New type
その後何事もなく、森の入り口に差し掛かる。鬱蒼と木々が茂っていて、視界は狭い。今まで以上に緊張感が高まる。
「今から森林の探索を開始する。まず、自分の命を最優先に考えろ。そして、誰かが亡くなる可能性もある。助けてもいいが、二次災害だけは引き起こすな。自分の身は自分で守れ」
先頭の隊から徐々に足を踏み入れていく。そして、レン達のいる第6隊が森の中に入りきった直後のことだった。
何らかの射撃音が炸裂する。それと同時にクリスが倒れる。
「おい、クリス、大丈夫か!?」
クリスの左頬から鮮血が流れ落ちている。剣や銃弾による切り傷のようになっている。
「……チッ。ギリギリ避け切れなかった。クソが。なんだ、この攻撃は。おい、犬っころ。敵はどこだ。そんでもって、何体いる」
クリスの瞳に殺意の炎がメラメラと灯る。
「俺は犬っころじゃねえ、ショウって名前がある。まあ、それはいい、俺の能力でも敵は見当たらなかった」
「俺が撃たれた方角にはいねえのか。前方からの攻撃だ。俺が仕留める」
「前方なんて攻撃は見えてたからわかってるよ! いたら、ちゃんと敵の位置を知らせる!」
敵の気配が見えない劣勢に、険悪なムードになってくる。全ての隊が混乱の渦中に巻き込まれる。辺りが騒がしくなり始める。
「クリス! この攻撃でお前がアルマ化する恐れがある。お前は一度引いて治療を受けろ。スズ、頼む。他の奴は黙ってろ!」
「は、はい! わかりました!」
カムイは苦そうな顔で、指示を出す。周囲一帯は完全に静かになる。
「…………わーったよ。最悪の状況になっても知らねえぞ。頼んだ……スズだっけか」
「はい、任せてください」
スズがそう言った時だった。もう一度射撃音が鳴り響き、同時に悲痛な叫び声がする。
「大丈夫か、セナ!」
ハルの部隊の腹心であるセナが撃たれた。腹から血が流れている。
「……隊長、これは、銃弾で、す。俺の、腹を見れば、わかります、よね。後は任せました、よ……」
「ああ、任されたから喋るな。ショウ、右後方に敵は?」
「……ダメだ、見当たらない」
セナが攻撃を受けた方向にも敵はいない。
「これは幾分かまずい状況だね。前進も後退も許されない状況だ。レン君は何か不自然なところでも見つけたかい?」
状況に唖然としていたレンはハルに話し掛けられる。自身が率いる隊員が撃たれたというのに、冷静な思考を巡らせていることにレンは驚いていた。
「不自然なところって言うよりも、クリスとセナが攻撃を受けた先に敵がいないのなら、アルマが銃とか何かしらの攻撃手段を用いて攻撃してることになる。つまり、思考能力を持っていることになる。そこが問題だと思う」
レンが自身の考えを言い切ると、ハルはゆっくりと首肯する。
「僕も同意見だよ。動物的本能で攻撃するなら、敵の行動はパターン化される。殴る、蹴る、刺す。だけど、敵の姿は見えないし、遠距離攻撃に他ならない。敵は思考して攻撃していることになる。動物的本能で攻撃していたところに思考回路が混じってくると、攻撃手段も豊かになる。最強のクリスなら乗り切れるだろうけど、視界の悪い森の中だと不意打ちの可能性も捨てられない。
あとは、思考する敵の数と攻撃のトリックだね。それが問題だ。敵が思考するのか、異質な攻撃をするのか、それとも、両方なのか。それとも、人間なのか」
マグノリアは異常な敵がいると言っていたが、これがその敵なのか。カムイに伝えておくべきだったのか否か。レンは心の何処かでカムイのことを信じてはいなかった。クリスタルの正体について、レンに知らせなかったこと。カムイはレンに対して隠していることがあると見抜いていた。
しかし、この状況に陥ってしまうと、後悔の念が押し寄せてしまう。
「現在、森に入っていない部隊は足を踏み入れるな。全滅だけは阻止しろ。そして、帰還しろ」
カムイは二次災害を防ぐために、ライフォンによる通信で森に侵入していない隊に地下へ帰るよう命令する。
「おい、新入り。お前、周り見えてるか?
お前、カムイの言うこと聞いていたか? 自分の身は自分で守れ。仲間のことを守るのが隊長であり、隊長がその立場になってどうする」
レンは治療中のクリスに話し掛けられ、頭の中が一杯であったことに気付く。そして、ミオとユウがレンを守るようにして戦闘姿勢に入っていたことに気付く。
「……皆、俺のことは守らなくていい。自分の命だけ考えてくれ。自分の命は自分で守れるよ」
「レン、お前は気にするな。俺達は俺達で話し合って、お前を必ず守るということを決めていた。
それよりもクリス。なぜ、レンに突っかかるんだ」
クリスはスズからの治療を受けながら冷淡な声で答えた。
「未熟な奴を教育してやってるだけだ。お前はここに何をしにきた。地上で自由に生活を営めるようにすることがお前の願いだろう。お前はそこに立っているだけだ。願うだけで夢は叶うと思っているのか。そうだとしたら、幻想を思い描きながら死ね」
レンはクリスの言葉を聞いて、怒りは覚えなかった。むしろクリスはレンのことを理解していると思った。
「ハル、作戦を立てる時間を作る。レオ、お前の能力で土の城を建築してくれ。できるだけ大きな城を。
エマ、ユージン、ジャン、カリン。出番だ。俺達で城を護衛する。死ぬ覚悟は、できているな?」
劣勢に立ち上がる最強の部隊。
「えっへへー。やっと私達だけで戦えるの? クリスに出番取られて萎えてたとこなんだよねー」
腑抜けた声を出すメガネをかけたエマ。スカイシーカーの隊員はほとんどが短剣を使うが、エマは斧を使う。彼女はシューターを使った機動力と斧の破壊力で敵を薙ぎ払ってきたことで有名だ。
「エマは脳筋をどうにかしろ。カムイ、ノルマは何体だ、すぐ達成してやるよ」
特注のゴーグルを付けたのはユージン。彼は数少ないガンナーの一人。全部隊二番手のガンナーだ。ワイヤーを使った縦移動と機動力で狙った獲物を始末する。
「モチよ、カムイ。あんたこそ遺書の準備してきたの? わたしゃ、あなたの遺書読みたいから生きて帰るよ」
艶めくポニーテールを嬉しそうに揺らすのはカリン。装備は鉤爪。シューターを用いた俊敏性を利用して、アルマの核と命を瞬時に刈り取る。
「お前らうるせえよ!! 第1隊としての威厳を見せるために寡黙な背中を見せろ!!」
一番うるさいのはジャン。しかし、その煩雑さとは裏腹に確固たる実力を有する人物。彼は第1隊で唯一短剣を使用する人物である。そして、訓練生の教官はこの人物が担当するため、短剣を使用する人間はこの人物の技術を何かしら継いでいる。
全ての希望は彼らに託された。
ジン(No.32315)
年齢:25歳
身長:195cm
格闘能力:7
行動力:4
優しさ:6
協調性:8
頭脳:8
(10段階で評価)
第4隊隊長。第4隊は隠密行動を主にする部隊である。レオとは同期であるが、彼より誕生日は遅い。スカイシーカー随一の高身長で、真面目な人柄。また、寡黙でもある。眼帯をしていて隻眼なため、後輩からは怖がられがちだが、話してみると意外と良い人ランキング1位の人。名前の綴りはJin。




