第4話
巻き上がる砂ぼこりで様子を伺うことが出来ず観客席のギャラリーや審査をする各国のスカウトからも勝利の行方を固唾を飲んで見守っているーー
どちらが勝ったのか?
貴族の天才エリートで将来を約束された者と片や地上はおろか地下出身の下民の対戦。
呆気なく勝負はつくと思われていた。
しかしーー現実は違った。
貴族の天才エリートは、地下出身の下民に大苦戦を強いられたのだ。
しかも、下民とは思えない確かな操作技術と
空中感覚は天性の物だとしか言いようがなかった。
『ま、まさに大波乱。予想を覆すクロード選手の活躍、実に素晴らしい操作技術です。優勝大本命と言われたシュナイデル選手が大苦戦の末、相討ちのいう結果です。果たして勝利の女神はどちらに微笑むのか」
徐々に砂煙が晴れて行くーーそれにつられ糸が張るように緊張が広がる。見守るギャラリーはその一瞬を見逃さないように目を凝らして一点を集中して見守る。
砂煙の向こうに映し出されたのは機体は、クロードのシップだった。
大歓声が湧き上がると同時にざわつき始めるギャラリー。
史上初めて貴族が一般市民に負ける大波乱が起きたのだ。
『優勝は、クロードぉぉぉ!!』
声援に応えるようにクロードは操縦席から手を振りゆっくりと会場を一周した。
競技用のシップから降り、天高く拳を突き上げたクロードは歓喜の叫び声を上げた。
「クロード、負けたよ。完敗だ」
その声に振り向いたクロード。そこには先ほどまで死闘を繰り広げていた相手、シュナイデルが手を差し伸べ立っていた。
「ありがとうシュナイデル。勝てたのは偶然だよ」
手を握るクロード。その二人の姿に拍手が起きる。
「お互い、検討を祈ろう」
「ああ」
試合に勝ってもオーディエンスで獲得してもらえる国や企業がなければ操縦士として働くことが出来ない。ましてや、シップは高額なので一般庶民が保有していることは無いので自分で仕事を見つけることも出来ない。
空を飛ぶ仕事が欲しいなら今ここで札を上げてもらうしかないのだ。
二人は、シップの搭乗乗り場から会場中央にあるメインステージへと移動する。
☆ ☆ ☆
『ーーでは、決勝戦のオーディエンスです。ますば、アストレア出身のシュナイデル・スチュワート選手。獲得したい国や企業の代表はお手元の札をあげて下さい』
未だかつてこんな光景を見たことがあっただろうかーー。
会場全体を震撼させるた。驚きと歓喜に包まれる。
『これは凄い事になりました。す、全ての札が上がりました!!』
ステージの上で頭を下げるシュナイデル。
「自分には、勿体無い評価です。ありがとうございます」
ステージを降りようと石造りの階段を降りると、クロードが代わりにステージに向かう。すれ違い様に、
「凄いな、満場一致の評価だ」
「クロード、君も期待して良い。今年の主役は間違いなく君だよ」
「ありがとう。シュナイデル君の言葉がなりより励みになるよ」
クロードはゆっくりと石造りの階段を登りステージに上がった。
『ラストは、勿論この男! 今年の優勝者ウルカニア出身のクロードだああああ!では、オーディエンスをお願いします』
クロードは、祈るように目を閉じ下を向いた。
ざわざわと静かになる会場ーー明らかに雰囲気が先程とは違う事にクロードも気付く。
ゆっくりと目を開け辺りを見渡すーー。
札は、一枚も上がっていなかった。




