わい、聖女に会う。
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俺達ヴェルコニアの要人はレイムリファウン王国へ向かっていた。
メンバーは親父、ウィル兄、リブラルドのおっさん、ウェルバ、その他数名の世話係だ。
何をしに行くかと言うと兄貴の婚約パーティーと俺のお披露目会だ。
ヴェルコニアが主催予定だったが、あちらの都合でレイムリファウンで行うはこびとなった。
「馬車ってゴツゴツして痛えな。」
「馬車は苦手ですか?」
隣にいるウェルバが話し掛けてくる。
「初めて乗ったけどガンガン跳ねるし乗り心地は最悪だな。ウェルバも遙々と大変だな。」
「いえ、名誉な事ですから。」
ウェルバはヴェルコニアから馬車で7日程掛かる国境の町、ウルバースから来るはめになった。
理由は騎士団長の後釜が見つからず結局継続してウェルバが続ける事となり、今回は他国での護衛である理由からやむなく参加となった。
「そもそもウチの王族に護衛なんかいらねぇだろ。なぁ?」
ウェルバは苦笑いし頷いた。
3日後ようやくレイムリファウン王国の首都、レムリアへ到着した。
「け、ケツが痛い。帰る前に馬車を改造させてくれ。タイヤとサスをいじるだけで乗り心地が変わるはずだぁ。」
もしくは転移を使わせてくれ!
「お、恐ろしい事とになりそうですね。」
何を言うかウェルバ君、僕は正しく改造するだけだよ。
日本の車の技術を今度君に見せてあげよう。
「全員揃ったな?宿に行くぞ。」
「陛下!自由行動は何時まででしょうか!?イデッ!」
返事として兄貴から拳骨が飛んできた。
うぅ。観光したい……
王族御用達の宿で一息いれ、明日の打ち合わせを行う。
「バーン。お前の仕事だが、向こうの三女の相手をしろ。お前と同じ年で聖女と呼ばれて神と崇められているらしいぞ。」
げ、聖職者かぁ……相性悪ぃんだよな。
「はいはい!わかりましたよ…イデッ!」
つれない返事にまたもや兄貴の拳骨が飛んできた。
打ち合わせはその後も続いていたが俺にはどうでも良かった。
そして当日……
「よくぞ来て下さった。」
「本日はよろしくお願いします。」
両国王はガッチリと握手を交わす。
「お久しぶりです陛下。ヴィクトール・ヴェルクハイブで御座います。」
「おお、10年振りじゃのう。しばらく見ない間に良い男になったわい。」
つ、次は俺だな。
他国の王族だから緊張するなぁ。
「初めまして。アルデルシア・ヴェルクハイブと申します。以後よろしくお願いいたします。」
「ほう、君があの神童かね。」
おい親父!何を言いやがった!?
その後も談笑していると、袖から鎧を着たやたら綺麗なお姉ちゃんがこちらへやって来た。
髪は短く切り揃えられ、目は意思の強そうな目をしており、髪と瞳は濃い青色でタカ〇ジェンヌにいそうな印象だ。
「エルニィア陛下お久しぶりです。エルティアナ・レイムリファウンに御座います。」
「エルティアナ姫か綺麗になったな。」
「有難う御座います。しかし、武人には容姿など不要に御座います。ヴィクトール様、10年振りですね。」
「お久しぶりですエルティアナ将軍。実はエルティアナ将軍に……」
兄貴がエルティアナの姉ちゃんに何かを話そうとしたその時、突然ドバーン!!と轟音が響きドアが破壊された。
すると我々ヴェルコニア側以外のヒトが全て平伏した。
もちろんレイムリファウン王も例外ではなかった。
そこに現れたのは、純白の法衣を纏った少女だった。
宙に浮いており、髪は淡い桃色に瞳は海の様な青。
幼いながらも超美人であった。
「お主ら頭が高いぞ。」
「ハァ?お前誰だよ、偉そうに。」
俺は少女の物言いに思わず口に出してしまった。
少女はレイムリファウン王の頭を踏みつけ要求する。
「妾は聖女マリアンヌじゃ。下郎、頭が高いぞ。レイムリファウン王、お前からも言ってやれ。」
レイムリファウン王は顔面蒼白で大量の汗を流している。
あ~あ~勘違い女だこれ。
力を手に入れて少しばかり他人より優れているからって見下すゲスだ。
「足をどけろ。てめぇの親に何してやがる。力を持っていたって一人じゃ何もできねぇガキのクセによぉ。」
俺は怒気を隠せなかった。
「ハッハッハ。」
少女は高らかに笑い終えた次の瞬間、凍てつく様な声で……
「……死ね。」
そう言い終えた後に突然、自称聖女様の指からレーザーが飛んできた。
しかし俺はそのレーザーを右手で軽く払った。
「何!?妾のレイを弾き飛ばしたじゃと!?貴様ぁあ!何者じゃ!?」
「ヴェルクハイブ家の三男。」
「下俗なヒトの分際でぇええ!」
自称聖女様は激怒したようだ。
そんな事は無視し、よ~く少女を観察する。
……ん?後ろにうっすらと白い翼の生えた女性が見えるな?
『あれはアルデルシア様の体に細工した神の一柱、天上神王の子です。あの少女の体を依り代にしている様子ですね。』
そんな事を考えているとリーザが答えを出してくれる。
『なるほど。あれを引っ剥がせば良いんだな。でもどうやって……』
全くもってどうしたら良いか分からないでいると、再びリーザが解答してくれる。
『手で掴めます。あとは太陽の剣でズバッとやっちゃって下さい。』
さすが俺の体……コワイョ。。。
俺はダッシュで近づき、少女から翼のついた女を引き剥がす。
「な、何!?妾を掴んだじゃと!?」
「うるせえ羽虫。」
間髪入れずに太陽の剣で切り裂き真っ二つにしてやった。
ヒトの目に映らない程の一瞬の出来事だった。
次の瞬間、少女がその場に倒れそうになったので、俺はそっと抱きかかえた。
「大丈夫か?聖女様。」
「有難う御座います。私……とんでもない事を……」
どうやら取り憑かれている間の記憶があるようだ。
「俺が一緒に説明してやるよ。」
少女は無言でギュッと俺を抱き締めてきた。
『さすが超絶美男子ですね。』
たまには良いじゃん!リーザのいけず!
いつもご愛読して下さる皆様に感謝申し上げます。




