第8話
「スカイレースに負けたのに、全然悔しそうじゃないのね?あなたの泣いている顏が拝めると思ったのに・・・残念だわ」
茶色い長い髪の女性が後ろに腕を組み笑みを浮かべている。洒落た装飾品を身に付け明らかに他の人とは比べ用がない程に気品を感じる。
「レースに負けたのは悔しいさ。ただ俺はアストレアの犬になるのだけは最初から御免だっただけさ」
「あら、最初から負けるつもりだったの?」
「わざと負けるほど腐ってはいないさ。これも運命だよ。俺は元々、アストレアと交わる事のない運命だったのさ」
「あら?本当にそれだけ??」
悪戯っぽくシュナイデルの顔を覗き込む。
「ああ、それだけだ」
彼女の行動を無視し表情を一切崩さないシュナイデル。
「ーーっもお、女心が分からないのね!!冷たい男!女の子にモテないぞ!!」
真っ赤にして顔を膨らませる。
そんな彼女の頭にポンと手を乗せ、
「俺のパートナーはお前しか有り得ないさ。クローディア」
その言葉に満遍な笑みを浮かべるとシュナイデルの腕にしがみ付く。
「本当に!?本当おおお?」
「ああ、元々優勝したら貴族のパートナーなど断るつもりだったよ。何よりクローディア君より優れた魔導能力者はいないさ」
「シュナイデル・・・私、あなたの為に一生懸命頑張る」
二人はゆっくりと歩み出したーー。
「本当にアストレアじゃなくていいの?シュナイデルの生まれ故郷でしょ?」
「何度も言わすな!アストレアなど興味無い」
二人が乗り込んだのは巨大要塞ホエール。
世界三大勢力、アストレア帝国、レムリアそして・・・。
シュナイデルがパートナーにしている女性のクローディア姫が居るのは、バルティカ共和国だった。
クローディアはシュナイデルが自分の為に故郷を捨てたのではないかと思っていた。
決して表情には出さないシュナイデルの本当の気持ちが知りたかったーー。
もしかしたら、自分はシュナイデルに能力だけを利用されているのかもしれない。
脳裏を色々な思いが巡っていた・・・。
シュナイデルが本音を語ってくれないのは自分自身がまだシュナイデルに本当の意味でのパートナーとして認めてもらっていないからかも知れない。
クローディアは堅く決心する。
必ずシュナイデルを世界一の操縦士にしてみせるーーと。