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「3日かぁ」
蓬は足元の小石を草履のつま先で蹴って川辺の岩に腰を下ろした。
「刀鬼弥のお土産、間に合うかなぁ…」
ふふっと笑って咲夜も蓬の隣に腰を下ろす。
「ちゃんと挨拶して行きたいから、間に合うと良いな」
抱えた膝に顔を埋めて咲夜は肩越しに手を振る刀鬼弥の背中を思い出していた。
あれが最後になるなんて……
伏せた瞼の裏にお日様みたいに笑う刀鬼弥の顔が浮かぶ。咲夜が泣いているといつもあの笑顔でもう泣くな。俺が守ってやるから。と抱きしめてくれた。
「……いいの?」
流れる川の水面を見つめたまま蓬が問う。
「…好き、なんでしょ?」
咲夜は膝からそっと顔を上げて蓬を見た。山の向こうに沈んで行く夕日が蓬の横顔を淡く照らしている。
「うん」
咲夜はもう一度静かに瞳を閉じて刀鬼弥の顔を思い浮かべる。その頷きがどちらの問いに対するものなのか蓬はそれ以上は何も聞かなかった。
川の音だけが2人の間を流れてゆく。
膝を抱いた咲夜の手に、暖かな温もりがそっと触れた。顔を上げると、蓬は相変わらず川面を見つめていてその手だけが咲夜の手を包むように重ねられていた。
好きだよ。
大好き。
蓬も刀鬼弥も。
蓬の手を握り返して、咲夜は微笑んだ。




