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Sky Seeker  作者: 刹那翼
第2章 全隊遠征編
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最強対最凶

 二転三転する形勢。今は明らかにエドワルド率いる屍軍が優勢であった。絶望の気配を全兵士が感じていた。

 最凶のエラマスキアであるディアブロが出現した。エラマスキアでさえ、隊長クラスが三人かかって何とかなるかどうかの危険度。しかし、エラマスキアの調査報告によれば、ディアブロに攻撃を与えられたというケース報告はなく、一方的に被害を受け、生きて帰ってくるのが奇跡というほど。ディアブロと接敵して、生きて返ってきたのはたったの三人。しかも、同一隊で、隊長と人器を失ってしまっただけではなく、トラウマを発症し戦意喪失。スカイシーカー除隊を余儀なくされた。

「ハル、ここは俺に任せろ。あいつだけは俺とショウが相手をする。

 こっちは気にせず、お前はエドワルドを倒せ」

 そこに現れたのは鏖殺の皇帝クリス。治療を終え、戦場に戻ってきた。彼はショウの後ろ襟を掴み、どこかから引きずり出してきたようだ。

「いや、俺戦力にならねえよ? なんせ、あんな奴と戦ったら死ぬ。無理、やだ。死にたくない」

「お前は安全なところにいりゃいいんだよ」

「いや、そういう問題じゃなくて」

「どういう問題だよ」

「あー、もー、やりゃあいいんだろ、やりゃあ!」

 ハルはショウのことを幾分か不安に思ったが、スカイシーカー最強の戦士に任せる他に選択肢はなかった。




「ショウ、準備できたか?」

 ショウは嫌そうに、頷き、人器の能力を発動させる。

 ショウの人器の能力は感覚共有。ショウのことを信頼した生物の捉えた情報・感覚を共有できる。つまり、全方位に視覚がある状態にできる。しかし、この能力の欠点は死んだときの痛みなども共有される。その場合は同様に激痛が走り、最悪の場合ショック死するだろう。そのことをショウは理解していた。

「言う通りに360度至る所に犬を散りばめたよ。これでどんな角度からも視覚を共有できる。

 でも、犬は死なせないでよね」

 ああ、わかってる、と淡白にクリスは応答した。

「じゃあ、まず俺とお前の背後の奴らを全滅させるか」

 周りの砂鉄を剣のように固め、数多の剣を生成する。そして、ショウが散りばめた犬から視覚情報を得る。アルマの弱点、赤いコアの場所を丁寧に一つ一つ探し出す。更に、その小さなコアに一太刀一太刀射出する。砂鉄でできた剣は脆く、コアに当たると粉々になり消滅したが、アルマも同様に生命反応を消した。

 ショウはその様子を感覚共有で見ていたため、感嘆する。最強の存在とはいえ、ここまで洗練された能力解放だとは思ってもいなかった。

「これで集中できるな。いつものストレス解消だ。

 俺に本気を出させてくれよ。覚悟はできてるぜ、俺は。何にせよ、久々に暴れられんだからよ。

 さぁ、思う存分暴れていいぜ、ディアブロさんよォッ!」

 倒れている兵士だけの武器・装備を片っ端からクリスは集める。そして、人の大きさの三倍ほどの槍を空中に創り出す。クリスの能力範囲は50メートル。そこまでディアブロに近づかざるをえない。その間合いはディアブロの攻撃範囲でもある。犬の視界を使い、一挙手一投足を見抜き、攻撃を避け、間隙を突く必要がある。それがどれだけ困難で、死に限りなく近いことかはクリスは明確に理解していた。

「ギギャガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 クリスの覚悟に呼応するように、ディアブロは雄叫びを轟かせる。地面がその振動によって、砂埃を舞い上がらせる。

 クリスは鋼鉄の槍をディアブロに向かって高速射出する。しかし、ディアブロの体躯は青色に変色する。青色は斥力を起こす状態。つまり、ディアブロの周りに反発するような重力場が構築された。

 その槍の重さからか斥力に抵抗しながら進んだが、ディアブロの鋭い眼光にめがけて放たれた金属は禍々しく捻じ曲がった角で弾かれた。クリスの能力範囲の50メートルを過ぎ去ると、その重力に逆らえず、ドガアンという音を響かせながら、ゆっくりと元の武器や装備に形を戻していた。クリスの能力の効果は50メートルを超えると、ゆっくりと効力を失い、元の形に戻っていく。

「あの馬鹿でかい槍を逸らすとはねえ。気色悪いことしてくれんじゃねえか。

 でも、不思議だなあ、お前の体は浮いてねえんだわ。つまり、お前の真下には斥力フィールドはないってこった」

 クリスは左手の人差し指だけを立て、上へ向ける。

 その合図で、剣が無数にディアブロの足元から吹き上げてくる。

「ダメージは少ないだろうなあ! だが、人で言うと、靴の裏に針がついていて、それを踏んだ状態だ。しかも、お前が支配したい下々の民は支配しきれていないってこった、皮肉だよなあ!!」

 クリスは冷笑する。ディアブロは怒りで咆哮する。

「あ、忠告するの忘れてた。その足に刺さった針もとい剣は刺さったときに形を変えて、枝分かれさせて、抜けなくしておいた。

 それに、お前が叫んだら、それ、振動するぜ?」

 ディアブロが痛みでよろめく。

「すごい、手に取るように、ディアブロを翻弄している……!」

 ショウはクリスの後ろで、思わず感嘆の声を再び上げる。クリスはその言葉に小声で答える。

「いや、これは時間稼ぎだ。斥力で決め手がねえ。さっきの馬鹿でかい槍の攻撃でわかった。俺の攻撃だけだと逸らされる。それを陽動にして、下から攻撃しようとしてもデカすぎると音でバレる。

 勝たなくてもいい。こいつでやられる奴を少なくして、戦況を立て直して逃げればいい」

「なんでそんな悲観的なんだ?」

「他の色があんだろ。あいつの攻撃は一つじゃない」

「せいかーい、攻め手がないんだねえ。ありがとう、よくわかったよ」

 ショウの声色が明らかに変化し、怪しく不気味な声に変化する。その声の変化にクリスは振り向いたが、遅かった。

「……は?」

 ディアブロは青から白に変色していた。そして、クリスは背後からショウに短刀で刺されていた。腰あたりからボタボタと血が流れ落ちている。クリスはショウの目を見ると、その瞳は白色になっていた。明らかにショウではない誰か。

 クリスは能力を発動させて、ショウを金属の拘束具で動けないようにする。

「へえ……白はマリオネットにするってことか。

 ちっ。このままじゃやべえかもな……下手すると血が足りねえな……」

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