あなたとなら
リモートって集中出来なくてキツいっすね
あと、ワクチン打ったら腕が痛かったです(小並感)
第十七話始まります
私は空っぽでした
私には色がありませんでした
小さいころから可愛いと人形のように愛でられて
最初は嬉しかった
でもある時、突然それが恐怖に変わりました
みんなみんな、『可愛い』『綺麗』としか言いません
友達も大人たちもみんな、私を見ながら私を見てないと気づいてしまったからです
外見ばかりを褒めるのです
誰も私自身を褒めてくれる人はいなかった
家族はもちろん違いました
家の中では父も母も失敗すれば怒るし
努力をすれば褒めてくれました
だから、家に居るのは心地がよかった
まるで大自然の中にいるように綺麗な緑色の世界でした
でもひとたび外に出るとその色はすぐに褪せて
また白黒の世界に逆戻りです
幼稚園に入る前の話です
ある男の子と出会いました
聞けば驚くほど家が近く、親同士も仲の良い
いわゆる、近所の同い年の子でした
初めて会った日に顔をジロジロ見られて
結局みんなと同じか…
と落胆したのを覚えています
私が素っ気ない態度をしても懲りずに話しかけてくる彼を煩わしく思う日もありました
小学校に入学したころのことです
いつもは向こうから迎えに来て一緒に登校する、彼が一向に来なかったのです
仕方なく彼の家に行ってみると
彼は風邪になって寝込んでいました
その日は一人で学校に行き、普通に授業を受けました
いえ、受けようとしたの方が正しいですね
休み時間毎に色んな人が私に話しかけてきました
みんな、私を品定めするような視線で私のことを見てきました
気持ち悪くなって吐き気がしました
これなら彼一人に話しかけ続けられる方がずっといいと思えました
こんな日が彼の風邪が治るまで続くと考えると目眩がするほどでした
二日、三日と時間は過ぎ
彼が明日には来れるという日でした
ある女の子が私に聞いてきたのです
『二人って付き合ってるの?』
今思えば、おませな少女が単なる好奇心で聞いてきたことです
しかし私はそれに
『違う!』
と強く返してしまいました
その後のことはあまり覚えていません
そして、次の日…彼が朝から迎えに来てくれました
もちろん、開口一番に謝罪をして
これで騒がしいけど少し穏やかな日常に戻るのだと思うと少し安心しました
しかし、事件は起こりました
『好きです!付き合ってください』
クラスの男子に告白された
これ自体はよくあることだ
それに、視界の端では告白してきた男子の友達がチラチラとこちらを伺っているのも見えた
ついでに彼もそのメンバーに半ば連行される形で来てるのも
いつも通り、好きな人がいる、と言って断ればいい
そう言おうとした時だった
『好きな人、いないよね?』
と言われた
『えっ?』
『だって、お前はいつもそうやって断っているらしいけど、昨日、あいつとは付き合ってないって言ってたよね?正直、お前が一緒にいる男はあいつしかいないから、あいつと付き合ってないのなら好きな人はいないよね?』
訳の分からない子供の立てた理論だった
だけど、私は混乱した
いつもの断り方が通用しないのはわかったから
『だから付き合おうぜ、俺たちが付き合えば美男美女カップルってやつだ』
確かに彼の顔は整っていた
一部の女子たちが熱を上げる程度には…
直後、右腕が掴まれる
『なっ?いいだろ?』
『あぅ、あ…』
怖い、掴まれた腕が痛い
誰か…
『助け…』
『それくらいにしましょうよ』
『は?』
突然、右腕が解放される
隣を見ると
彼がいた、私の腕を掴んでいた手を無理やり引き離したのだ
『おい、二人は?どうした?』
『あ〜、あの二人なら突然二人同時に鼻血を出したから先生のところに泣きながら走って行ったぞ』
『は?お前、怒られても知らないぞ』
『上等だ、女の子を助けるのにはちょうどいい対価だな』
『あ、う』
声が出なかった、私は彼の後ろに隠れることしか出来ませんでした
その後は殴り合いの喧嘩が始まり、先生が駆けつけるまで私は泣いていました
結果、二人とも親が来て向こうの親に謝罪することになった
向こうの理不尽な言い分が通って全面的に彼が悪いことになったからです
彼の親は共働きの為、上の学年から彼の姉が代理で来て彼の母が来るまでの繋ぎをしてくれました
そして、親同士の話し合いの為
私たちは外で待っていることになりました
『ねぇ』
『ん?なに?』
『…さっきはありがと』
『なんだよ、感謝の声が小さいぞ〜』
『うっさい!あんたが騒がしすぎるのよ!』
彼の目元は少し腫れていて泣いていたのが分かりました
『泣いてたの?』
『は?全然、泣いてないし!いつも優しい姉ちゃんが鬼みたいな顔で来たとき、死ぬかと思ったけど泣いてないし!』
『ふふっ、必死すぎ…』
『笑うな!…いやもうちょい笑え』
『えぇ?なによ?』
『いや、やっぱり笑顔が似合うな〜って』
一瞬で冷めた感じがした
結局、彼も私の容姿を褒めたのだ
私自身は誰も…
『お前、自分のこと可愛いって思ってるだろ』
『は、はぁ?何よ、突然!』
『分かりやすい…あのな、いい事教えてやる、お前のために考えたありがたいお言葉だぞ』
『人の評価に振り回されるな、顔が可愛いのもお前だ、それを思い詰めるのもお前だ』
『結局、最後に自分を評価するのは自分自身なんだよ、どれだけ周りに決めつけられてもどれだけ周りに非難されようとお前自身が決めて後悔が無いのならそれが答えだ』
世界に色が広がった
私を指さして満面の笑みを浮かべる彼と私の世界を塗りつぶすように染まっていった
『…ねぇ』
『なんだよ、文句あるか?』
『カッコつけようとして何を伝えたいのか分からない』
『なにィ!』
『あははははははは!』
泣いた後に笑った
彼も笑っていた
今度からは誰かに告白された時
言い訳じゃなく心から本当に言える
『私、好きな人がいるんだ』
って
そして
『私、誓うわ!』
『ん?何を?』
あなたに振り向いてもらうためにもっと可愛くて綺麗で素敵な女になるんだって
まぁ、口には出さないけどね
『ひーみつ』
『あっ、ケチだな』
『誰がケチですって!』
『あっ、怒った〜、怒ると顔のシワが増えるんだぞ』
『えっ、ウソ?!』
『ウソですけど?』
『こんの〜!』
二人で走る世界は
燃えるような紅に染まりきっていました
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温かい水の中から水面に向かうように
意識がぼんやりと覚醒し始める
どうやら眠っていたらしい
懐かしい夢を見た
上体を起こすと顔を洗うために洗面所へ移動する
そして、洗面所の鏡には
あの日の紅と遜色ないほど紅潮した自分の顔があった
途端に目が覚める
「えっ、私…そんなに意識してた?!」
鏡の中の自分に向かって語りかける
なんとなく、頷いたような気がした
昨晩、彼とした会話
『どうしたい?』
という質問にすぐには答えられなかった
二人とも、大学には行きたいのだ
私は東京の…彼は大阪の…
「遠いなぁ〜」
洗面所から戻ってベッドに倒れ込む
「遠距離恋愛とかキツいよね」
…何を私は付き合っているつもりで考えてるの?
た、確かに文化祭とかそんな空気になったけど!
私がヘタレたせいで彼からは
男避けに付き合っているフリをしてる、って思われてるし…
私が悪いのよ!私が!
彼と同じ高校に入れて調子に乗って告白して、直後に恥ずかしくなって嘘ついたら彼が信じちゃって…
「あぅ」
机の上のパソコン…もう二年ほど使っている
最初は彼の姉さんから譲ってもらった液タブでイラストを描いていた
そして、ある日…動画配信を行うVTuberという人たちを知った
彼らは皆、楽しそうで魅力的で…
そして今、私たちを人生の岐路に立たせている
将来のことを考えるなら、先の見えないことをするより、ちゃんと勉強していい大学に行って
普通に就職する方が安定している
でも…
「私自身の選択に後悔がないならそれが答え」
彼の言葉を思い出した
「後悔のない選択…」
枕に顔を沈める
…
「よしっ!」
枕元のスマホを手繰り寄せる
いつもの慣れた手つきで彼に電話をかける
数回のコール音
そして
『ん〜、こんな夜遅くにどうした?』
「すごく声が溶けてるわよ」
『そりゃ、寝起きだからな〜』
「ねぇ、空」
『ん?』
「私、決めたよ」
『…そうか』
そう言うと、彼の声が少し真面目になる
「私…」
「やりたい!」
あなたとなら、どんな選択にも悔いはないから
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「…そうか」
『うん』
「やりたいか」
『うん!』
「分かった」
俺も頑張るよ
「…姉ちゃん、起きろ〜」
とりあえず、俺を抱き枕にして寝ている姉を起こす
「んぇ?おぉ〜なんで私のベッドに弟がいるんだ〜」
「ここは俺の部屋だよ、忍び込んできたのはそっち」
「…なんかいつもより五割増でイケメンになってないか〜?…決めたのね、紅葉ちゃんも」
「あぁ、あとは話し合った通りに父さんと母さんを説得するだけだ」
「あと、俺はイケメンじゃない」
「そうね、女をあと三、四人くらいは手篭めに出来るようにしないと」
「それはもはや超人の域」
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朝、姉を背負って起床
無理やりリビングの椅子に座らせる
母さんは朝食の準備を終わらせて父さんは新聞を見ている
四人揃っての久しぶりの朝食
食パンにソーセージに牛乳…いかにも朝食な感じだな
そして、食べ終わり少しの静寂が流れる
やべぇ、心臓がすごい早さで脈打ってる
まずは深呼吸…
…よしっ
「父さん、母さん…少し話したいことがあります」
二人同時に俺の方を向く
すぐに、真面目な話なことが分かったのか
父さんは新聞を置いて、母さんも素早く手を洗い台所から来てくれた
「なんだ?」
父さんは母さんが隣に座ったのを確認してから聞いてくれた
「俺…やりたいことができました」
二人の驚いた空気が伝わる
「まさか…」
母さんが少し疑うような目でこちらを見る
「…ゲームで稼ぎたいとか言うんじゃないでしょうね?」
…半分正解です
ゲーム嫌いの母のことだ、ゲームが関わっているだけで否定される可能性も視野に入れないといけない
だけど、嘘は言わない
「ゲームもそうだけど…配信者」
「…それはしたいこととかじゃなくて遊びの延長じゃない!」
うっ、その通りです
え〜と、ここは事務所に関してとかを…
「母さん、そんなに頭ごなしはいけないわ」
「夜ちゃん」
「それに、アイドル事務所って分かる?」
「え、えぇ…私も最近は少しハマってるけど」
ハマっちゃってるのか…
「それが、この話とどう関係してるの?」
「動画配信者にも同じように事務所があるのよ、そして、空はそこの所長…?社長…?まぁとりあえず、偉い人に直接誘われたのよ、いわゆるスカウトってやつね」
「は、はぁ?」
「…なるほど」
ここで今まで話を聞くだけだった父が口を開く
「あなたも止めてください、このままだと、空が道を踏み外しちゃう」
は?
「母さん!俺がそう選択したからって、道を踏み外すって決めつけるな!」
「そうよ!いくらなんでもその言い方は空だけじゃなく他の人まで馬鹿にしてるわ!」
「なによ!私は空のためを思って、そんな先の見えないことをするよりも、もっと価値のあるすることをして欲しいわから言ってるのよ!」
「空のため空のためって、それはただの束縛よ!本当に空のことを思うならしたいことをさせた方がいいわ!」
「…熱くなりすぎだ、みんなとりあえず座りなさい」
まさに鶴の一声、静かに発せられたその一言でいつの間にか立ち上がっていた俺たちは椅子に縫い付けられたように座って動けなくなる
「あなた…」
懇願するような母の声
そして、父が再度口を開く
「空にリスクを背負わせたくない母さんの気持ちも、空を助けてやりたい夜の気持ちも分かる、だが、二人とも自分の主張を曲げない意固地なところがある」
「父さん」
「もちろん、それを一概にダメとは言えない、だけど今はいけないことだ、そして…空」
「はい…」
「大学はどうするんだ?」
「い、行きます」
「両立は出来るのかい?」
「…分からない」
「そうか…」
父はまた考え込む
「そこで、出来ると試してもいないのに言い張ったら全力で止める気だった」
「えっ?」
「父さん?」
「あぁ、俺は空のしたいことを応援しよう」
隣から姉の声が漏れる
「ちょっとあなた!」
「そうだな…ただ不安ではある」
すると父は姉を見た
「例の事務所の人と話がしたい…出来るよな?」
「えぇ」
姉は自分のスマホを取り出して電話をかけ始めた
『…もしもし、こちら神綺です』
「父さんがあんたと話したいって」
『分かりました』
「えっ、えっ?」
もちろん、俺と母は困惑する
明らかにおかしい
話が都合よく運びすぎてる
隣の姉を見る…
笑ってやがる
呆れた…ここまで読んでたなこの女
「もしもし」
『はいお父様、こちら神綺と申します』
「あぁ、単刀直入に聞く、どこまで譲る?」
『おやおや、そこからですか?』
「空は大学には通いたいと言っている」
『関東でしょうか?関西でしょうか?』
「空…?」
突然、俺に話が戻ってくる
「大阪…かな」
「えっ、あんた大阪に来たいの?」
「あれ?言ってなかったっけ」
「…ということだ」
『なるほど、それでは』
『大学に通っている間の下宿先を提供しましょう』
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その後も父と神綺さんの交渉が続き
細かいことまで決めていた
…もちろん、俺抜きで
母は途中から条件がよかったのかニコニコし始めた
現金な人だな
「空」
「なんだ?姉ちゃん」
「頑張りなさいよ」
「はぁ」
事務所に入る大前提として、俺が大阪の大学に合格するというのが決まった
つまり入るのは一年以上後になる
「紅葉にも言っておかないとな」
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数回のコール音
『お疲れ様です、夜さん』
「お疲れ様じゃないわよ、弟に引かれたじゃない!」
『しかし、発案者はあなたでしょう?』
くっ、痛いところを
「…とにかく!あんた、あそこまで譲歩してよかったの?」
『元から金銭には多少の持ち合わせがあるので、大丈夫ですよ』
多少…ね
「本当にムカつくわ、あんた」
『なかなかの物言いじゃないですか』
「何が多少よ!東京に本部を置いて、大阪にも支部を作るとかアイドル事務所でも考えられないわよ!」
『なるほど、しかし某アイドル事務所は関西からもデビューさせてた気がしますが』
んなっ、減らず口を…
「あ〜もう!星ちゃんからの依頼じゃなかったらあんたをぶん殴ってたわ!」
思わず近くの壁を蹴ってしまいそうになり慌てて留まる
『だからこそ、彼女を通したんですよ』
「…神綺 五和、この仮は高くつくわよ」
『分かっています、いつか必ずお返ししますよ』
「弟に返しなさい!」
『あなたならそう言うと思っていました』
通話を切ってスマホをベッドに投げつける
悔しい…
「あいつのいいように転がされたようで悔しい!」
自分もベッドに倒れ込んでじたばたする
「くーやーしーいー!」
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紅葉への連絡も終えて部屋に戻ると
「くーやーしーいー!」
姉が暴れまわっていた
まぁ、なんだかんだ彼女には助けられた
だが、これだけは言わせてほしい
「姉ちゃん、そこ俺のベッドなんだけど…」
空くんは考えるより体が先に動くタイプなので危険なときはグーが出ます
ということで、突然始まった紅葉さんの独白!
何故か徹底的に旦那と娘に後詰めされる母の図!
の二本でお送りしました
まずは紅葉さんの独白から…うん、もう少し後で書くべきだったかな?と書いてからちょっと考えましたね…
それになんか紅葉さん、空くんに…いやこれ以上はやめておきましょう
次の両親から承諾を得る話ですが
本来の予定では父親も反対でした、そして夜姉さんが神綺さんに電話して様々な好条件を出して父親を納得させて母親にも理解してもらう流れでした
が、しかし…よく考えるとその場合、両親が現金すぎるというなんとも言えないクズ親になるような気がしたので修正しました
よって、夜姉さんのカッコイイシーンカット!
そして、一転…親父さんがなんかイケメンに見えてくるという不思議
だが相手から取れるだけ取るのは商社マンのクセ
母親は空くんの将来が純粋に不安なだけです
ということで次回からは高校三年生を軽く飛び越えて、大学・大阪編です
どうしても高校生じゃ、限界ありますし…おすし
やったね、ヒロインが増えるよ!
それでは、今日はこの辺りで
ブックマークと評価ありがとうございます!
もう少し増えたらいいな〜(チラッ)
と、冗談を一つ挟んで
これからも日々精進して参ります!
よろしくお願いします!
それでは、また次の配信でお会いしましょう
I want to see you again…
空くんが無事に大学に合格できたとは言ってない!
あっ、すみません…合格してないとストーリー総崩れっすわ




