ヴィグス14
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「よう、噂の剣士君。リベンジに来たぜ。」
本当に来るとは思わなかった。
「君達も懲りないね、だけどもう終わったハズだ。この間の剣士に勝ったらそちらは手を出さない約束だ。」
適当にお話しをして帰って頂こうと思った。
こちらは正式な決闘に勝利している。
しかし彼は1対5で戦う上に20億ガルムを支払うと言った。
しかも現金でだ。
そこまで自信満々だと本当に強いのでは?と思ってしまうくらいだ。
恐らく連れに姫様クラスの美人がいるので引っ込みがつかなくなったのでは?とも思う。
たぶん前回の会話から王族であろうと思うがヴェルコニアの王子は美形でカリスマがあるなぁ。
フィルハザード王家もこれくらい気持の良い王族であればもっと前向きに考えたかもしれない。
出来れば戦いたくないな……
そんな思いとは裏腹に精霊の歌の仲間達は全員戦う事を選択した。
バルナザードの現状を考慮すると当然の選択だと感じた。
せめて相手に大きな怪我が無いように心掛けよう。
そんな気持ちで戦う事にした。
威嚇の為に仲間達に細かな指示を出す。
しかし最初の接触は予想だにしない結果となった。
相手はエヌーの腹に膝蹴りを喰らわし気絶させ、僕の剣を片手で軽く去なした。
そこから右手の3本指から巨大な火球をつくり出しプルム、ダッカ、ユクルを一瞬で吹き飛ばした。
「何!?」
4人はまさに瞬殺された。
油断があったとはいえヒトのなせるわざでは無い。
僕は雑魚と判断した男の神がかった力に唖然と見惚れた。
「あんたらどうでも良いけど油断し過ぎじゃねぇの?」
僕達の心を見透かしたような言葉に一言も返せなかった。
「こんな奴らにロビンが負けるか……卑怯な技でも使ったのか?」
「くそ!」
完全に頭に血が上った。
「遅いなぁ~本気だせよぉ~ちょい。」
ヴェルコニアの王子は挑発を重ね僕から冷静さを奪う。
「ぐふっ!」
相手の容赦の無い攻撃に為す術が無かった。
「俺の勝ちで良いかな?」
「良いわけないだろ!僕は負ける訳にはいかない!姫の為にも!」
せっかく見つけた一筋の光を失う訳にはいかなかった。
僕は全力でヴェルコニアの王子を倒す事を決意した。
「僕の本気を……見せてやるよ!」
僕は剣を殺傷力の高い現精剣へ持ち替えた上で精霊剣を具現化し剣に魔力を込めた。
「僕は風王と呼ばれていてね。それを君に体感してもらうよ。」
僕は精霊騎士の力で移動速度を限界まで上げ、音速を……いや光速を超越するスピードを出す。
その全速で全力の剣をヴェルコニアの王子へと振るった。
それは完全に手加減無しの相手を殺す剣だった。
しかし……
「なっ!」
僕の全力の一振りはヴェルコニアの王子に簡単に受け止められた。
「遅い遅い、スロー過ぎて欠伸が出るぜ。オラッ!」
顔面に衝撃が走り吹き飛ばされた。
強い……強すぎる……
そこに立っている男はまさに僕が憧れた異世界転生の主人公ばりのチート的な強さだった。
しかもスロー過ぎて欠伸が出るぜって……
それ北〇の拳じゃないか!?
「やるじゃねぇか。」
「そ、そんなバカな……」
戦いながら確信した。
このヒトは絶対転生者でユクル以上の厨二病だと……
僕は一か八かエレメントブレイクで攻撃した。
「喰らえ!エレメントブレイク!」
一瞬勝ったと思った……しかし何も起こらなかった。
とあるゲームで使用効果の無いアイテムを使った時の感覚だった。
「え?」
「えじゃねぇ!」
ヴェルコニアの王子は僕の顔面に拳を埋め込んだ。
僕は30mくらい吹っ飛んだ。
「俺に状態異常は気かねぇんだ。」
な、何てチートなんだ……
「終わらせて良いかな?」
「まだだ……僕はまだ、出し切っていない!」
僕は最後の望みをかけ、精霊王を倒した技にさらに磨きをかけたスキルを発動させた。
「真空斬・真極ぅうう!!」
ヴェルコニアの王子は避けもしなかったので僕の必殺技がもろにあたった。
だが……
「ぅおお。いてぇな。」
全くってレベルで効いていなかった。
「なっ、本当にヒトなのか!?」
ヴェルコニアの王子は精霊王が赤ん坊に見える強さだった。
「失礼な!お前、不敬罪確定だな。罪としてその弱点だらけの技をお前に喰らわしてやるよ。」
「やれるものならやってみろ!」
僕はもう一度真空斬真極を放つ。
「ちょい!」
ヴェルコニアの王子は水平に飛んでくる風の斬撃に対し、下から風をおこし軌道を変えた。
「そんなデタラメな……これで精霊王も……」
「悪いな俺は精霊王なんて柔なものじゃない。」
するとヴェルコニアの王子は僕と全く同じ技を使ってきた。
「真空なんちゃら・手加減!!」
ち、チートなんて可愛いものじゃない!
ヴェルコニアの王族はチートを使ったタスさんだ……
僕はとうとう立つ力を失った……
「ぅう。僕の完敗だ。姫、ごめん。君を守れなかった…」
「ナ~ハッハッハ!俺の勝ちだな。」
「そうだね。上には上がいる、身に染みたよ。」
先程も言ったが、このヒトは異世界転生物の主人公のようだ……
「おい、お前!ヴィグスとか言ったか?」
「うん。」
「お前、人質に誰か取られてるだろ?」
「な、何故!?」
心でも読めるのか!?どこまでチートなんだよ!
「俺はヒトの心が読めるんだ。今から合わせてやるよ。その前に……フン!」
「きゃぁああ!」
ヴェルコニアの王子が気合を込めると、プルムから急に爆発音がした。
今から会わせるって誰に?
僕はあっけにとられた。
先程から……いや、最初からこのヒトには驚かされてばかりだ。
そしてヴェルコニアの王子はいきなり地面をぶん殴った。
ヴォコ!と大きな音がし地面に風穴があいた。
このヒト本当に無茶苦茶だな……
「ヴィグス!ティファ!行くぞ!」
「あ、はい。」
僕は再び呆気にとられつつも、ヴェルコニアの王子に言われるがまま地下の部屋を進んだ。
すると先の方から異臭がし、更に進むとそこにはドレスを着たソンビがいた。
そのドレスは僕が最後に姫様とキスした時の物だった。
直感で分かった……このゾンビはアシェアラト姫だと……
「ひ、ひ……姫ぇえええええええええ!」
僕は心の底から絶叫した。
何故姫様がばかりがこの様事に……
何故姫様ばかりに悲劇が起こるのだと……
ただ涙が止まらなかった……
するとヴェルコニアの王子は僕に語りかけてきた。
「ヴィグス。」
「う゛ぁぃ。」
涙で上手く喋れなかった。
「俺が姫を助けたらお前、俺に忠誠を誓うか?」
「だんでぼやじばず!」
僕は姫様が救われるのであれば悪魔の言う事にでも躊躇無く実行出来る自信があった。
するとヴェルコニアの王子は魔力を集中し始めた……
「はぁあああああああ!「時空逆流!」」
すると辺りが茜色に輝き姫様が徐々に元の姿に戻る。
それはおとぎ話に出てくるワンシーンのようだった。
「ひ、姫!」
「ヴィグス様?」
僕は汚物も気にせず姫を抱き締めていた。
「ふぅ。ティファ、浄化と着替え。」
「フフフ……はい。」
僕は愛するヒトとの真の再会にまたもや涙が止まらなかった……
ヴィグス編終わるまで眠れまテンを開始します。




