わい、お別れする。
レイムリファウン王国編のラストです。
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レムリアの滞在からひと月が経過し明日帰国となる。
外出が自由だったのでメチャクチャ名残惜しさがある……
俺はエルファーナと海辺に来ていた。
「エルファーナ……短い間だったけど明日帰るわ。」
「…………」
エルファーナはうつむいて返答しなかった。
「俺、ヴェルコニアに帰ったら10年修行にでなきゃいけねぇんだ。」
「知ってる……ここでじゃダメなの?」
このひと月で敬語もとれ、コイツとの距離も縮まった。
お互いに同じ年頃の者と接する機会もなく良い距離感で接する事が出来たのが功を奏したのであろう。
「もう決まってるんだと。ヒノモトって国だ。」
「……そう。」
「お前は修行的なものはねぇのか?」
「……ない。」
女ってむつかしいなぁ……
「別に死ぬわけじゃねぇし、いつまでもグジグジ言うな!」
「そんなの分かんないじゃん!10年だよ!10年!」
あかん、やってもうた……
しばらく沈黙が支配する。
するとエルファーナから口を開く。
「私、姉さんみたいに待つ。そして、ヴィクトール王子のように、アルデルシアに釣り合う女になる努力をする。」
「そうか……俺さ、目標があるんだ。」
俺は自分の目標を語る事にした。
「俺、24になったら死ぬかもしれねぇんだ。でも努力で生き残れたら、独立して農家になろうと思ってるんだ。」
「うん」
エルファーナはただ頷く。
「お前にその手伝いをしてもらいてぇんだ。王族じゃなくなるけどそれでも待っててくれるか?」
「勿論だよ!」
俺はエルファーナとしばらく抱き締めあった。
「そうだ、お互い再開した時の為に愛称で呼び合おうぜ。」
「いいね。」
「俺はアンディ、お前はファナだ。」
「そうしようアンディ。」
「もう遅いから城に戻るぞ、ファナ。」
次の日 レムリア城にて
「お世話になりました。」
「こちらこそ無理を言った。10年後に会える事を楽しみにしておるよ。」
レイムリファウン王に挨拶をしたのち、城を後にして、馬車が迎えに来まで待っていたその時であった……
『今までお世話になったのは私です。』
『リーザ?』
『別れの時です。アルデルシア様が5歳を迎える年にお別れすると宣言しておりましたが、それが今です。』
『これからどうするのさ!まだ19年も先なのにリーザがいなくなったらどうやって強くなるんだよ!』
『貴方はもう十分に強い。私の加護などいらないくらいに……』
『加護……リーザは創造神なのか!?』
『いえ、私は旧精霊神王です。私は創造神ヴァルディヴァラム様の最初の下部。』
ヴァルディヴァラムの命により世界を構築した精霊神王リーザ。
マキュリファウンス創世神話だ。
『冗談はいいよ……』
『聞きなさいマキュレスト。これから貴方には大きな出会いがいくつもあるでしょう。貴方の宿敵、大いなる母は魔物を産み続けます。貴方が大いなる母との戦いに集中するには、信頼出来る仲間を探さねばなりません。もう運命の歯車は回っています。これからは自分の足で歩きなさい。』
突然の事で俺は放心状態となった。
リーザは俺が転生してきた瞬間から常に一緒にいる母親のような存在だった。
それが急に無くなるなんて考えたくもなかった。
しかし俺がこんなではリーザが悲しむ。
最後に……最後はキリッとしてお別れしよう!
『リーザ、今まで有難う。俺、必ず混沌の邪竜を倒してみせる。だからどこかで見守っていてくれ。』
『それでこそアルデルシア様です。どうやら時が満ちたようです。ありが……』
その後、リーザからの念話が来ることは無かった。
そしてしばらくすると馬車が到着した。
馬車は予め俺が魔改造しておいたものであり、乗り心地もテスト済みだ。
「アンディ、またね。」
「またくるわ!ファナ。」
エルファーナは泣きながら見えなくなるまで手を振っていた。
付き添いに来ていた近衛騎士団とエルティアナの姉ちゃんは何故だかここ一番の笑顔で手を振っていた……
次回新章へのつなぎです。
いつも有難う御座います。




