借りを返しに
婚約破棄騒動書いてみました。
「クリスティーナ嬢!君は王子の婚約者に相応しくない!よって王子との婚約は破棄して貰う!!」
その声に今まで賑やかだった会場は静まりかえった。
「いきなり何を仰るのですか、リチャード様!意味が分かりませんわ!」
名を呼ばれた令嬢は、美しい顔を青ざめさせながらも何を馬鹿なことをと声をあげた。
彼はそんな令嬢を鼻で笑い、
「白々しいことを。分からないと言うのならば教えてやろう。君はここにいるアン嬢を虐げ、挙げ句の果てに階段から突き落としたそうだな。」
彼の横では可憐な容姿の令嬢が怯えたように震えている。
「そんな!私はその様なことはしておりません!何かの間違いです!」
「しらばっくれるな!証拠はここにある!」
そう言うとリチャードは証拠を挙げ始めた。
******
「あの公爵令息、終わったな。」
私の隣に立つ従者が呆れたように呟いた。
「本当にね…。依りにもよって卒業パーティーでやらかすなんて。今日はこの国の国王陛下もいらっしゃる予定なのに、一体何を考えているのかしら?」
現に令息の横にいる王子は先ほどから一言も発していない。彼はあの証拠とやらが偽物だと分かっているのだ。その上で令息が自滅するのを待っているのだろう。恐ろしいことだ。
再び騒ぎの中心の人物達に目を向けると、虐げられたという令嬢が王子にも同意を得ようとしている所だった。
「私、私… 本当に辛かったんです…。 レオン王子も信じて下さいますよね?私が今までクリスティーナ様にいじめられてきたことを。」
「違います!私はやっていません!信じて下さいレオン様!」
彼女の問いかけに王子は軽く微笑み、
「そうだね。僕は信じるよ。……クリスティーナの言葉を、ね。」
「「レオン様!!」」
その言葉にクリスティーナは顔を明るくさせ、アンは顔を青くさせた。
*******
始まったみたいね…。
王子はこれまでの沈黙が嘘のように次々と証拠の矛盾を突きつけはじめた。
王子からの追及に、始めは自信ありげにしていたリチャードだが今は目に見えて狼狽えている…。
少し調べれば分かることなのに、彼は確かめなかったのだろうか?
……確かめてないのだろうな。大方、彼女の言うことをそのまま鵜呑みにしていたのだろう。恋は盲目とはいうが……馬鹿馬鹿しい限りだ。
追及が続き、クリスティーナの疑惑が晴れると今度はアンに疑惑の目が向けられるようになった。
彼女は始めは自分の方が正しい。自分は被害者だと懸命に訴えていたが、状況が不利だと理解するやいなや態度が一変し、自分は悪くない、目障りなリスティーナが悪いのだと主張し始めた。
「私の邪魔をするクリスティーナが悪いのよ!私はこの世界のヒロインで、王子と結ばれてハッピーエンドを迎えるはずだったのに、あんたがレオン王子の周りをうろちょろして離れないから!悪役令嬢ごときが私の邪魔をするなんてあり得ないわ!さっさと消えなさいよ!!」
散々な言いようだ。いくら追い詰められているからと言って王子の婚約者に対しあんな事を言うなんて、自分から罪を増やしている様なものだ。
「すごい変わりかただな…。しかし頭の方は大丈夫なのか?さっきから意味の分からないことばかり言ってるが…。」
従者の言う通りだ。ヒロイン…?とか正直意味が分からない。
そうしている内に気付けばリチャードに対する処罰が終わり、今度はアンに処分を言い渡す場面になっていた。
「アン嬢、君は複数の男性をたぶらかしたあげく、偽の証拠を用意し私の婚約者を陥れようとした。これは到底許されることではない。よって修道院送りとする!」
「そんな!?どうしてよ!私はヒロインなのに!!」
処遇を言い渡されてなお、わめき散らす彼女は今や衛兵に取り押さえられている。
「やっと終わりましたね。」
横にいる私に話し掛けた従者の声に応じずに、私は目の前の状況を見つめる。
この状況でもまだあんな風に醜く騒ぐなんて、本当に救いようがない…。
……けれど。
「姫様!?」
従者の驚く声を無視し、私は騒ぎの中心に向かって歩く。
「少しよろしいかしら?」
「あなたは…!」
私の登場に周囲はより騒がしくなり、あの王子ですら驚いた表情をしている。
それはそうだ。何せ今まで傍観を決めこんでいた隣国の王女が割り込んできたのだ。現に王子は今さら何のようだと怪訝な顔をしている。
「コーネリア様。何か?」
「先ほどのアン嬢の処遇だけど…私に委せてくれないかしら?私も彼女には借りがあるの。」
私の言葉に再び周囲は騒がしくなる。
「しかし…」
「彼女は私の国に連れ帰り、然るべき処分を与えます。あなたの気持ちはわかります、ですがお願い致します。…それに、言葉は違うけれど国外に追放という事になって、ある意味修道院送りよりも厳しい処分だと個人的には思うのだけれど、どうかしら?」
この言葉には流石の王子も押し黙る。同盟国の、しかも自国よりも力の強い隣国の王女の言葉なのだ。更に彼女は次期国王になる立場でもある。
王子は苦虫を噛み潰した様な顔をしながらも、分かりましたと渋々了承した。
「ありがとうございます。レオン王子。この国の国王には私からもこの旨を伝えます。」
「……お願いします。」
王子との話を終えると、慌てて私を追ってきた従者と共にアンには目もくれずにパーティー会場を後にした。
******
「姫様!……なぜあの様な事をしたのですか?」
パーティー会場から馬車で移動している最中、従者が私に尋ねてきた。彼の声には非難の色が混じっている。
「そうね…。王子には悪かったと思っているわ。せっかく目障りな存在を片付けて、自分の株をあげる機会だったのに、最後の最後でたまたま留学に来ていた私に美味しいところを盗られたんだもの。でも令息の方は排除できたんだし、良しとしてもらいたいわね。」
「俺が言いたいことはそうではなく!」
私は彼から視線をそらし、窓の外を見る。
その私の態度に答える気は無いのだと理解した彼は溜め息をつきつつもそれ以上追及して来なかった。
わかっているわ……。自分でも馬鹿な事をしたって。でも、どうしても捨て置けなかったのよ。
私が彼女に会ったのは卒業パーティーが初めてではない。留学した初めの頃学園の廊下で見かけたのが最初だ。
放課後、廊下で佇み私の方を見ていた彼女は小さな声で、
「いつも偉そうにしちゃって…同じ人間なのに、神様にでもなったつもりなのかしら?」
……そう言ったのだ。
その後同じぐらいの音量でむかつくと言った後、聞こえてないと思ったのか、そのまま立ち去ったのだ。
私はその言葉に衝撃を受けた。
その言葉を聞くまで、今の今まで自分が人間だということを忘れていたのだ。
私は王族である前に一人の人間なのだ。その事を忘れたまま、このまま王になっていたら私は民を自分と同じ存在、人だとは考えもしなかっただろう。……そしてきっと愚王になっていた。
悔しいが彼女の言葉に救われたのも事実だ。
だから助けた。
…だが次はない。
とりあえずアンにはどこかの家で働いてもらうか、引き受けてくれそうな家がなければ私のそばで暫く働いてもらおう。
その間に彼女が変わらなければそれまでだ。私はそこまでお人好しではない。
アンが何を信じているのかわからないが、
願わくは彼女の目が覚めますよう…
そう祈りつつ…目的地に着くまで眠るため、私は目を閉じた。
よくある婚約破棄やざまぁを書いてみたかったんですが、小説初心者には難し過ぎました…
もっと上手くなってから、もう一度チャレンジします…




