Long time no see
時は少し戻り、場所も変わる。地上世界の戦いから、戦いのない地下世界へと移る。
「着いたぞ」
瞬間移動によって、地下世界に来た三人の男達。地上よりは幾分か安全な場所だ。
「ありがとう。シオン、後でここで待ち合わせよう。すぐに、マグノリアを連れてくる」
ユウがそう言うと、気怠そうに手のひらをブラブラさせて、ユウを追い払うようにシオンは言う。
「はー、とっとと行け行け。
暇つぶしにでも、セナの世話でもしておくよ」
「……あぁ、頼む」
真面目なセナと適当なシオンを二人にして良いのかと思いつつ、ユウは二人に背を向ける。
「セナは真面目だからつまんねぇなぁ。流石、第2隊。真面目すぎるんだよ」
「うるさいです、あなたが適当すぎるんです」
「なんだとお? 適当に生きてるぐらいがちょうどいいんだよ!」
その会話を背に、ユウはマグノリアがいるであろう地下世界の唯一の建物、"ユグドラシル"に向かう。
確か、マグノリアの個室は二階にあったはずだ。マグノリア・シッスルという文字を探す。
見つけた。ドアを三回ノックする。
「マグノリア、いるか?」
部屋の中からドタドタという音が聞こえる。そして、物凄いスピードでドアが開く。ドアに鼻が当たれば、鼻血だけで済まずに鼻骨が折れること間違いなしだろう。そんな勢いだった。そのドアの躍動に負けずとも劣らないほど、ピンク色のメッシュが入った白い髪が揺れた。
「やっぱり! ユウ! 久し振り!」
懐かしい声がしたからだろうか。かれこれ半年振りくらいだろうか。スカイシーカーを一年ほど前に引退しているが、それ以来会う機会はめっきり減っていた。
「ああ、久し振り。元気そうで安心したよ。
マグノリア、突然だけど、頼みがあるんだ」
「真剣な顔してどうしたの。
仲間だもん。ユウの頼みなら何でも聞くよ」
ユウはこの瞬間に、自分がハルによって地下に駆り出された理由がわかった。マグノリアに断られないため。地下へ戻る人数を最大限少なくするにはシオンが行けばいい話だ。しかし、そうしないのは断られる可能性があるから。ユウという昔のチームメイトだからこそ、頼めたことなのだ。
そして、選んだ人物がマグノリアである理由も悟った。グランドクロスはどこか信用ならない。その中でも、最もスカイシーカーと親交が深いのはマグノリアだ。ある程度融通は効くだろう。ハルは頭がキレる奴だ。
「今スカイシーカーが遠征に行ってるんだけど、危ない状況なんだ。力を貸してはくれないか」
地下世界にいる時間をできるだけ短くするべく、単刀直入に話す。
「なるほど。特殊なアルマの仕業か。今回の遠征を止めると思ったんだけどな……」
マグノリアの反応にユウは違和感を感じた。
「そうなんだけど……グランドクロスでは新しいアルマの情報が出回ってるのか?」
ユウは脳裏に浮かんだ疑問を率直に聞く。
「えぇ。被害報告が何件かあるわ。なぜ、グランドクロスは被害報告があるのに、遠征を容認して止めなかったのか。何か裏がありそうよね……」
独り言のように、マグノリアは言葉を素早く羅列していく。
「……考えすぎじゃないか? この時期に遠征に行っておかないと、冬が来るからだろ」
マグノリアはまだしかめ面をしているものの、少しユウの仮説に納得している様子だった。
「そうかもね。冬は地下水が凍って、水不足になるしね。地上の整備をせざるを得ないのかもね」
その様子を見て、ユウは本題に戻す。
「来てくれるか、もう一度地上へ」
「勿論よ。あ、でも、ちょっと待ってね。着替えるから」
唐突に、服を脱ぎ始める。ユウは何が起こっているかわからない、といった放心状態でその姿を眺めていた。鍛えられていて、くびれている腰の純白の曲線美が露わになり、女性の胸のふっくらとした曲線に入りかけたところで、ユウは我に帰る。罪悪感と恥ずかしさで急いで目を背ける。
「え、いや、仲間だからって目の前で着替えるな!」
「別にユウになら見られてもいいもの」
マグノリアの言葉に見たい気持ちもそそられる。それはマグノリアより美しい女性も少ない。そして、男子だもの。だが、ユウの理性が勝つ。
「こっちが嫌だよ! 社会的に死ぬわ!」
「チラッとだけ見てもいいんだよ?」
「馬鹿!」
「じゃーん!」
「いや、こっち来るなよ!」
「いや、もう着替え終わったからだよ!」
会話でしょんぼりしたマグノリアの姿を見ると、しっかりとシューターを装着している。普段からシューターを手入れしていたのだろう。整備していないと、シューターの装着は小一時間近くかかる。そして、何よりも服装が似合っている。魚が川で生きているのを見るように、違和感がなかった。
「……早。流石先輩」
「まあ、昔は毎日のように着てたからね。久し振りに着るけど、しっくり来るね。この隊服」
「懐かしんでる場合じゃない。行こう」
「そうね。でも、行く前に聞かせて。
ユウはレンをどう思っているの?」
ユウは数秒黙る。マグノリアは交換条件と言うのだろう。行く代わりに、その情報を教えろと。だが。
「……悪いが、ノーコメントだ」
マグノリアはその答えを予期していたようで、ほんのり微笑んだ。
「だと思った」




