第4話 「あれ、こんなに緩いっけ?」 ~the first courtesy~
2017/04/06 改行修正しました。
一階に降りた僕たちは、局長、銀橋さん、以下知らない人3名ほどと対面することとなった。
「さてと、これで全員揃ったな。」
局長が切り出す。
合計で1、2、3…7人か、この規模は多いのか少ないのかよく分からない。
「では、紹介しよう、こいつが新しく我が歌原郵便局に所属することとなった、冬海信君だ!」
結構仰々しく紹介されたので、少し引いてしまった。
「あ、はい。本日付で歌原郵便局に所属します、冬海信と申します。
歳は28歳で、大学を卒業した後、6年ほど、様々な職業に就き、あらゆるジャンルの仕事に触れてきました。
その経験を生かして、この歌原郵便局の仕事に打ち込みたいと思います。よろしくお願いします。」
一応はこれでいいだろうと、簡単にだが挨拶をする。
自分でも(6年ほど・・・)の部分には言った後、周りの目が変わってしまうのではと不安になった。
しかし見る限りは、どうやらそんなことも無かったらしい。
こういう時に挨拶文を用意しない自分への後悔が押し寄せてくる。
局長の時?考えてすらいなかったよ。
「では、銀橋君から自己紹介をしていってくれ。」
やはり仰々しく、局長は銀橋さんを指さし、先に進めていく。
八百屋の大将にしか見えないんだよな・・・いや、偏見か。
「はい。さっきも言いましたが、私が銀橋今日子です。趣味はムツムツです。
ここでは窓口業務を主に行っています。あと言うことは・・・どうぞよろしく。」
ええええ、ちょっと短すぎやしませんか?あれ?こんなもんなのか、あんまりこういった職業は絡んでなかったからよく分からない。
それにしても、何かに夢中だったのムツムツ(最近流行しているスマホゲーム、ついこの間からゲームセンターにもその御筐体を晒すこととなった、運営は○○○○)だったのか。
「じゃあ、次、俺っすね。」
次に自己紹介をした男は、僕より一回り小さく、年も僕より低いだろう。
ガキ大将に仕える小坊主のような印象を受ける、そんな青年であった。
「俺は橋本祐介って言うっす。歳は26歳、冬海さんより2歳下っすね。
俺は大学を卒業した後すぐここに入社したので、あんまり他の業種については詳しく知らないんですが、俺はこの職業に誇りを持っているっす。
あっと、何しているか言ってませんでしたね、ここでは主に配達業務を担当しているっす。夢は、郵便配達で人をたくさん笑顔にすることっす!どうぞよろしくっす!」
やけに元気な少・・・男だった。それにしても4年も定職についているとは、それこそ僕が尊敬するべき相手なんであろう。あっ、皆さんそうなのだろうか。
「じゃあ、私・・・かな?」
肩までいかない、これをショートというんだろう、黒髪の女性が手を挙げた。
見た目だけで言うと10代後半に見える。
「私は春風詩乃です。よろしくお願いします。
ええっと、年齢は・・・内緒ってことで。
私は何度か転職した後にここに所属しました。もう入って5年になるかな~。
私は渉外業務が主だけど、わからないことがあったら私に何でも聞いてね。」
おお・・・あざとい、いい感じにあざとい。
あと、まだ渉外業務なんてあったんだな。どの時代にもやはりそういったものはあるのだろうか。
「次は私ですね。」
次の人は、なんともなナイスガイだった。外人だろうか。肌が白い。
エリートっぽいと言い換えてもいいかもしれない。
「どうも、初めまして、冬海さんがここに来てくれてとても嬉しいです。
私はジャック・ジョージと申します。歳は30になります。
ここに勤め始めたのは今から6年ほど前ですね。
日本にやって来た当初、留学ついでにとアルバイトをしていたところ、その伝手でこの郵便局に勤めることとなりました。
私も橋本さんや、佐藤さんと同じく主に配達業務を担当しています。ですので困ったことがあったら私たちに相談してください。」
一番丁寧な挨拶だな~、と感じたのは僕だけであろうか。
「ええっとぉ、私もいりますかぁ?」
おずおずと佐藤さんが局長に聞く。
「勿論であろう、早くしなさい。」
急かされたように、佐藤さんは緊張した面持ちで話し始めた。
「ええっとぉ、私は佐藤春乃と申しますぅ。年齢は27歳でぇ、あ、知っていましたねぇ。
この郵便局にはぁ勤めて3年くらいになりますぅ。
ええとぉ、私も配達業務を担当していますぅ・・・・よ、よろしくお願いしますぅ。」
何を言っていいのかわからない様であった。佐藤さん、ファイト。
と、心の中で言ってみる。が、この性はどうやらどこでもそうらしい。他の5名は暖かい目線で見守っていた。
それにしても、ここの職員は若い人が多いな、10年以上働いているのは、どうやら局長だけのように思える。
これはあとで佐藤さんに詳しく聞いておこう。
・・・
「よし、挨拶も済んだな。君はこれから佐藤君の下で働いてもらうことになる。
よそしく頼むぞ、佐藤君。」
「ええ、困りますよぉ、そんな、まだ自分の業務でもぉ、精一杯ですのにぃ。」
あからさまに佐藤さんは動揺している、事前に伝えていなかったらしい。
すると少・・・橋本さんが肩を叩き
「大丈夫っすよ、いざとなれば俺たちもいるっすから。」
と、後ろにはたくさんの笑顔が、ウワータノモシイナー。
「まあ、これは教育係が居ないから仕方ないんだ、すまないね。」
どうやら、そういう事情的な何かがあるらしい。
もっとも、僕は佐藤さんにつくのは寧ろ嬉しいのだが。
あ、いや、別に狙っているとかではないのだ。どこぞの直結厨とは違うのだ。
佐藤さんも、こう言われてしまうと、というより、佐藤さんだからこそ、空気を読んでしまったのだろう。
「あ、はいぃ。分かりましたぁ。よろしくですぅ。」
と、僕にいかにも不安そうな顔で挨拶を交わしてきた。
「は、はい。よろしくお願いします。」
僕も、気後されてしまうほどには。