なろう小説の闇 ~この作品には主人公がピンチになる描写が含まれて居ます~
俺は小説家になろうで連載されている人気作品、「俺がチートで彼女にモテモテな件について」の主人公だ。
ブクマ20000超えの大人気作だ。
俺には彼女がいる。
道でゴブリンに襲われているのを助けたら一目ぼれされた少女だ。
しかもその少女はお忍びで城の外を散歩していた王国の王女だったというありがちなオチ付き。
社交的で美人で可愛いんだぜ!
どうだい?
羨ましいだろ?
でも、結構大変なんだぜ!
何が大変かって?
そりゃ読者だよ! 読者!
最近の読者は酷いからな。
ヒロインは処女以外無理!って言われるから、俺は彼女としたい事も出来ない!
付き合って3年目でプラトニックな恋とかリアルじゃありえねーだろ!
おまけに、ヒロインは俺以外と関わってはいけないって読者ルールが有るからな。
そのせいでトップページに「ヒロインが主人公以外の男としゃべる可能性があります」なんて訳わからない注意書き書く羽目になってるし。
不意打ちで手でも繋がれたら、「こんなふしだらなヒロインの話なんて読みたくありません!」とか「ビッチ死ね!」とか感想書かれまくりだもんなー。
俺が出かけてる間にヒロインが他の男と寝取られでもしたらその瞬間に4桁単位のブクマが吹き飛ぶありえない世界。
4桁もブクマ飛んだらショック死するわ!
だから俺は常時他の男が王女にちょっかいを出してこないか影から見張って無いといけない。
主人公の俺がヒロインの警護って、衛兵以下の扱いっていうかどう見てもストーカーだろ?
勇者のやる仕事じゃねーよ!
おっと、そんな事を愚痴っていたら、街道を城に向かって歩いている俺の目の前にスペシャルハイオークさんがやって来た。
この敵めっちゃ強いんだぜ。
気を抜くと俺でもワンパンで殺される。
でもな、俺は負ける訳にはいかないんだ。
何故かって?
そりゃ読者だよ! 読者!
最近の読者は酷いからな。
主人公の俺がワンパン喰らって吹き飛ばされただけで「勇者のくせに弱すぎ。修正してください!」とか、「こんな弱い勇者見たくないので、もう読みません!」とか感想書いて来やがる頭おかしい奴らばかりだし。
そのせいで、トップページに「この作品には主人公がピンチになる描写が含まれて居ます」と注意書きまでしてる始末なんだぜ。
どんだけ最近の読者はメンタルが弱いんだよ。
こんなしょーも無い注意書き書きたくねーよ!
はあ。
俺は読者が読んでいない隙を縫って寝ないで開発した新必殺技、「グレートブリテンハイスライサー!」でスペシャルハイオークさんを一撃で倒す。
技の習得で努力をしてる場面を見せたら、読者に愛想つかされるのがなろうだからな。
俺は読者の見てないとこで必死に訓練して技を覚えたんだ。
これが〇ャンプ全盛時代だったら技の取得だけで更新4回はイケたんだけどな~。
時代の移り変わったなろうが舞台じゃ努力はストレス以外の何物でもないらしい。
ずざーん!
と小気味いい音を立ててハイオークさんは倒れ、首をぴょーん!とどこかに飛ばして息を引き取った。
なむさん。
通行人から拍手が巻き起こった。
で、俺はハイオークの元へ行くと、解体を始める。
何をしてるかって?
こいつを食うんだよ。
なんでこんな化け物食うかって?
そりゃ読者だよ! 読者!
最近の読者は酷いからな。
俺だってこんな化け物食いたくないんだよ!
でもな、食わないでいてみろよ。
「魔物を殺したのに食べないなんておかしいです!」
「食べ物を粗末にする小説なんて読みたくありません!」
と言って評価1:1を入れていくんだぜ!
あり得ねーよ!
俺はカッチカチで糞臭くて糞不味いスペシャルハイオークさんを不味いのが解っていながら調理。
おまけに笑顔で料理番組顔負けの食レポをせにゃならん。
「筋肉質な見た目と反してすごく柔らかい」
「俺の焼き方がいいのかもしれないがすごくジューシーだ」
「神戸牛にも負けない美味さだな! これならどんぶり飯何倍でもいけるわ!」
これやらせだろ!
こんな化け物が美味い訳ない!
本当にオークが美味かったら豚や牛の代わりに、このオークを育てねえ?
それ考えればこんなものが美味い訳ないってのが解ると思うんだがな。
あ、やべ!
変なお肉食ったからお腹痛い。
下痢だ。
漏れる……。
やば、歩いたら出る!
ずきゅーん!
どぎゅーーん!
俺の腹の奥底で竜王様が巨大なハンマーを打ち付けたような衝撃が!
も、もう歩けない。
ここでしてしまうか……。
でも俺勇者だぞ。
こんなとこで野〇ソしてるのがバレたら読者に罵倒の感想を書かれまくる!
「変態ですか! 変態ですか!」
「キモいんですけど! キモいんですけど!」
「野〇ソとかそんな下ネタ小学生でも書かないですし! おすし!」
俺の尻穴がブレークショットしない様に慎重にすり足で王国へと足を進める。
そこに現れる幼女。
天真爛漫な笑顔が地獄の業火に苛まれる俺の心を癒し……。
ちょい待て!
こいつよそ見して前を全然見てねー!
おい!
ちょっと!
なんで俺のみぞおち目がけて突進してくるの?
おい!
すとっぷ!
ちょい!
やめろーーー!!!
「この作品には主人公がピンチになる描写が含まれて居ます」
ネタですよ