ヴィクトールの悲願2
ヴィクトールの回想です。
5/10修正
遡る事21年前、私が5つの時の事だ。
ヴェルクハイブ家の慣わしで他国へ渡り学ぶ事が義務となっている為、私はヴァリエス帝国で世話になる事となった。
ヴァリエス帝国はヴェルコニアと同じく軍事国家であるが規模は軽く100倍を超える超大国だ。
内政も安定しており貴族も真面目な領地運営をしている事から民も豊だ。
しかし帝国は大陸最北端に位置し、厳しい冬の国である理由から年々南へと進軍して領地を広げており、周辺国からの評判は非常に悪い。
なぜこのような大国に私を送り込めるコネクションがあったかと言うと、帝国では20年に一度マキュリファウンス中から力自慢が集まる格闘大会を開催しており、その大会において圧倒的な力で優勝したエルニィア陛下に対し、大いに感銘を受けたヴァリエス帝国皇帝と意気投合した事で小国でありながらヴェルコニアとの交友関係が生じたのだ。
余談ではあるが、陛下の大陸最強の二つ名はこの大会で優勝した際に付与されたものだ。
そして帝国へは他国からもう一人派遣されていた。
我がヴェルコニアの同盟国、レイムリファウン王国の第二王女エルティアナ・ルッツ・レイムリファウンだ。
実は私の許嫁でもある。
彼女の姉であるエルクレア第一王女は去年、10歳の誕生日を迎えた後に帝国の後継に嫁いでいた事からレイムリファウンも帝国へのコネクションがあったのだ。
彼女が帝国に来た理由はレイムリファウンが魔法王国と呼ばれる程に魔術が盛んであったが、彼女には全く魔法の才能が無く、剣に生きる事を決め本人の志願で半年だけではあるが帝国への滞在が許された。
たった半年だったが切磋琢磨し、帝王学、政治学、剣術を学んだ。お互いに魔術が使えない共通点があったことで意気投合し本当に半年間は楽しかった。
「ではエルティアナ姫。10年後に会おう。」
「ああ、ヴィクトール王子も元気でな。」
その後、訓練も厳しくなっていったが、エルティアナが心の支えの一つであった事は否定しない。
しかし最大の目的は打倒フィルハザード。
母の敵であり我が国の最大の阻害だ。
そんな中、9年もの月日が流れた……
私も14となり心身共に成長した。
レイムリファウン王国が聖女の力を借り、因縁のロヴァンヌ公国を滅亡させた事で軍を指揮していたエルティアナ姫が将軍となったとの朗報が届いた。
私も負けていられないと思った……
そんなある日、帝国にて15歳未満の少年を集めた剣術大会が開催された。
他国からの王族も観戦に来場するような大きな大会だ。
もちろん私も参加した。
そして私は順調に勝ち進み決勝までコマを進めた。
決勝の相手はマリュウス・フィルハザード……
憎きフィルハザードの王子だ。
決勝戦
斬り結びながらマリュウスが喋りかけてくる。
「やぁ~ヴィクトール君だっけ?君のお父さんが私の叔父を殺してくれたお陰で私は王子になる事が出来たんだ。ヴェルコニア王国には感謝しているよぉ。ハハハ。」
「貴様ぁあ!あの日の事を忘れた事はないぞ!」
母上、義母上の事は一瞬たりとも忘れた事はない。
「ハハハ♪あそこにいる君の許嫁、可愛いねぇ。僕が貰ってあげようか?」
一瞬気が緩んでしまった……目線をほんの一瞬だけエルティアナ姫へ向けてしまったからだ。
相手はそこを逃さない。
マリュウスは私の右腕を木剣で打ち抜いた。
「ぐっ!」
右腕は使い物にならなくなった。
「ハハハ、弱いなぁヴェルクハイブ。」
私はこの後マリュウスに滅多打ちにあった。
しかし気持ちで負けるものかと立ち続けた。
私は気絶しても立ち続けた……
そんな意識が朦朧とする中で声だけが聞こえた。
「しょ、勝負あり!」
「ハハハ!こんなものか!ヴェルクハイブ家!弱い!弱すぎるよ!」
「貴様ぁあ!」
エルティアナ姫の声だ。
「ん?君はそこにいる雑魚の許嫁、戦姫エルティアナ将軍じゃないか……近くで見るとさらに美しいなぁ……僕のものにならないかい?」
「ふざけるな!」
「あぁ~ヴェルクハイブ家はやっぱり女性を盾にしないと……」
ばちぃーんと大きな音が聞こえた。
エルティアナ姫がマリュウスの頬を払った音だ。
「フフフ……気の強い女性は嫌いじゃない。」
マリュウスは強引にエルティアナ姫の唇を奪った。
「汚らわしい!」
そこで兵士が間に割って入り、ことは終息した……
私は一人の女性ですら守れないのか……
私は涙が止まらなかった……
母上の死で捨てたハズの涙が……
回想は次回に続きます。




