裏
「なぁ、睨むのはやめてくれ。昔からの仲だろ」
「怒るのも無理はないだろ。
聞きたいことは数え切れない。でもお前には時間がないんだろ。あと、お前の様子じゃ聞いても答えてくれないだろうからな。だから、質問を一つに絞る。なぜ、俺に計画を伝えなかった。俺はその理由が知りたい」
「まず、お前を信用していなかったわけじゃないさ。その逆だよ。お前が俺の話を信用できないと思ったんだよ。
この腐食した世界には伝説を作り出す英雄が必要だ。だが、英雄は初めから英雄ではない。大いなる夢をもってしても、それに相応しい能力がなければ果たせない」
「お前は何が言いたい」
「英雄と崇められる者は元々人間だ。人間は誰しも迷う。英雄だって障壁に苦難する。その障壁を乗り越えて、初めて英雄として認められる」
「お前があいつを英雄にしたいのは、もうわかった。
俺に何も話さなかった理由を聞きたいんだ」
「俺が体験した話はあまりにも幻想的すぎる。現実味が欠ける。だから、お前には理解できないと考えただけだ。お前はリアリストなところがあるからな」
「幻想的だとか現実味だとか、そういうレベルの話をしているんじゃない。俺は事実を知りたいんだ」
「ああ、わかってるさ」
「なら、早く話せよ」
「俺はお前に話せないこともある。まだ時期が来ていない」
「話にならない。お前はもっとマシな奴だと思っていたが、俺の評価が間違っていたようだ」
「そうだろうな。だが、お前もいつかきっと理解できるはずだ。いや、きっと『できるようになった』だろう」
「お前、頭がおかしくなったんじゃないか? 訂正したつもりだろうが、文法が合ってると思っているのか?」
「いや、合っているよ。『この世界』のお前は俺を信じられないだろうからな」