、おそらく配信はしない
あと二、三話くらいしたら別の配信者とか出てくるかもしれない
最後にブックマークと評価ありがとうございます
粉骨砕身、紅葉のデレデレを書かせていただきます
一応、彼女は一話までツンデレかクーデレ(のつもり)でした…どうしてこうなった
それでは、また次の配信でお会いしましょう
I want to see you again…