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第5話 「何かあるんだろ?」 ~I know anything~

2017/04/06 改行修正しました。

「お熱い夜をっす!!」


 あの小僧、何ふざけたことを言っているんだ。なんて思う。


「え?なんですかぁ?何か付いていたりしますかね?」


 そう、僕は帰りに自分でホテルの行き道が分からないので、佐藤さんにホテルまで運んでもらっているだけなのだ。

 本当に何言ってんだ。


 と、ふと思い出すのは、あの仰々しく挨拶を迫った局長がやたら素直に謝ったあの顔である。

 あれか・・・


「と、訊きたいことがあるんでした。」

「は、はいぃ?私にですかぁ?」

「はい、佐藤さんにです。」

「私に教えられることなんて・・・」


 不安げな顔になる、なんだ、やはりまだ不安なようだ。


「いいえ、佐藤さんにでないと訊けないんです。」

「え?」


 と、一瞬頬が赤に染まる。


「は、はいぃ。なんでしょう?」

「今日の自己紹介でここに勤めている年数を皆さん言っていたじゃないですか。」

「はいぃ、確かにそうですねぇ。」

「はい、それで、聞いたところ一番長いのがジョージさんで、6年。

 まあ、勿論局長は省いていますが。

 一番短いのだと佐藤さんで3年だったじゃないですか。

 それって、何か理由があるんですかね?」

「えぇ・・・」


 じっと佐藤さんを見つめる。

 佐藤さんは唐突に海の方向へ指を指すと、


「あ!あれぇ、ここの海ってぇ、冬になるととても美しいって評判なんですよぉ?」


 と、もうそこは佐藤さんが迎えに来た、待ち合わせの場所をもう通り過ぎていた。


「へぇ、そうなんですね。」


 夜に波立つ波は、昼に見た海とは思えないほど幻想的な雰囲気を漂わせていた。

 今度また、来よう。



 っと、話を流されるところだった。

 なぜかこういう言い逃れは得意なようである。


「そう言えば、去年って何かありました?」


 作戦変更だ、こうやって一年ずつ攻めていこう。上手くいけばボロが出るはず。


「去年ですかぁ?私はあんまり何もありませんでしたねぇ、私の家の叔父の孫が生まれたとかぁ、本当に小さな事しかなくてぇ。」

「へぇ、そうなんですね。じゃあ、一昨年なんて何かあったんじゃないですか?」

「一昨年もぉ・・・。

 あ、一昨年はこの町に映画を撮りに来るってぇ、言うもんでしたからぁ、大騒ぎでしたよぉ。」

「へぇ、どんな風な感じだったんですか?」

「海駄チメモリーって知ってますよねぇ。」

「へぇ、あの有名な。」

 


 海駄チメモリーと言えば、仲良し3人姉妹が、頼りがいのある母が死んでしまい、その後に実は12歳の4人目の妹がいることが発覚する。

 その妹が、


「私、海駄チだから、遺産全部もらうんだ、だから出て行け。」


 と、言って強制立ち退きを言い渡される。

 それを半狂乱の長女を支えながら次女、三女があんな手やこんな手で四人目の妹を騙して、遺産折半まで持っていく。

 そんなお涙頂戴のストーリだったはずだ。

 あれ?全然泣けないな。



「その映画のロケ地になるかもしれないってぇ、街のうわさで流れたんですぅ・・・」

「ほう、それで。」

「その時だけ郵便物が急に増えてぇ、大変だったんですよぉ。

 その後ぉ、別の所でロケするって公表してからはぽっきりですけどぉ。」

「は、はぁ。」


 おそらく身内からの

 「ほらほら、あれ、送ってきなさいよ。俳優のサインとか、あら、早かったかしら。」

 みたいな催促の手紙だろう。尤も、それで困るのは配達された人だけだが。


「へぇ、それで、3年前は?」

「・・・あ、あっちにぃ」


 失敗だった。チキショォ!!



・・・



 と、そこで諦めたので、それ以降は特に込み入った会話もなく、ホテルに到着した。


 このホテルは、町中唯一のビジネスホテルである。

 そして、この町唯一の駅「歌原南公園駅」の隣に位置する物件でもあった。

 この町唯一の駅なのになんで歌原駅とか、歌原町駅とかなのではないかは定かではない。

 因みに、歌原南公園は、この駅から北に徒歩15分の遊具のない広場である。


「お客様、チェックインでございますね。こちらにお名前をお願いします。」


 スルスルっと名前を書き、手続きを済ませる。


「はい。では、ご部屋は506号室になります。こちらがカギです。ご朝食はどうなさいますか?」

「あ、結構です。」


 即答だった。朝は何かグルメが食べたいのだ。



・・・



「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


 ベットに潜ってまず絶叫を叫ぶ。隣が居ないか心配したが、無用のようであった。

 と、一度叫んで我に返ったのか、ふとあの佐藤さんの曖昧な返事に行きついた。


「あれは多分、というより絶対・・・」


 あの謎の高月給、職員の年齢の異様な若さ、そして佐藤さんのあからさまな態度。

 やっぱりこの郵便局には何かあるらしい。

 

 まず、あの高月給。僕の所にハローワークでだ、あんないい条件の職件が本当に来るだろうか。

 そんなはずない。もしコネとかが無いならば。


 そして、あの佐藤さんの態度だ、あからさまに3年前の時だけ話を逸らしていた。

 それは偶然なんだろうか。勿論嘘をついていなければの話だが。




「ああああああああああああああ、俺は・・・」


 隣が居ないので、ということはお構いなしに、


「絶対何か騙されてるわああああああああああああああああああああ」


 ベットの上で絶叫していた。

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