第12話
レムリア城にて。
「イズミさん、ラグーナに乗せてもらえるんじゃなかったんですか?」
クロード達が今いるのはレムリア城の1階フロアだ。先ほどまでは航空養成所にいたのだが、なぜか航空機とは関係なさそうなレムリア城に来たのだ。
「そうよ。ラグーナに乗るのよ」
「え?乗るの前に何か準備があるってことですか?」
「準備なんていらないわよ。別にこのままでも構わないわ」
「ーーなら、また航空養成所に戻るんですか?」
その質問に思惑通りと言わんばかりに笑みを浮かべるイズミ。
「戻らないわよ。だってラグーナはここにあるんですもの」
「此処って?」
クロードはキョロキョロと辺りを見回すが、特に変わったところは無い。それもそうだ、それ程の巨大戦艦を見逃すはずがない。
「あっ!もしかしてーー」
アイラが手を叩き何か思い付いたようだ。
「アイラ何か分かったのか?」
アイラは頷きながら、
「ラグーナはレムリア城の地下にあるんじゃないですか?」
「アイラちゃんさすがね!正解です」
手をパチパチと叩きながら祝福するシャルル。
「ここからは機密事項よ。口外しないでね」
クロードとアイラは頷いた。
それを見て笑みを浮かべたイズミは壁に隠れた隠しスイッチを押した。
♦︎♢♦︎♢♦︎
「す、凄い。城の地下にこんな要塞があったなんてーー」
地下へのエレベーターに乗りながら目に飛び込んできた光景にクロードは目を丸くしている。
「ここがレムリアが誇る地下要塞バビロン。そしてーー」
イズミが指を指すその先には、
「ーーあれが、ラグーナ・・・凄い」
シャルルは言葉を失った。
ゆっくりと床が下降して行く中、目の前に表れた巨大な戦艦は闇を突き刺すかのようにそびえ立っていた。
エレベーターが最下層に到着すると、上品なベルの音を鳴らし、扉が開いた。
「艦長にシャルル様達が到着した事を伝えて来るわね。少し待ってて」
イズミは足早にラグーナの搭乗口から中へと消えて行った。
「これはまるで城だな」
「うん。遜色無いくらいだよ」
ーー改めて、クロードとアイラがラグーナを見上げていると、渇いた靴の音が近づいて来るのが分かった。
☆
「あら?誰がいるかと思ったらシャルルじゃないの。こんなところで何してるわけ?」
シャルルはビクッとしながら、
「お姉様・・・」
「噂は聞いているわよ。何でも貴方が勝手にそこの下民の獲得を決めたそうじゃないの?」
「はい。私が決めました」
「どういうつもりかは知らないけど、あまりレムリアの名を汚さないでほしいわ」
「そんな言い方・・・」
「おいおい、何か臭うな」
チャラチャラした男がラグーナの搭乗口から表れた。
あからさまに嫌な顔をするシャルル。
シャルルをチラ見し「ふんっ」と鼻で笑った後、クロードの横でわざと肩をぶつけ、
「何か臭うと思ったら地上の下級民族が混じっているな。エアーレースでマグレで勝ったからって調子に乗るなよ!!」
クロードが睨みつけるが無視し、
「下民のサポーターとかマジ笑えるわ。レムリアの恥晒しね」
「アリア行こうぜ!ラグーナに乗ったら便所掃除で雇ってやんぜ。下民は得意だろ?」
二人は大笑いしながらエレベーターに乗って去って行った。
「な、何今の感じ悪い人達」
「シャルル確か、お姉様って」
シャルルが申し訳無さそうに俯向きながら、
「・・・はい。姉のアリアです」
「あの男は?」
「レムリア航空魔道隊のエース格ライアン・ホーキングです」
「あいつが・・・エース?」
「彼自身は私から見れば大した操縦士では無いのですが、お姉様の魔力はトップクラスです。良いサポーターはどんな操縦士がシップに乗ってもそれをカバーしてしまいます」
クロードは人指しを横に振りながら、
「良いサポーターと良い操縦士が組めば最強だろ?」
ーーそれに、クロードはアイラの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「俺には最強の整備士もいるんだからな!」
アイラは笑顔になり、
「任せてよ!あんな奴らにクロードが負ける訳ないよ」
「そうですわね。全力でサポート致しますわ」
手招きするイズミがラグーナから見え、クロード、アイラ、シャルルはラグーナへと乗り込みのだった。
ーー ラグーナ搭乗 ーー