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いざ、異世界へ

かなり長い文になってしまいましたが、今回から異世界へ主人公が旅立ちます。


武器と戦車を決める描画かかなりオタッキーになっているため、興味の無い人は眠くなってしまうかも知れません。


簡単に纏めると、古い戦車を最新技術で魔改造したという認識でOKです。

(あれ……、ここは何処だ??)



どれ程の時間が過ぎただろうか?目が覚めると俺は、大きなベッドに寝かされていた。しかも、そのベッドはまるで漫画やアニメの屋敷に置かれている様な立派な代物で、寝心地も今まで体験したことの無いような寝心地だった。



しかし、何故その辺の一般人たる俺がこんな上等なベッドで寝かされているのだろうか?

病院の個室部屋のベッドでもここまでは大きく無いぞ。それに俺は事故を起こした筈だ。大型車に挟み潰されたハズの体も何らかの形で傷が残っているハズだ。なのに傷1つ無いどころか痛みすら感じない。



それに頭を横に傾けて周りの様子を見るが、何もない無の世界と言わんばかりの白い空間が広がっているだけだ。病院の部屋も白系の色を基調とした造りだが、病院にあるハズの医療機器やテレビ等が一切無いのだ。それに外が見える窓すら付いていない。何もない空間にベッドがただ1つポツンと置かれている。そんな状況だ。

そんな急に今まで経験したことの無い空間に放り込まれて徐々に不安と恐怖が俺の心を支配してゆく。




「マジでココは何処なんだよ……」



頭を左右にキョロキョロさせながら何ら変哲のない疑問を呟く。すると前から聞き覚えのない、透き通った声が聞こえてきた。



「目がお覚めになったようですね」



俺は声の主を見るべくして体を起こす。すると目の前にはまるで玉座の様な椅子に座った、白く透き通った髪をした美少女が座っていた。外見の年齢は20歳くらいだろうか?絶妙なバランスの体型に優しい表情をした美少女。

何より俺以外にも人がこの空間に居ると言う事に安堵した。



「川端士道様ですね?」



「あ、ああ……」



「私はアリアスと申します。この……」



「待ってくれ!いきなり話を遮って悪いがここは何処なんだ!?」



俺はこの場所の招待を知りたくて話を遮ってしまった。後々思えば失礼な事をしてしまったが、ただただ真っ白で何もない空間にいきなり放り込まれるのは想像以上に不安になる。せめてこの場所の正体ぐらいは知りたいのだ。



「はい。ここは冥府の転生の部屋となります」



「冥府だぁ!?」



俺は混乱してしまった。何かの悪い冗談だと。冥府と言う言葉の意味そのものは知っている。死者の魂の集まる場所だ。って事は俺は死んでしまったのか!?



「待てってくれ!じゃあ俺って死んだって事なのか!?」



信じたくない。だが、目の前の少女は申し訳無さそうな表情をしながらも俺に事の説明をしてくれた。



「はい。貴方は交通事故に巻き込まれそうになっていた親子を助けようとして事故に巻き込まれてお亡くなりになりました……」



「た、確かにトレーラーに挟まれそうになった車に体当たりしたが……。まさか……」



「はい。追突してきたトレーラーの減速が間に合わず貴方はお亡くなりになりました……」



「信じられねぇ……。俺は実際こうして意識もあるし手足も動かせるぞ」



「……ごめんなさい」


アリアスはそう言うと手を動かし始めた。そして俺の目の前に薄いモニターの様な物を出現させて、その日のニュース番組を映し出した。そのニュース番組には例の事故が取り上げられており、テレビ局のヘリコプターが空撮している映像がニュースで放映させている状況だった。

事故現場は俺が乗っていたフェリーの停泊している港から少し離れた場所の交差点だった。歩道には俺が体当たりして弾き出した軽自動車が止まっており、その隣でトレーラーが前に停止していたトラックに追突している状態だった。



そして空撮の映像が地上の映像に切り替わり、その映像には2台の大型車に挟み潰された1台の車があった。100系のマークllで紺色のその車は間違いなく俺の車で、横に横転した車は屋根から停車しているトラックに挟み潰されてコックピットが完全に潰れている状態だった。そしてニュースのアナウンサーがテロップと共に



「この事故で乗用車を運転していた、陸上自衛隊勤務の川端士道さん25歳の死亡がその場で確認されました」



ニュース番組内で俺の名前と死亡の表記が書かれたテロップが表示されている。認めたくはないが、これが現実だった



「はは……俺って死んでしまったのか……」



嫌な安心感を感じてしまい、今はただ笑うしかなかった。

暫くしてから気持ちが落ち着くと俺はある疑問が生まれた。それは俺が助けた軽自動車の親子は無事なのかという事だ。アリアスにその事を聞くと、あの軽自動車に乗っていた親子は全員無事だとの事だ。

俺はその知らせを聞いてひとまず安心できた。

だが直ぐに新たな不安が生まれた。それは死んで霊体と化した俺がどうなるのかという事だ。



「なら、あの親子は無事という訳だな。それを聞いて安心したよ。だが一つ気になる事があるんだ。俺はもう死んだって事だろ? なら、死んでしまった俺の霊魂はどうなってしまうんだ?人を助ける為とは言え、親より先に死んでしまったんだ。だとしたら俺の行き先はやはり地獄の賽の河原にでも行ってしまうのか……?」



「そ、そんな事はありません!貴方は人を助けるためにお亡くなりなりました。そのような方には別の選択肢を用意させて頂いてます」



その選択肢というのは、未来の世界で新たな家計の子として新たな人生を歩むか、このまま別の異世界へと転生するというものである。

しかし、未来の世界というものは代替資源を巡り世界規模の戦争が起こり荒れ果てた世界だと言われ、当初は未来の世界に産まれ変わろうと考えていた俺に待ったをかけた。

もっとも、アリアスに異世界の方へ転生して欲しいと頼まれてしまった為、俺の決意は決まったのだが。



「もし迷っているなら、お願いがあります。川端様の能力や知識があればきっと異世界で人々を助ける事ができる筈です」



どうやら異世界の地域によっては人間と魔物が戦っているらしく、戦闘能力の方は魔物が優れているらしい。魔法も存在し、攻撃にも使える魔法もあるのだが、魔法の数の方が多いらしいのだ。

だが、1つ疑問がある。確かに俺は自衛隊員なので一般人と比べても格闘技を始めとする護身術には優れているとは思う。だが相手は魔物、仮にこのまま異世界に飛んでも成す術もなく殺られてしまうのではないだろうか?



「確かに人間として生身で戦えば魔物には勝てないでしょう。ですが、川端様には私の加護を付与させて頂きます」



そう言ってアリアスは俺にある能力を付与してくれるとの事だ。それは、異世界で地球の現代文明が産み出した物を召喚出来ると言った代物である。出せる物は正に多様で、鉛筆からミサイルまで召喚することが可能という、非常に凶悪な能力だ。



だが、このスキルには大きな弱点があった。それは武器や兵器といった、攻撃力のある物に対しての召喚が著しくレベルによって制限されてしまうのだ。試しに俺が知っている武器や兵器を召喚するために必要なレベルを聞いてみた。



ハンドガンであるM1911の要求レベルが200。


アサルトライフルである89式小銃は350。


戦車である10式戦車は1200という、ゲームの世界でも中々見ることの出来ない要求レベルの高さであった。もっとも、魔物の討伐で次第にレベルアップするそうだが、こんなんじゃレベルが上がる前に死んでしまう。



「おいおい、こんなんじゃマトモに戦えないだろ……」



「川端様の仰る通りです。ですが川端様は陸上自衛隊の隊員で戦車に対する知識に長けている筈です。ですので、特別に転生前に制限に関係なく川端様の選んだ戦車と武器を1つだけになりますが、ご用意させて頂きます」



アリアスの申し出に俺はひとまずの安心を得ることが出来た。1つだけとは言え、戦車と武器を用意してくれるのならば異世界に行っても安心出来る。更には選んだ戦車と武器の弾薬は補給出来る上に装備品のカスタマイズさせてくれるというオマケ付きである。これならスキルや異世界の事情に上手く合わせる改造が可能だ。



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俺は早速武器と戦車の選択を始めた。護身用の武器は、ベルギーのFN社製作のP90を選択する事となった。

この銃は個人防衛火器の頭文字を取った、PDWと呼ばれるカテゴリーの武器で、同社の開発した5.7x28mm弾という小口径弾を使用する武器だ。

本来ならばより威力のあるアサルトライフル持っていくべきなのだろうが、戦車の中に置くには大きすぎる為、小型のPDWを選んだのである。



魔物と戦うと言う状況下ではこれよりも大口径の45ACP弾を使用するUMP45も候補として上がっていたのだが、装弾数の少なさから、悩んだ結果としてUMP45の倍の装弾数を誇るP90を選んだのだ。

だが、P90の弾は弾本体を小型化し、先端を尖らせ空気抵抗を少なくするという設計が成されている。

これにより弾丸そのものの弾速が上がるため、貫通力が増す。それでも倒せない魔物が現れた場合は、戦車の出番という訳だ。



P90は追加でレーザーサイトとサプレッサーをオプション装備として選び、次は戦車の選択を行う。

これは相当難儀するものであった。というものの、戦車というのは一人で動かす兵器ではない。それぞれの場所に専門の知識と技能を持った搭乗員が乗ってからこその真価を発揮するものである。



そんな中、異世界から転生してきてから尚且つ異世界人からは見たこともない武器で戦う人間の仲間となって戦車を動かしてくれるような人間が見つかるとは限らない。

ならば必然的に一人で戦車を動かさないといけない訳だ。カスタマイズ出来るとは言え、一人で戦車を動かすのは容易ではない。そもそも俺は操縦士であり、砲手ではない。仮に乗機であった10式戦車を一人で移動と攻撃が可能な様に改装したとしても、砲搭の操作までは手が回らないだろう。



俺は悩んだ。結局どの戦車を選ぶのが正解なのか?俺は中々戦車を決めることが出来ずに、アリアスを待たせてしまっている罪悪感に苛まれている中、ふと駐屯地内での日々を思い出した。

それは事故に遭う前日、課業終了後の自由時間の事である。この時俺は自室である戦車の模型を作っていた。これだけなら単なる日常の生活の一部でしかないが、問題はその模型の戦車の機種である。



この時俺はスウェーデン軍がかつて主力戦車として採用していた、Strv.103という戦車だ。

この戦車はスウェーデンの専守防衛という理念の元に開発された戦車で、待ち伏せして敵を迎撃する際の投影面積を減らすために砲塔が付いていない。



他にも自動装填装置による高い射撃速度や長砲身化された105mmの主砲は同世代の戦車と比較しても高い貫通力が備わっており、他にも油圧式足周りやディーゼルとガスタービンのハイブリッドエンジンを搭載しているなど、当時の戦車の中でも画期的な装備が組み込まれていた。

しかし、無砲塔故に反抗作戦に投入することが困難であり、エンジンが正面にある構造上、メンテナンスハッチと装甲が兼用されているため装甲が薄くなってしまい、戦車の肝となる防御力に制限がされてしまう等の欠点が露呈してしまい、退役してしまった。



だが、この戦車最大の特徴の1つと言えるのが、操縦士が砲手を兼任するという構造な為、世界で唯一元から一人で移動と攻撃が可能という設計がされているという事だ。

この戦車しかないと悟った俺は、早速この戦車の最終モデルであるC型をベースにカスタマイズするのであった。



まず、元の戦車の欠点でもあった防御力。これは大幅に改善することにした。そもそも、この戦車の防御力の低さは前置きエンジンの整備という都合上のモノだが、初期に持ち込める戦車と武器に関しては俺の能力のお陰で重要な箇所が破損しても、能力により修復することが可能となっている。

すなわち、メンテナンスハッチを設ける必要性が無いのだ。なので本来薄くなってしまった前面装甲をおよそ2倍という厚さに増厚し、原型の戦車とは比較にならない防御力を得ることとなった。



次に武装だが、主砲は105mm砲のままであるが、大砲の攻撃力というものは、砲そのものの口径もそうだが、弾薬にも大きく依存する。

この戦車は本来、徹甲弾25発、榴弾20発、煙幕弾5発の計50発の砲弾を積んでいるが、俺は徹甲弾20発、榴弾15発、キャニスター弾5発、ナパーム弾5発という構成にしている。

その内5発のナパーム弾は車内に格納されているため、装填には手動で装填する必要があるが。



徹甲弾は硬い目標を破壊する為に貫通力に特化した砲弾であり、使用する弾薬は105mm砲用の砲弾で最も貫徹力のあると言われる、ベルギー製のM1060A3と呼ばれる種類のAPFSDS弾を選択した。従来の砲身長での貫徹力はRHA換算で460mm。だが、長砲身の主砲を搭載するSタンクで使用するとなれば500mm相当の貫徹力を生む筈である。



榴弾は内部の裂薬で弾頭を粉砕し、その破片でターゲットを殺傷する砲弾である。集団で襲ってきたり、動きの早い魔物が相手には高い殺傷能力を発揮してくれるだろう。



次のキャニスター弾は小さな子弾を散弾させ、近距離の敵集団に対して高い制圧力を誇る。戦車用のキャニスター弾ともなれば、子弾1つ1つの攻撃力でも対物ライフル並の殺傷力があり、そんな威力のある弾が数千個も飛んでくるのだ。魔物と言えど食らえばひとたまりも無いだろう。



最後のナパーム弾は高熱で着弾点を燃やす弾である。その燃焼温度は1000℃を超えて燃焼する上、莫大な酸素を消費者することから、人道的な観点で使用禁止にされた兵器であるが、相手は人間に害を与える魔物、容赦はしない。

本来なら戦車砲用のナパーム弾なんて存在しないのだが、この際に特注して作って貰った。



副武装には、主砲発射の際に停車しなければならない制約上、走行時の火力を確保したい為、本来車長席となっている座席を潰し、その上のキューポラ部分に20mmの対空機関砲を装備、座席のある部分に弾薬を配置し、合計550発の弾薬を搭載することも可能だ。そして、車体の左前方にも軽機関銃を装備しておくためのボックスが取り付けられており、ここの機関銃には自衛隊も採用しているミニミ軽機関銃選択し、これを連装して装備している。




次に火器管制であるが、これは最新鋭のMBTと同等の高度なFCSを搭載しており、高い射撃精度を実現している。無砲搭ゆえに停止射撃をしなければならない仕様上、スラローム射撃をも実現できる高度なFCSにはとっては完全に性能を余してしまうが、機関砲の行進間射撃や対空射撃の為のFCSという側面と索敵用途で使う側面が大きい。



座席配置は通信手と背中合わせになっている構造に変わりはないが、無線機を排除しているため、オリジナルのSタンクと比較した場合多少スペースは広くなっている。

もしこの戦車に二人目の搭乗員が乗った場合、後退時の操縦や副武装のコントロール等を任せるつもりだ。



コックピット自体の設計のはロシアの戦車であるT-14を参考にしている。この戦車は無人砲搭を採用した事で知られているこの戦車は、車体の搭乗員区画を装甲カプセルで守るという構造になっている。カプセル化されたコックピットの外壁はモニターとなっており、車外の視界をしっかりと確保する構造となった。

その内部は戦車の戦闘室というよりは、ロボットアニメに登場するような機体のコックピットみたいな見た目だ。



そして、武装と装甲の増加による重量増加に対応するべくエンジンとトランスミッションも大幅に改修することにした。

エンジンはガスタービンとディーゼルのハイブリッド構造はそのままとし、ディーゼルエンジンの最高出力を強化し、ガスタービンエンジンはメリットである、停車時からの加速の瞬発力の高さを生かすために外さずに装備することになった。

これにより、本来ならば290+490馬力で合算出力780馬力だった、ベースのC型と比較して+200馬力。合計で980馬力というハイパワーなエンジンとなり、それに合わせてトランスミッションも従来の前進/後進2速であった、物から10式戦車と同様の構造をしているハイドロメカニカル式無段階変速機というCVTを採用した。



元々無段階変速機という物は構造上ハイパワーエンジンの生む力を全てを受け止める事が出来ず、折角の力を中々を生かすことが出来ないという大きなデメリットがあるのだが、この機構のCVTは大型のエンジンの生むトルクを生かしやすい構造となっており、CVTの中では大型にはなってしまうものの、従来のトランスミッションと比較してもコンパクトに作る事が可能である。

当然、特殊な機構の採用をした分コストは高くつくが、今の状況下ではコストなんて物は関係ない。



このエンジンとトランスミッションにより重量増加はしてしまったものの、最高速度は70kmオーバー。後退速度も同等という高い機動力の確保に成功したのだった。




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「やっと終わった、しかし、とてつもない魔改造戦車が産まれてしまったな……」



外見こそオリジナルの戦車のままであるが、中身は全くの別物の性能となった戦車を完成させてしまった。

アリアス曰く、完成した戦車と武器は俺が異世界へと向かうゲート前に置かれているらしい。



「川端様、準備は整いましたか?」



「ああ。色々とありがとう」



俺はアリアスに案内されてしばらく歩いて行くと小さな小舟があった。彼女はその船に乗るように指示し、俺が船に乗り込むと彼女も船に乗り込んで、船尾に立て掛けられたオールの様な物で船を動かし始めた。



何もないない「無」という言葉が合うような空間にオールが水を掻く音が聞こえる。船は次第に動き始め、俺が寝ていたベッドとアリアスの座っていたイスが徐々に遠ざかって行く。ゆっくりと着実に船は進んで行き、ベッドとイスはもう殆ど見えなくなっていたが、まだ目的地に着く気配はない。船は真っ白な空間をひたすら進んで行き、アリアスはただ船を漕いでおり、話しかける言葉のない俺は無言になっていた。



船に揺られて1時間以上たっただろうか、遠目に島のような物が見えてきた。俺がその正体に気が付くと、アリアスがあの島が俺が向かう異世界へのゲートだという。

船はゆっくりと近付いて行く。島との距離が近付くにつれて俺の心臓の脈拍があがっていく。これから見知らぬ異世界へと行くという緊張が出ているのだろう。時折武者震いしてしまうがもう引き返せない。



島と思っていた物は、まるで遺跡の様な建築物であり、パルテノン神殿のような形をしている。アリアスの指示に従い、船を降りて神殿内部へと入る。中は外の世界と違い、真っ暗で先を照らす物はないが、真っ暗なせいか視線の奥に小さく光る光があった。アリアスはランタンの様な灯りを持ち出し、俺を先導する。

俺はただひたすら彼女に付いて行くしかない。



暫く歩いてから俺は視線の先にある物の招待を認識する。光を放っていたのは魔方陣のような模様であり、その光がゲートを照らしている。そしてその魔方陣の上には俺が先程カスタマイズしたSタンクとP90が鎮座していた。

俺はアリアスから授かった能力の使い方の説明をしてもらい、戦車へと向かった。



「出発の準備は出来ています。あとは貴方がこの戦車に乗ってからこのゲートの先にある世界へと旅立つだけです。」



「ああ……」



「川端様、お願いがあります……」



アリアスが弱い声を出して言ってきた



「貴方の力は一夜にして異世界を支配してしまうかも知れません。そして私は向こうの世界について何にも干渉することは出来ません……。お願いです、この力を悪用して向こうの世界の人々を傷つけないで下さい……。どうか、優しいままの川端士道様でいて下さい……」



俺は恩人の善意を仇で返すような器用な真似は出来ない。不安そうに話すアリアスの頭を撫でて俺は彼女に心配するなと言ってから戦車へと登り、ハッチを開けてから車内に体を滑り込ませる様に乗り込んだ。



「これが俺の戦車か……」



戦車に乗り込んだ俺はイグニッションスイッチを回して戦車のエンジンを始動させる。大型のディーゼルの勇ましい始動音と共に俺の戦車が産声をあげ、排気口から黒煙が吐き出される。神聖な場所には似合わない物が遂に走り始めた。



ゆっくりと戦車をゲートへと突入させ、真っ暗なゲートの中に入るとヘッドライトを点灯させ、戦車のライトしかないトンネルの様な空間をひたすらに走る。静寂の支配する暗闇、履帯のきしむ音とエンジン音が聞こえてくるだけだ。



30分ほど走ったか、暗闇の奥に小さな光が見えてきた。異世界はすぐそこに迫ってきているのだ。




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