第61話 いざ決勝戦
「さーていよいよ決勝ブロック決勝戦が始まります!」
実況の女子生徒の声が響く。
アルナたちを見事撃破したセイヤたちは、続く二回戦でも見事勝利を収め、決勝戦を迎えていた。
「実況は私、ニルスが務めさせてもらいます。そして解説には、なんと、なんとあの御方! 聖教会十三使徒、序列八位、バジル=エイトさんです!」
「よろしくお願いします」
ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ
会場にいる、どの学生も歓声を上げる。それも仕方がないことだ。なにせ、あの聖教会十三使徒が解説として学園に来ているのだから。
十三使徒は普段お目にかかれない、いわば芸能人のような存在。しかも、バジルはイケメンのため、その人気はアイドルさながらである。
「バジル様はこの学園の出身ということで、学園長からぜひに、というお話が来たということです」
「まあそうですね。できればその、様はやめていただけませんか? どうしても慣れないので」
「で、でも」
バジルの言葉に困惑するニルス。
「今は十三使徒というよりも、この学園のOBということなので」
「そ、そうなのですか。では、バジルさんで」
「はい」
ニルスが緊張した様子で、バジルのことを「さん」付けで呼ぶ。バジルはそんなニルスに笑顔でうなずいた。
そしてその笑顔に、ニルスだけでなく、観客たちまでもが歓声を上げる。
バジルがなぜ解説をしているかというと、別にOBだからということだけではない。一回戦で学園長のレオナルドが使った魔法を、決勝の舞台で再び使わせないためだ。
本当なら二回戦から解説として見張りたかったバジル。しかしレオナルドがそれを許さず、決勝だけになったのだ。
レオナルドが、セイヤのことを調べていることはバジルも確信している。別に証拠があるわけでもないが、セイヤに興味があることぐらいはわかる。
それに、セイヤには精霊の類がついている。それもレオナルドの興味を引いたのだろう。
さすがにバジルも、最初にリリィを見たときに驚いた。なぜなら、めったにお目にかかれない精霊や妖精が街中の、それも学園の大会にいたのだから。
もしバジルがセイヤの秘密を知らなかったら、すぐに聖教会に報告していただろう。しかしバジルはセイヤがリリィと完全契約していることを知っている。と言っても、まさか学園に通っているとは思わなかったが。
だが、レオナルドはセイヤの秘密を知らない。ということは、セイヤの秘密を暴くために、この決勝戦で横やりを入れてくる可能性が高かった。
「ここで選手入場です! まずは彗星のごとく現れ、次々と相手を倒してきたチーム! 登録番号86!」
ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ
観客が再び歓声を上げる。
彗星のごとく現れ、次々と勝ってきた実力もそうだが、その歓声はどちらかというとユアとリリィに向けられていた。それもそのはず。絶世の美少女が二人もいるのだから。男子生徒たちが叫ぶのも無理はない。
しかし、それだけではなく、女子生徒の歓声もあった。それはセイヤに対してだ。
セイヤの、予選ブロックでユアたちに戦わせずに自分一人で戦う姿や、決勝ブロックで強敵にも関わらず自分が先陣を切って戦う姿に、「自分もセイヤ様に守られたい」という声が出始め、ひそかに人気になっていたのだ。
「対して、相手はもちろんこのチーム! 当学園最強のチーム! チーム生徒会だぁぁぁぁぁぁぁ」
ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ
生徒会の登場で会場が鎮まるかと思ったセイヤだが、それは杞憂に終わった。いくら生徒会が避けられているといっても、戦いになると人気らしい。
「さて、両チームが登場しました。バジルさん、注目はやはり生徒会のメンバーでしょうか? 三人の連携は特級魔法師にも及ぶと言われていますが」
「ええ、そうですね。でも相手チームにも注目ですね。あの少年の剣術はかなりのものですよ」
「なるほど」
実況席からそんな声がする。少年と言ったら、二つのチームの中で一人しかいない。もちろんセイヤのことだ。当のセイヤは、バジルを見て昨日のことを思い出す。
昨日、セイヤが二回戦を勝って家に帰ると、ライガーの部屋へと呼ばれた。
セイヤがライガーの部屋に行ってみると、そこには真剣な顔をしたライガーとバジルの話す姿があった。
セイヤも座るように言われ、ライガーの隣に座ると、バジルが話し始める。
その内容は、セイヤが一回戦で戦ったアルナに豹変についてだった。バジルとライガーによると、それは学園長レオナルドの『憑依』という類の魔法らしい。
自分が契約している精霊を憑依させ、体の支配権を奪う魔法。それはレオナルドが得意とする分野だった。
セイヤもセナビア魔法学園時代に、座学以外の知識もいろいろ求めていたため、存在自体は知っていたが、見るのはアルナの例が初めてだ。
バジル曰く、レオナルドの目的はおそらくセイヤの正体であり、これからも横やりが入る可能性があるらしい。
といっても、あの魔法は対象に強い肉体が必要なため、二回戦の相手には使えなかった。となると、残るは決勝で当たる生徒会のメンバーになる。
仮に生徒会に行使された場合、その力はアルナの数倍というのがバジルの見解だ。そして、それを止めるには闇属性が必須であり、最悪の場合、闇属性の魔法を使ってでも生徒会の安全を優先されてほしい、とバジルに頼まれていた。
バジルは外から、セイヤは内から警戒することになり、いざという場合は闇属性を使う。その後の対処は、バジルとライガーが引き受けるということで、昨日の会議は終わった。
セイヤはそのことを思い出しながら、目の前の相手を視界にとらえる。このことはユアたちには言っていない。
そのため、二人は何事もなく決勝戦を戦うだろう。セイヤも何事もない限りは、普通に戦うつもりである。
すると、セイヤの方にセレナが歩いてくる。開戦前の健闘を称えあうにしては、非友好的な視線を向けられるセイヤ。
案の定、セレナは友好的なことは言わなかった。
「まさか本当に決勝まで来るとはね。ロリコンにしてはやるじゃない。でも、ここでおしまいよ。私たちがあなたに勝つわ」
「望むところだ」
二人の会話で両チーム戦闘態勢に入る。
「決勝ブロック決勝戦開始」
審判のアナウンスで決勝戦の幕が上がった。




