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Sky Seeker  作者: 刹那翼
第2章 全隊遠征編
26/32

作戦

「隊長は全員レオの元に集まってくれ」

 残っている隊長はレンを含め、シオン、レオ、ジン、サーヤ、ショウ、ハル、クリスの八人。レオの元に一同が会した。

「まず、ここからエリア1に戻るまでにかかる距離は10キロ弱。全員が逃げ切るまで二時間程費やすだろう。レオ、この土の要塞は移動できるかい?」

 場を仕切るのはハル。

「んな器用なことできるわけないだろ。動かせるだろうが、こん中にいる奴誰か轢き殺しちまうぞ。あと、そんなに長いこと能力は使えねえ」

 レオはハルの質問に息を荒げながら答える。人器の力を使うのに体力を消耗しているようだ。

「そもそも、なんで逃げ切る前提なんだ? 第1隊が攻撃してるんだ、俺達も攻撃に加担すべきだろ」

 ショウは戦闘に参加したそうにする。

「ショウは脳筋だな。相手はどんな攻撃手段を有しているかわからないんだ。距離を置くのが無難だ。

 おそらく相手の得意な技は暗殺だ。視界の開けた場所に行けば、相手の攻撃は通じないはずだ。暗殺しようがないからね。そんな状況の中に身を投じたら、飛んで火に入る夏の虫だよ」

 ハルの最もな言葉にショウは苦い表情をする。

「確かに、ハルちんの言う通りだね。カレンちんとかエルるんとかイブイブがいれば話が違うんだけど、現状はそうなるよね」

 明るく気さくなサーヤもこの場限りは真剣な表情をしている。

「それはいいんだが、ここからどうやって動くんだ?」

 寡黙なジンは痛いところを突いたようで、ハルは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

「……誰かが囮になって、犠牲を減らす他ないね」

 ハルは今にも消えそうな細い声で言う。

「犠牲ったって……俺は誰一人失いたくはないぞ。俺は反対だ。このまま何もせずに命を失うくらいなら、戦ってその天命を果たすのが戦士としての命運だ。俺は戦いたい」

 シオンはハルの意見には反対らしい。しかし、それに反論したのはジンだった。

「気持ちは大いに理解できる。だが、俺はハルに賛成だ。戦って勝つ未来が見えない。敵の素性が知れん」

「クリスとレンはどうなんだ? 一言も喋ってないが」

 レンはただ黙っていた。黙らざるを得なかった。自分の意見を出したら、その意見で通ってしまう。それが目に見えてしまう。そして、その作戦の先には、自分の命を危険に晒しかねないことも同時に理解していた。それが怖かった。だから、黙っていた。

 先に口を開いたのはクリスだった。

「死人に口なしだ。カムイに戦うなと言われた限り、俺はハルに従う」

 クリスが言葉を発し終わり、レンの方向に全員の目が向いた時、レオは強固な土の扉を開ける。

「第1隊が帰ってきたぞ!」

 最初は沸き立っていたが、第1隊の姿を見るや否やその場にいる全ての人物が落胆する。

「……もう終わりだ」

「そうだな」

 その姿は満身創痍だった。ユージンのゴーグルは割れ、右目からは血が流れている。傷の状態からして、右目の失明は免れないだろう。カリンの左手の鉤爪はボロボロになり、原形を留めていなかった。それ以上に原形を留めていなかったのはカリン自身で、その鉤爪を装着していた左手は焼けただれている。右手に装着しているシューターも煙をあげている。ジャンは見た目の変貌はなかったが、項垂れている。そして、エマの姿はどこにも見当たらなかった。

 意気揚々と一方的な蹂躙を目指して、この砦から出て行ったものの、誰一人として笑みを浮かべる者はなかった。

「俺達は何とか敵を探し出して、その命を刈り取った。一人一体ずつな。だが、そいつの正体は何だったと思う?

 ただのアルマだ。他のアルマと何ら変わりない屍だ。その命を刈り続けていたエマは……その使命を最期まで全うした。以上だ」

 普段は声を荒げるジャンは静かに告げる。まるで肺の空気を全て吐ききってから絞り出した声のようだった。

「……ショウ、敵は見つかったか」

 ショウは土の壁を背にだらしなく腰を下ろした。そして、首を横に振る。

「いや、全くだよ。それに、そろそろ友達も限界みたいだ」

 猟犬はくぅんと力ない声で鳴いている。空腹、視界、様々な問題が響いているからこその声色。

「クリス、お前のことだ。悔しいだろうが、力は使うな。今までにはない状況だ。我慢しろ」

 まだ目の闘志は消えぬクリス。この場で唯一メラメラと燃え盛っている。

「……うるせえな。そんなこたぁ、俺が一番わかってんだよ」

 しかし、アルマ化するかもしれない身としては危険な真似はできない。

「ハル、レン。この状況、どう切り抜ける?」

 カムイはなぜかこの二人に尋ねる。

「第1隊で仕留めたのはただの人間数人。つまり、普通のアルマとは変わらない。だけど、一つだけ言えることがある。人器を使用している可能性だ。

 ……カムイ、心無い言葉だと思うが、殿(しんがり)としてここに残ってくれないか。それで犠牲は減る。犠牲は一人で十分だ。

 きっと今までの指揮官もそうしてきただろうしね」

 レンも心の中ではその作戦が最善策だということを理解していた。カムイ一人がこの場を守り切れば、犠牲は最小限で事済み、新型のアルマに対して残った人物で作戦を練ることができる。理屈では正しい。だが、カムイを犠牲にすることはできなかった。

「おい、何言ってんだ! カムイはこの世界に必要な人間だ! スカイシーカーのリーダーとして、レイさんの後継者はこいつしかいないんだ! 犠牲にするなら、他の誰かだろ! それは俺でもいい!」

 シオンは声を荒げる。しかし、場の空気はカムイを犠牲にする流れになっていた。

「だからこそだよ。この場を凌げるのはただ一人。カムイだけだ。レイさんの後継者として、死んでくれ」

 ハルは冷酷に言い放つ。その威圧感に誰もが閉口する。

 カムイは目を背け、刹那の逡巡を見せた。自身が生き残る道を、一縷の光を探したのだろう。しかし、意を決したのか、前を見て言い放った。

「……わかった。後は任せたぞ、ハル、クリス、そして、レン」

 そう言って、一歩前へと踏み出した。そして、レンの真横を通る。

 レンは無我夢中でカムイの歩みを止めた。カムイの左手を強く掴む。

「痛いぞ、レン。離……」

 カムイはレンの瞳の凄みに閉口する。

「待てよ。そんな作戦は俺が許さない。

 俺はカムイに二者択一の問題について問われたことがある。一人の命か五人の命か。

 今がその状況だ。俺はカムイの命を見捨てられない。皆の命も見捨てられない。俺は全員が助かる新たな道があると信じている」

 レンは自らの思いの丈を述べる。

「レン君。君はこの状況を打開できるのか。僕はこの絶望的な状況を客観的に、戦術的に判断しても、カムイを犠牲にする他ないと考える。そうでもしないと、犠牲者が増える一方だ。完全に日が暮れる前に手を打つべきだ。危険を犯さずに安全な橋を渡るのはこの方法しかない。希望的観測は誰でもできる。黙って作戦を飲んでくれ」

 それに対して、ハルはまたしても冷酷に答える。感情を捨てているかのようだった。だが、きっと苦肉の策で、心の奥底では悲痛がほとばしっているのだろう。

「……カムイは俺にもこの状況をどうするかを聞いた。俺にも作戦を述べる権利はあるはずだ。

 俺が人器の能力を解放する。そして、この悪しき状況を打開する」

 その場にいた全ての人物が目を見開く。

「なぜ黙っていた」

 クリスはレンに噛み付く。しかし、ジンはそれを制止する。

「クリス。そんなことを言ってる場合か。俺達の中にも能力を隠してる奴はいるだろ。レンだけを責める時じゃあないだろ」

 ハルはレンに尋ねる。今回ばかりは冷酷な声色ではなかった。いつもの柔和な声色だ。

「それはどんな能力だい?」

「誰かの能力を模倣する能力だ」

 その場にいたカムイ、クリスは激しく反応する。

「それぁ、俺の能力も模倣できんのか?」

 壁を固めるのに必死になっているレオは助けを求めるかのようにレンに質問する。

「……レオの能力はコピーできたことがない。俺ができたのは今のところシオンとカムイだけだ」

「それぁ残念だ。俺の代わりにこの城を保ってもらおうと思ったんだがな」

「ふむ。何かしら条件はありそうだね。

 それなら、この状況を打開する光が見えてきたね。ただ、君がアルマを殺める覚悟があるかどうかだ」

 しかし、スカーレットを助けるために何人ものアルマを殺めてしまっている。仲間が生きるためなら、それすらも厭わないつもりだ。

「それに関してだが、俺は気が進まないが、こいつの意識に俺が潜り込めばいいんじゃないか。それなら、こいつが殺したという事実にはならないだろ」

 レンにはショウが何を言っているのかはわからなかったが、レン自身で殺さないためのサポートをするということは理解できた。

「何をするかは知らないけど、俺は自分でやれる。今の問題はそこじゃないんだ。俺は生きている人間を殺したくないだけだ。ただ、仲間が死ぬことには変えられない。

 だから、心配いらない」

 レンはそう言ったものの、ショウは興味なさそうに、へぇ、考えが青い。と言ったきりだった。

「犬っころ。じゃあ、俺に手を貸せ。策がある」

 クリスはショウの提案を聞いてか、ニヤッとした表情を浮かべている。

「わかった。犬っころじゃないけど」

 ハルは数分間黙っていたが、ようやく口を開いた。

「……作戦変更だ。まず、シオン。君はセナとユウを連れてエリア1に先に向かってくれ。

 その後、シオンはセナを救護室に。そして、ユウはマグノリアと落ち合ってくれ。彼女はこの後の状況をきっとどうにかしてくれる」

 ハルがユウを選んだ理由としては、おそらく第6隊であるからだろう。

「了解。二人共俺に掴まれ。傷口が痛むだろうか、赤ちゃんじゃねえんだ。泣くなよ、セナ」

「当たり前だ……服噛んでるから早くしてくれ。既に痛い」

「あいよ。あ、二人共、変なとこ触んなよ」

 ハルはそのジョークを聞いて呆れ果てた表情をしながら、次の作戦を告げる。

「その次に、カムイ、レン君。この森の木々をできる限り伐採してくれ。

 逃避行なんて一切しない。

 真っ向勝負だ」

ハル(No.44980)

年齢:19歳

身長:169cm

戦闘能力:7

行動力:6

優しさ:6

協調性:7

頭脳:10

(10段階で評価)


第2隊隊長。地下世界の真相に限りなく近い人物。前の隊長が戦死したことで、隊長を若いながらも引き継ぐ。若いが、確固たる信頼を築いている。金髪で美しい容貌からも人気は高い。しかし、本人は色沙汰には興味はなく、興味があるのは甘い物。生粋の甘党で、三度の飯より三度のデザート。彼に甘い物を与えなければ、餓死するという都市伝説もあるとかないとか。レンとエルナとは実は同年齢で、少し誕生日が早いだけ。

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