ヴィクトールの悲願5
ヴィクトール編続きます。
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私が将軍になってから2年後のある日、城内が騒がしかった。
兵に問うと正門から堂々と侵入者が現れたと言うのだ。
勇猛と他国にまで轟いてる我が国に攻め込むとは何者なのか考えたが心あたりが無かった。
いるとすれば……マリュウス!
私は嫌な予感がした。
しかし、その予感は良い方向に外れた。
侵入者は帰国した弟のバーンであった。
バーンは何の連絡も無しに城に戻ってきた為、門番から不審者扱いを受け口論になり、頭に来て城内に入って来たそうだ。
相変わらず真っ直ぐというか……
それからバーンは兵士を鍛え始め1ヶ月後には見違える程に兵が強化されていた。
それを見た私は陛下に懇願し、バーンに騎士団を持たせた。
バーンはオーディションなる方法で人財を各地から集め、斬新な方法で強力な騎士団を結成した。
その手腕に私は舌をまいた。
そして時はバーンと聖女の婚約パーティーまで遡る。
レムリアから帰国した日、バーンと二人きりなる機会があった時に私は全てのプライドをかなぐり捨て、バーンを頼った。
「バーン、昨日はその何だ……有難うな。」
両国の国王よりエルティアナ将軍とのデートを勧められたが、私もエルティアナ将軍もデートなるものをした事がなく、バーンと聖女に頼った経緯もあり、礼を言った。
「兄貴熱でもあるのか!」
「馬鹿者!」
照れ隠しに弟の頭を小突いた。
我ながら不器用だと思う。
「バーン。我々はあと半年後にフィルハザードに攻め込むつもりだ。そこで私も兵士同様……いや、兵士以上に鍛え直して欲しい!手加減は無用だ!私には勝たねばならん相手がいるのだ!」
「…………そこまでやる理由、聞いてもいいか?正直兄貴は総大将だ。ただの国取りなら俺がやって来てやる。兄貴は玉座か本陣で座ってれば良い。」
フッ。相変わらずの自信だな。まあ、コイツにはそれを成し得る力があるのも事実だがな……
「ヴェルコニア王国の創設は知っているか?」
「いや、フィルハザードと揉めている事ぐらいだな。」
私はバーンに【ブリュアーヌの日記】の話しをした。
「フィルハザードは控え目に言ってクズだな。」
「ああ、それと20年前だ……」
20年前にグラール砦で起きた母上達の件もバーンに話した。
この話しを口外する事はこれが初めてだった。
「……なるほどな。親父や兄貴が異常にフィルハザードにこだわる理由が分かった。」
「そして私にはどうしても倒さねばならぬ相手がいる。フィルハザード王国王太子マリュウス・フィルハザードだ。私は14の時、奴に手も足も出ずに敗れた。その上、愛する者も守れず晒し者にしてしまった。二度とエルティアナを悲しませたくない!二度とフィルハザードに大事な者を奪われたくない!これ以上フィルハザードに民を苦しまされたくない!これ以上フィルハザードを野放しにしてたまるか!父よりも!弟よりも、マリュウスよりも強くなりたい!誰よりも強くなりたいんだぁあ!」
私は感情的になってしまった……
「………………」
「すまん。感情的になった……」
私は冷静を装う。
「分かった。兄貴がそこまで言うなら協力するよ。だが短期間で強さを手に入れるんだ。手加減無しの特別訓練になる……死ぬかもしれねえぞ?」
「覚悟の上だ時間がない……」
それから私は時間がある時はバーンと訓練をつんだ。
バーンが居なくとも訓練をつんだ。
文字通り、血反吐を吐くほど……
それはいつか来たる日の為に……
ヴィクトール編を終了させようと思いましたがアルデルシア目線だとお笑いになってしまったので、書いてるうちにヴィクトール編に戻しました。




