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配信準備

皆さんにとってVTuberとは何ですか?

ある人は娯楽、またある人は生きがい

そして、筆者にとっては憧れでありいつかなりたいものです

黒月 空にとっては…何なのでしょうね…?

『皆さん!!おはこんばんにちは!!今日の配信を始めます!!』

一枚の薄い板の液晶の中で少女は嬉しそうに話しはじめた。


人間は夢を見なくてはいけないと思う

そう思い立った俺…黒月 空は高校二年生の夏にすぐ行動を起こした

機械いじりが趣味の友人に頭を下げて定価から福沢諭吉×2くらい安くゲーミングPCを入手して…そこで金が尽きた

「おかしいだろ!!」

むしゃくしゃして叫んだ

「そうだな、おかしいなぁ」

真正面から同意の声

「そうっスよね!!先…せ…い?」

「黒月、後で職員室な」


ーーーーーーーーーーーーーーー


「お疲れちゃん、こってり絞られてたな」

「多分、絞られすぎて脱水症状だな」

教室に帰るとすぐに男子二人に捕まる

俺の親友と呼んでも過言ではない友

加藤と松永だ

ちなみに、加藤はゲーミングPCをくれたやつ

松永は…

「ほら、クレハちゃんの切り抜き見て元気出せよ俺の奢り(GB)だからよ」

俺をVTuber沼にたたき落としたやつだ

そして今、松永がスマホで俺に見せようしている動画こそ、俺の最推しVTuber

『皆さん!!おはこんばんにちは!!今日の配信を始めます!!』

「可愛い(確信)」

おっといけないつい脊髄反射が…

『今日は、何の話をする〜?やっぱり私の幼なじみの話かしら?』

彼女はこういうアイドル系VTuberには異質な

《心に決めた人がいる》

と、初配信の時に言い放った娘である


ちなみに、彼女の意中の人とは彼女の幼なじみだそうだ


そのせいで配信初期の頃は全く人気がなく、配信を見に来るものは俺を含めて五人前後であった


しかし、最近は徐々に人気が出て、今ではチャンネル登録者数一万ちょっとの中堅VTuberというところまで昇ってきた


彼女の名前は


「葉月 クレハ…」


突然、真後ろで彼女の名前を呼ぶ声が聞こえた

俺のセリフを取るんじゃねぇ!!

一体どこのどいつだ?!


そう思い、振り返ると


「紅葉か」


俺のご近所さん兼同じクラス兼幼なじみの美少女の月葉 紅葉が立っていた


いや〜こんな美少女な幼なじみがいてもラノベみたいなことが始まる気配がしないんだよなぁ

いや、起こってはいるのか…?

よし、ここは俺からアプローチを

「相変わらず可愛いな」

「はぁ?!またそんなこと言って、たぶらかすのはよして」

「またやってるぜあの二人」

「相変わらず懲りないな空も」

教室の至る所から笑い声が聞こえてくる

そんなの俺は気にしないぞ、俺と紅葉の間には見えない絆の糸がな…

あれ?紅葉さーん?どこいくんですか〜

「おーい空〜見ないのなら俺のギガが無駄になるんだけど?」

「おう!すまんすまん」


ーーーーーーーーーーーーーーー


退屈な学校の時間が終わり

部活に行くやつは部活に帰るやつはさっさと帰りの準備をし始める

紅葉の姿はもう既に消えている


加藤と松永は部活があるため、二人に

「じゃあな」

と、別れの挨拶を告げたあと一人で学校を出る


そして校門の方を見ると

「やっぱりいた」

紅葉だ


ついでに別のクラスのイケメンども(陽キャ)



紅葉の隣を狙う者どもめ!俺が幼なじみという貴様らには絶対に越えられない壁を見せてやる!


「なんだ?紅葉、まだこんなところにいたのか?」

「空…」

二人でアイコンタクトを済ませる

こっちは『早くしろ』

向こうは『ありがとう』

…だろう

「ごめんね、鈴木くん、安達くん、私もう帰らないと」

そう言うと彼女は俺のところに駆け足で来て

「ありがとう」

とだけ言って俺の手を引いて歩き出した


へっ、どうだ見たかイケメンども、てめぇらはサッカーボールと追いかけっこしとけ(精一杯の煽り)


ーーーーーーーーーーーーーーー


え〜と、何から話そうか

とりあえず、俺たち二人の関係だな


俺たちは…多分、付き合っているのだと思う

なんで確証が持てないのかと言うと、彼女は一言も俺に『好き』とは言ったことがないからだ

向こうからの要求で一応、帰りはできるだけ一緒に帰るようにはしてるが

学校での俺たちの関係は、ナンパ男とそれを突っぱねる美少女といった感じだ


なのに何故、一緒に帰っているのか?

と聞かれたことがある

その時、彼女は

「男よけ」

とだけ言った


おそらく、学校でも俺を男よけに使っているのだろう

『もし私に擦り寄ってきたら、こいつがめんどくさいぞ』

といった感じだろう


それにしても、今日、彼女は学校で気になることを言った

「なぁ、紅葉?」

「何?」

「なんでお前がクレハちゃんを知っていたんだ?」

そう俺が言うと、彼女は少しだけ考えてから

「どこかで見覚えがあったから」

「なるほどな〜」

「何?空はあんな感じの娘が好きなの?」

「紅葉は好きだぞ」

「話を逸らさない」


oh......少しくらい反応してくれてもいいじゃないか


「俺はああいう一途な娘は好きかな〜それと」

「それと?」

「あの娘のリスナーがまだ一桁ぐらいしかいなかったころから知っているし、なんなら初配信もアーカイブじゃなく生放送で見た」

「えっ?!」

えっ?!ってなんで俺の一世一代の告白のときよりも驚いてるの?傷つくよ


その後は彼女が何か考えごとをし始めたので会話は中断された

そのまま、俺たちは彼女の家に着くまで一言も話さなかった


ーーーーーーーーーーーーーーー


我が家に入り手洗いだのあれこれをし終わり部屋に入る

「さ〜て、今日も時間ちょうどに見れそうだ」

パソコンを起動し流れるような動作で動画を視聴し始める


すると、待ってましたと言うかのようにスマホから声が聞こえ始めた


『皆さん!!おはこんばんにちは!!今日の配信を始めます!!』


毎日、平日この時間から一時間、彼女の雑談配信がある

とりあえず、チャットで『おはこんばんにちは!!』と送る

彼女がこの挨拶を使う理由は『こんにちは』や『こんばんは』に固定するとアーカイブから見たときに時間の差が生まれるから、どうせなら全部まとめた『おはこんばんにちは!!』となったのだ


『今日はビッグニュースがあるの!』

嬉しそうに話す彼女の目が細められ笑顔になり、真紅の髪が左右に揺れる

『なんと!私の幼なじみが学校で私の動画を見てたの!!』

「なんだって?!」

『でもね、彼、私の声だって気がつかなかったの』

その幼なじみ、なかなかの鈍感系とみた、俺みたいな敏感系男子ならすぐに気がつくからな

とりあえず、『一歩前進だね』と送る

彼女もそれを見たのか

『うん!これからもっと接近しちゃうよ♪』

と言った

『それでね…』

彼女が何かを言おうとした瞬間

「ちょっと!空!!」

「何?!今いいとこ!」

母上の妨害が入る

「これ、少し作りすぎちゃったから月葉さんのところにおすそ分けしてきて」

手には小さめの鍋

「はぁ?別に今じゃなくていいじゃん!!」

「そんな訳の分からないの見てる暇があったら行けるでしょ!」

母さんは俺がゲーミングPC(こいつ)を手に入れたのをよくは思っておらず目の敵にしている節がある

これ以上怒らせても面倒だからな


…クレハちゃん!!ごめん!


「分かったよ!行きます!」

「あら、ごめんね押し付けた()()()で」

押し付けた『みたい』じゃなくて押し付けたんだよ!!

と言わなかった俺を誰か褒めろ


ーーーーーーーーーーーーーーー


ピンポーン

俺の気持ちなど知るよしもないインターホンがとても元気のある音を奏でる

『はーい、あっ、空くん!ちょっと待っててね〜』


数秒の後


「いらっしゃ〜い」

紅葉の母親の青葉さんが出てくる

いやぁ、相変わらずいいものをお持ちですな〜

娘さんにも分けてあげたらよろしいのでは?

「これ、母さんが作りすぎてしまって」

「あら、たびたびありがとうね〜ちょうどいいわ上がっていきなさいな」

「えっ、俺は」

クレハちゃんが

「いいからいいから」

やんわり断ろうとしたがやんわり度もふんわり度もこの人には敵わない

奥さんに導かれるままに俺は月葉家に入っていった


ーーーーーーーーーーーーーーー


時計を見ると、配信開始から五十分経っていた

…もう間に合わないな

今頃、彼女はスパチャ返しの時間だろう

俺は青葉さんに促されてリビングで椅子に座らされる

「いつも紅葉がお世話になっちゃってごめんね〜」

「いえ、紅葉には俺の方が助けられてばかりですよ」

「うふふ〜あの子、帰ってくるとずっとあなたの話ばかりしてるのよ〜」

そんな馬鹿な、あいつは俺のことを男よけとしか思ってないだろ


「あっ、そうだ!」

突然、青葉さんが台所に向かい、帰ってくるとその手には皿に乗った可愛らしいケーキがちょこんと座っている

「これ、あの子に届けてあげて、空くんのもちゃんとあるわよ〜」


次の瞬間にはケーキが二つに増えていた

マジックかな?


「…二階ですか?」

「そうよ〜あの子の部屋、前と場所は変わってないからね〜」

「了解しました」

青葉さんには勝てなかったよ


ーーーーーーーーーーーーーーー


二人分のケーキとフォーク、それに飲み物を持って二階へ上がり突き当たりの右のドア…紅葉の部屋の前までたどり着く

声をかけるべきなのだろうか?


…いらないな、着替え中とかだったら大惨事だけどこちらにとっては眼福以外の何ものでもないのでな

「女子の着替え中に部屋に間違えて入るなんてハプニング、こんな現実(リアル)じゃ起きないだろうし」

あれは男の夢が詰まったラノベだから起こるものだ


そうして、俺はドアノブに手をかけた



































いや、かけようとした

中から聞こえてくる声で否が応にも止まらざるを得なくなった

なぜなら、その声は…話し方は…紅葉であって紅葉じゃなかった


『今日もお話聞いてくれてありがと〜、また明日もこの時間に…それじゃあ、お疲れ様でした〜』


「嘘だろ…いや…」


直後、ドアが開かれる

「ママ〜おや…つ…」

「そうなのか?」

「どうして…」

よく聞けばそう聞こえなくもない


「紅葉…」

「空…」


「お前が、葉月 クレハだったのか…?」


目の前の彼女はただただその綺麗な眼を見開いて俺を見ているだけだった

…いたって陳腐なはじまりですね

これくらいが個人的には好きなのですが…

おっと、自己紹介がまだでしたね

Aーskyです、こう書いて『エースカイ』と読みます

プロフィールにも書いてありますが、将来の夢はVTuberです

なるには…早くてもあと一年半は必要ですけどね(笑)

名前はおそらく『黒月 ソラ』か『天望 ソラ』です

…無駄話をしすぎましたね

また、次の配信でお会いしましょう

I want to see you again…

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