わい、兄貴の結婚式に参加する。
ヴィクトール殿下の結婚式です。
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「兄貴?……兄貴?アニキィイイイイ!」
「む?」
む?じゃねえよ!ガチガチじゃねえか!
兄貴は王太子就任式の演説後から様子がおかしい。
全てにおいて耳が遠く上の空だ。
原因は分かっている。
結婚式だ。
兄貴はエルティアナの姉ちゃんの事になると全てがポンコツになる。
ティファの話しだと、エルティアナの姉ちゃんもそうらしい。
お前達そんな事で結婚しても大丈夫なのかよ!?
「おい兄貴、新郎はあっちだろ!?」
「……お、おう。バーンとエルファーナ姫は今回もくるんだろ?」
「今回はデートじゃねえから!弟と妹を連れて入場してくる新郎新婦なんか見たことねえぞ!」
あ、あかん……俺まで心配になってきた。
通常であれば就任式の方が結婚式より数倍緊張すると思うけどなぁ。
兄貴にとってはただの結婚式じゃなくてエルティアナの姉ちゃんとの結婚式ってのがポイントなんだよなぁ。
そんな俺の心配をよそに結婚式は進んでいく。
「ティファ、兄貴駄目かも……」
「はあ。お姉様もだょ……」
俺達は酷く疲れていた。
そして二人は教会に入ってくる。
おい!手と足どうした!?関節にギプスでもつけてんのか!?あかんガチガチや……
お、お姉ちゃん……パパを追い抜かないで……
競争とかじゃないから……
「新郎ヴィクトール・ウィルコティッシュ・ヴェルクハイブ、貴方はここにいるエルティアナ・ルッツ・レイムリファウンを病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「ヴェルクハイブ長兄として誓う!貧しい思いなどさせぬ!」
いや、兄貴そう言うのじゃないからね……
誓いますで良いの、誓いますで。
「新婦エルティアナ・ルッツ・レイムリファウン、貴方はここにいるヴィクトール・ウィルコティッシュ・ヴェルクハイブを病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「と、とととと、ととと当然だろ!」
お姉ちゃん、そこは誓います。
100回くらい練習したよね?一回も成功しなかったけど……
そして誓いのキスの際はエルティアナの姉ちゃんの強烈な頭突きが兄貴の顎を綺麗に捉えていた……
その後の披露宴も凄まじかった。
ケーキごと机を真っ二つにしたり、スピーチは針の飛んだレコードのようだった。
だけど結婚式の最中の二人は終始嬉しそうで、楽しそうで、微笑ましかった。
「おーい!不発に終わったキスしろよ!」
「おお!良いね!」
会場からキスコールだ!
「おほん。エルティアナ……あぁ、いや…ルッツ良いか?」
「あ、ああ。しかた、ないな……」
今度は唇と唇が綺麗に決まった!
「お、俺達もムチュムチュ~!」
「キャー!」
バチ~ン!
「あ、またバーンが振られたぞ!」
デ、デジャブ……
俺の頬には再び綺麗な紅葉が浮かび上がっていた……
次回、新章予定です。




