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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
3章 ダクリア2区編
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第74話 行動開始

 話し合いを終えたセイヤとバジルは小会議室から出ると、外にはセイヤたちユアたちが待っていた。


 「セイヤ……」


 不安そうにセイヤを見つめるユア。そんなユアに、セイヤは決まったことを伝える。


 「今から俺らは暗黒領に行き、モカ=フェニックスの救出作戦の先遣隊を務める。俺らの後から十三使徒の部隊が援軍として駆けつけるため、俺らの役目は最低でも援軍が来るまで踏ん張ることだ」


 セイヤの報告を聞き、全員の表情が引き締まる。


 「わかった……」

 「わかった!」

 「わかったわ」

 「わかりました」

 「了解です」


 そんな中、一人の少女が不安そうな表情を浮かべた。


 「あの、先輩……」


 セイヤのことを心配そうに見つめるのはナーリだ。どうやら暗黒領と言う単語を聞き、不安になっているようだ。セイヤはそんなナーリの頭を撫でながら言った。


 「心配するな、ナーリ。俺らが必ず助ける」


 本音を言えば、自分も連れて行ってほしい。だけど、自分が行ったら足手まといになってしまうのはわかっていた。


 だからこそナーリは元気よく返事をすることにした。それが自分が今できることの中で、一番だと思ったから。


 「はい! お願いします」

 「任せろ」


 セイヤたちはその後、バジルに案内され教会の奥にある部屋へと連れていかれた。そしてその部屋にはあるものが準備されていた。


 「これは……」

 「その服装じゃ戦いにくいと思いまして、こちらで服を準備させてもらいました」


 全員が部屋にあるものを見る。それはアルセニア魔法学園の制服に似ているがどこか違う制服だ。色が白いアルセニア魔法学園の制服とは違い、黒をベースにしている制服。


実はこの制服、魔法学園の制服よりも機能がすごかった。


 対ダメージ、耐熱などにも優れていて、戦闘アシスト機能なども多数搭載されているのだ。本来は十三使徒の部隊に入らないと着ることができないのだが、今回は緊急事態のため、バジルが用意したのだ。


 六人は試着室で制服を着る。制服は六人の体とサイズが合っていて、とても着心地がよかった。


 セイヤはいつもと違い、黒い制服を着ると、急に大人っぽくなり、大人の色気というものを出している。

 

 ユアは黒い制服により、普段に増して白い髪がきれいに輝いていた。

 

 リリィは子供が大人っぽく着飾ろうとしているが、結局、子供にしか見えないといった感じだ。


 セレナは黒い制服よりもスカートから見える黒いニーソが存在感を出している。


 モーナは唯一、スカートの下にタイツを履いており、妙にエロイ。


 アイシィは良くも悪くも普通だった。


 制服を着たセイヤにバジルが話しかける。 


 「準備はできたようだな。表に馬を用意しておいた。頼んだぞキリスナ=セイヤ」

 「ああ」


 セイヤたちは教会の前に移動する。


 途中、広場を通った際に、先ほど広場いた大人たちがセイヤたちのことを驚愕のまなざしで見ていた。


 なぜなら先ほどまで学生だと心の底で馬鹿にしていた存在が、十三使徒の部隊しか着ることのできない黒い制服を着ていて、しかもバジルと一緒に行動しているから。


 セイヤたちはそんな大人たちを無視して、表へと出る。そこには六頭の馬が用意されていた。


 六人が各々馬に乗ると、セイヤが大きな声で言う。


 「行くぞ」

 「うん……」

 「うん!」

 「ええ」

 「わかりました」

 「はい」


 五人はセイヤの言葉に応え、馬を走り出して教会から駆け出す。目指すは暗黒領の先、ダクリア大帝国だ。






 バジルはセイヤたちのことを見送ると、すぐに教会の中の部屋へと戻り、映像投射型の念話石で、聖教会の七賢人へと繋いだ。七賢人はちょうど会議中だったため、すぐにバジル連絡に出る。


 「どうした、バジル=エイト?」


 一人の男がバジルに話しかける。その男は五十代の男性で、その眼には鋭さが宿っている。


 バジルはすぐに本題へと入った。


 「モカ=フェニックス誘拐の件はお耳に届いているでしょうか?」

 「ああ、すでにお主の部隊を派遣した。速やかに解決せよ。失敗は許されぬぞ」


 男はバジルを睨みながら言う。バジルは男たちに対し、報告を上げた。


 「その件なのですが、どうやら犯人はダクリアの人間の可能性が高いという結果になりました」

 「それは本当か?」


 声を荒げながらそう言ったのは先ほどの男性とは違い、六十歳くらいの男だ。その男には、先ほどの男のような鋭い目はない。


 「本当です。それに伴い、十三使徒を後二名ほどの出動を要請します」

 「十三使徒を二名だと? ただでさえ、すでに一人を派遣しているというのに、まだ二名を出せというのか」


 男は声を荒げる。それも無理のないことだ。普通に考えて、十三使徒を三名も派遣するなんて前代未聞のことだ。


 しかも十三使徒が十三使徒を要請するのも珍しい。バジルはそれほどまでに、この事件を重大視していた。


 「バジル=エイトよ。今回の事件はそんなにも重大な事件なのか?」


 今度は七十代ぐらいの老人がバジルに話しかける。


 「はい。犯人の目的が『フェニックスの焔』であることを考えると、こちらもそれ相応の戦力が必要かと思われます。場合によっては、戦闘ではなく、戦争になりえるかもしれません」

 「わかった。新たに十三使徒を二名派遣しよう」

 「それは!」


 老人の判断に、男が声を荒げる。だが老人は気にしない。


 「ありがとうございます」

 「バジル=エイト。そなたは、そなたの部隊が到着し次第、すぐにダクリア帝国へと向かえ。援軍はすぐに派遣する。場合によっては戦争になっても構わん。  

  『フェニックスの焔』だけは絶対に取り戻すのだ。最悪の場合は奪われないよう殺せ」

 「御意」


 通信はそこで切れた。いくら『フェニックスの焔』が重要だからと言って、バジルはモカを殺す気はない。


 それに七賢人には報告していないが、フェニックス家の長女まで派遣している。それはつまり、救出しか頭にないということだ。


 バジルはその後、自分の部隊が到着する前にアクアマリンへと出向く。


 もちろん祭りを楽しむわけではない。ライガーを探すためだ。もしかしたら、今回の依頼を言ったらライガーはバジルに対して怒るかもしれない。


 けれども、それもバジルの仕事だ。関係のない魔法学園の生徒巻き込んでしまったのは紛れもない事実なのだから。


本当なら、ライガーにこの依頼を頼みたかった。しかし特級魔法師を暗黒領に派遣する際には何かと手続きがあり、大変なのだ。今回は時間との戦いでもあるので得策ではない。


 バジルは憂鬱になりながら、ライガーのことを探した。


 いつも読んでいただきありがとうございます。次のお話からいよいよ暗黒領に入る予定です。良かったら次のお話も読んでみてください。

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