六話〜城下町で〜
連続更新です。
なぜ城下町なのか。
更新が遅すぎて忘れたよ!と言う方は、『四話〜陛下の行き先は〜』をざっとお読みになってくださればと思います。
「あっ、新刊出てる。」
城下町の大通り。
クリーム色の結っている長髪の髪を風になびかせながら歩く。
久々の連絡機を確認すると、新刊情報が一斉に並んでいる。
この国は国王が本好きなことにより、書物の国とも言われている。
他にも連絡機、写真機、映像機などたくさんの発明品がこの国では存在するのだ。
それら全ての発明品は国王が発した一言から始まっているのだが、それは別の機会にでもお話しよう。
「うっしゃ!!」
おっと、久しぶりの新刊が出たことに喜び、思わず大通りのど真ん中で叫んでしまった……
周りの人からすんごい目で見られる。
うわーん、そんな一斉に見ないでよぉ!
ボク大勢から見られるのが苦手な働いてる引きこもりなんだから!!
「きャァァァァァー!!!」
そんな風に心の中で変な茶番をしていると、前方から叫び声がした。
今更だけど、この国には叫ぶ人が多いと思うのってボクだけかな?そんなに叫んでたら喉潰れそうだけど…
「誰かその男捕まえろ!!引ったくりだー!!!」
ある意味現実逃避をしていたら、前から犯人らしき男がこちらに走ってきていた。
あ、やべ。犯人こっち来る。
人ってピンチになると逆に冷静になってどこか客観的に自分を見つめるんだねぇ、ボク初めて知ったよ!
「どけっ!」
ありゃ、男がもうすぐ目の前にいたわ。えぇー、早くない?
これ、避けなきゃダメなやつ?
めーんどーくさーいなーー。
「避けることくらい、めんどくさがらないでくださいませんか?」
「えぇーーー、何それ…って」
わぁお、驚いた。
急に出てくるなっていつも言ってんだけどなぁ、中々それを実行に移してくれないんだようちの部下は!
ガンッ
「痛って…、何しやがる!!!」
あのままボクに突進するような感じで走って来ていた引ったくり男を目の前で殴った人物。
犯人と同じで黒い身なりだが、明らかに力の差が違う事がわかる。
団服で顔にはマスク、軍警の帽子を被っている目の前の人物に思わず苦笑が漏れる。
「国の軍警の者だ。直ちに、その財布を持ち主に返せ。」
「はっ?んなの、返すわけねぇだろ!!これは俺のもんだ!!いいからどけろォォーー!!!」
どうやら頭がイかれているらしい犯人は、軍警に向かって隠し持っていたナイフを取り出した。
あ、それは止めた方がいいと思もu…
「ぐあっ…」
あらら〜。
だから止めた方がいいって言ったのに。心の中で。
あ、何が起こったのかというとね?
男がナイフを取り出した瞬間に鳩尾目掛けて軍警さんのお膝がクリティカルヒット。
あれは絶対痛いよ、一回やられかけて鳩尾の近くにヒットしたことあるからね、ボクも。
「く…っそ!」
鳩尾に入ってヨロヨロとしているのにも関わらず、ナイフを離さす気はないらしい。
うっわぁ…諦め悪いなぁ、この人。
というか絶対に今手加減したでしょ〜。ダメだよ、ちゃんといれなきゃあ。
そう思いながら見ていると、ひったくりと目があった。
あ、これヤバイやつや〜ん。
絶対襲ってくるパティーンじゃないですか〜ヤダ〜。
案の定、男はナイフの先をこちらに向けて突進してきた。
「おぅふ…」
頭では避けなければならないと分かっているのに、体が動かない。
最近運動してなかったからなぁ。
そう呑気に考えながらも、スローモーションで近づいてくるナイフを眺め続ける。
まぁ、急所を避けるぐらいならできるかな?
目の前に、また、軍服のやつ。
その前には、もう迫って来ているひったくり。
数秒だった。
軍服の帽子が宙を舞い。マスクがパラパラっと落ちた。
焦げ茶色の髪に、右側の横髪がターコイズの少しばかり珍しい、軍服のやつ。
間違えるはずもない。
「ナイト……」
呟きが聞こえたのか、
ボソッ…と、彼は言った。
「ご無事で何よりです。」
左の頬にナイフで縦に切られた跡があった。
*・゜゜・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゜・*
無事に消火作業が終わった。
「な、ナイトさん…、本当に、本当に、どうもありがとうございます!!!」
「いえ、お気になさらず。」
「あとは、こちらでやっておきますので、お仕事にお戻りください…」
最後まで、お礼を言われ続けて、少し、いえ結構困りました。
「あ、ナイトさん。お疲れ様です!!今日も、お手伝いありがとうございます!!」
ロッティーのすごいところは自分が迷惑をかけたとは微塵も思っていないところだ。
「いえ、お気になさらず。それでは、これで」
一礼をして、調理場を離れた。
「あっ、ナイトさん!!」
ロッティー呼びかけとともに、ナイトがすぐ、後ろを向いた。
「はい。何でしょうか。」
「これ、りんごです。」
お昼の休憩時間に買って来たばかりのりんごだ。
「どこかに、お届けですか?」
紙袋に入っているりんごを手渡されながら、ナイトは、聞いた。
「いいえ、ナイトさんにと思って」
「私ですか。」
「はい。りんごお好きでしょ?」
ふふっ、とロッティーは笑った。
「えぇ、まぁ」
少し、驚いきました。
やはりロッティーはロッティーですね。
「それでは、失礼いたしますわ」
お嬢様のしなやかなお辞儀をして、すぐさま調理場へと戻っていった。
「りんご、いつ好きだと言いましたっけ…」
記憶にないが、まぁ嫌いではないのだしありがたくいただいておこう。
「あっ、ナイトさーーーん!!」
あれは、管理部の…
「レイダさん。どうされましたか。」
「これ、宛名が無いんだけど、ナイトさん宛だよ!!」
「ありがとうございます。」
「それじゃ!!」
そういってレイダさんは足早に帰っていった。
管理部は王宮内の裏と言う裏。
休みは、年内で約一週間あったら神ってると思うらしい。
自分も休みなど1日も貰った覚えはない。まぁ、休みを請求したこと自体がないのでべつにいいのだが。
さて、そろそろ仕事に戻りましょう。
陛下が用意して下さった執務室へと行く。
まだ、仕事がある。
あと、もう少しだ。あの人を連れ戻したら、1日の仕事の半数が終わる。
手紙の返事を書くのは、夜にしておこう。
さぁ、あと少しだ。
*・゜゜・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゜・*
「ナイト?!」
目の前にいるのは、自分の唯一の側近。顔にナイフが当たって少し切れてしまっている。
「身柄を逮捕します。」
いつも通り淡々とひったくりの男の手を固定する。
その様子をみるに顔に怪我を負ったものの、大事ないらしい。
その後、他の警官がきて一応この事件は無事終わった。
*・゜゜・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゜・*
「はぁ…、ヒヤヒヤした…」
「遅くなり、申し訳ありません。」
「いいよー、別に。」
城の隠し経路から城の中に入るべく、遠回りで城へ帰る途中。
え、なんで隠し経路?
そりゃあ、普通に表の城門から入ると陛下がお忍びをしていることがバレてしまうからだ。
「でも、久しぶりに顔見たかも〜」
ターコイズ色の目がこちらに向けられる。
「そうですか。」
うん、と言ってニコッと笑った。
「ケガ、大丈夫?」
「えぇ、なんとかなるかと。」
頰に手を当てながら言う姿はいつもとちょっと変わっていて、面白い。
「そっかぁ。」
あっ、夕焼けだ…。
もうそんな時間なんだねぇ。早く帰んないとまた大臣君に泣きながら突進されてしまう。
「そういえば。陛下、来月あたりに一週間ほどお休みを頂けませんか。」
んぇ?珍しい、あのナイトがお休みが欲しいって言うなんて。
「うん?お休み?いいよ」
まぁ、いつも働き詰めだからたまには休んでもらわないと!
「ありがとうございます。」
どういたしまして〜!(*´∀`*)
いつもの暖かなちょっと変わった1日。
たが、この陛下の言葉が今後を少し狂わすのであった。
読んでいただきありがとうございます。
また更新がいつできるか分かりませんが、ウィルデリア王国より広い心で見てくださると嬉しいです。