本物
「いやー参ったね。」
詩音が疲れをごまかそうとおどける声が聞こえる。
昨日は一日中警察の事情聴取に拘束されていたから大変だっただろう。
エアコンからイソフルランを流したことなども、上手くごまかしてくれたようで助かった。
監視カメラを気づかれないような小型のものも設置していたし、色々と突っ込まれる点があったはずだ。
今回は被害者だったので、企業秘密だの一点張りで通せたみたいだが、睨まれてしまったかもしれない。
僕の存在がバレたらさらにハッキングの数が増えるかもしれないと思うと少し憂鬱だ。
「はい、着いたよ。」
Discordの向こうから詩音の声が聞こえてくる。
そう、今日は僕の家に行くことになった。
僕の家で、僕のプログラムの入ったUSBをPCに挿し、本物の僕とご対面というわけだ。
一昨日あんな事件があったから、早めに済ませておこうということになったのだ。
「あら、詩音ちゃんいらっしゃい。ごめんね、怜輔があんなになってしまったのに来てくれて。」
母さんが詩音に話しかけている。
あー久しぶりに聞くなあ。
ほんとは久しぶりに思えるようにプログラムされているだけだが、はっきりと懐かしいという気持ちが湧き上がってくるのを感じる。
同時に少し寂しさも覚えてしまう。
「怜輔、入るよ?」
感傷に浸っていると、母さんとの会話を済ませた詩音が僕の部屋をノックする。
そのまま入るなよとは過去に何回も言ったが、直してくれていないようだ。
「どうした?」
無機質な僕の声が聞こえる。
確かに感情が抜け落ちているようだ。
声だけ聴いてもそれが自分のものだとは分かり辛かった。
「今日は怜輔をなんとかできるかもしれないものを持ってきたんだ。」
詩音がそう言いながらPCを起動させたらしい。
USBを挿す音が聞こえ、また一つ僕の意識が増えた。
カメラを通して本物の僕を見る。
話には聞いていたが、ここまでひどい顔をしていたのか。
本当に感情が抜け落ちたというのがふさわしいほどに無表情であり、こちらの方が偽物じゃないのか?と思うほどだった。
アンドロイドで僕の思考能力だけ電脳世界に移されたと考えた方が良いのではないかとさえ思える。
本物の僕は僕を見て口を開く。
「なるほど、僕がこうなったのは君が理由か。」
理解が速いようだ。
感情が抜け落ちている分、論理的な思考がしやすくなったのかもしれない。
僕も反応を返す。
「そうだ。僕はMRIが終わってから3日後にこの空間で覚醒した。最初は君がツイートしているのを見て自分が偽物なのかと絶望したよ。ただ、僕が生まれた代償に君がこうなっているとは全く想像もしてなかったけど。」
最低限の反応しかしないのがあまりにも痛々しい。
これではまるで、本物の僕から感情を抜き取ってできた存在が僕みたいじゃないか。
Roplar社と松殿に対して怒りが湧いてくる。
彼らは僕の身体になんてことをしてくれたのだろう。
「そうか。納得したよ。本当は怒りを覚えるところなんだろうけど何も感じることができない。不味いことだとは分かりつつ、焦りも感じない。今はかろうじて昔の記憶を頼りに生きているだけだよ。僕はどうしたらいいんだ?」
本物の僕の言葉にハッとする。
周りに迷惑をかけていることを自覚しているのだろう。
もしかしたら自殺だって考えるかもしれない。
過去の僕の思考なら頭によぎることはあっただろう。
とりあえず松殿の言ったことを思い出し、自分で調べた結果と照らし合わせて助言する。
「ひとまず医者に言った方が良い。感情が抜け落ちているなら大脳の扁桃体が何らかの異常を起こしている可能性が高い。こうなった原因のMRIを扱っていない医療センターを受診することをお勧めするよ。」
僕の思考や感情の電気信号をコピーすることができたなら扁桃体を刺激しているはずだ。
そこがおかしくなっているなら、Roplar社は今まで100人もの廃人を産み出したことになるが……
にじさんじ所属ヴァーチャルライバーの家長むぎと申しま~す(見てる人は顎が尖ってくる)
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