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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
2章 アルセニア魔法学園編
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第55話 生徒会

 「なんであなたがここにいるのよ?」


 セレナがセイヤのことを見て固まる。


 「なんで、って、呼ばれたから」

 「呼ばれたって、誰に?」

 「ナーリに」


 ナーリの名前を聞いた瞬間、セレナが激しく動揺し始めた。


 「あっ、あっ、あなたは、リリィちゃんじゃ物足りず、あの子にまで手を出したの!?」

 「はっ?」

 「信じられない。このロリコン」


 セレナは激しく動揺しながらセイヤのことを指さすが、その腕はかなり震えている。セイヤがどうしようかと考えていると、救世主が登場した。


 「お姉ちゃん? どうしたの? そんなに震えながら先輩のことを指さして」


 ちょうど資料を取りに行っていたナーリが、帰って来た。


 「ナッ、ナーリ。先輩って、この男が?」

 「うん。そうだよ」


 セレナの動揺は、先ほどよりも激しくなっていた。


 「この男は婚約者がいるにもかかわらず、その妹と不倫するロリコンよ?」

 「知っているよ」

 「えっ?」


 この時、セレナの頭の中では、婚約者や愛人がいるのを知っていながらも、セイヤに抱きつくナーリの姿が浮かんでいた。


 「せ~んぱい。たとえ婚約者や愛人がいても、私を一番に愛してくださいね」

 「ああ、もちろんだナーリ」


 こんな感じである。


 「だめよ、ナーリ。戻ってきて」

 「何が?」

 「そんな男、駄目よ」

 「どういうこと?」

 「だからお付き合いするなら、もっと普通のお付き合いを」

 「待って、お姉ちゃん勘違いしているよ。先輩とはそんな関係じゃないから」


 ナーリがセレナの誤解を解こうとする。


 セイヤはというと、ナーリがセイヤのロリコン説を否定せず、知っていると言われたことに心にダメージを受けていた。


 ナーリが本音を出すと怖いと思うセイヤであった。


 「違うの?」

 「うん。先輩はユアさんの婚約者でリリィの愛人だよ。そしてリリィは私の友達」

 「でも愛人って……」

 「リリィがそれでいいって言っているなら、いいじゃん」

 「でも……」

 「どうかしたの、セレナ?」


 姉妹喧嘩が始まろうとしていたその時、ナーリの部屋とは違う部屋のドアが開かれ、二人の少女が姿を現す。


 一人は緑の髪を背中までウェーブにした、大人びている少女。

 もう一人は小柄な無表情の少女。短髪の髪は水色で瞳の色も水色だ。


 ナーリは部屋から出て来た二人に気づくと、挨拶をする。


 「あっ、モーナさん、アイシィさん」

 「あらナーリちゃんこんにちは」

 「久しぶり。ナーリ」


 セイヤは心のダメージを忘れ、部屋から出てきた二人へと視線を移す。


 「ナーリ」

 「あっ、先輩は初めてでしたね。こちらの緑の髪の方はモーナ=テンペスターさん。アルセニア魔法学園の生徒会長です。年は先輩の一つ上になります」

 「よろしくお願いします」


 モーナと言われる少女は、おっとりとした雰囲気を纏っている。整った顔に、豊満なバストを持つ、まさにお姉さんと言った感じだ。


 セイヤはこの少女が頼れる生徒会長なんだろう、と思った。


 「そしてこちらの水色の髪の方がアイシィ=アブソーナさんです。先輩の一つ下で、生徒会の書記を務めています」

 「よろしく」


 アイシィは無表情だが、その顔からはセイヤを警戒していることがわかる。きれいな水色の髪の少女は小柄な幼女体型をしていた。


 「そして、こちらがキリスナ=セイヤさんです」

 「あなたがセレナの言っていた、不倫のロリコンさんですね」」

 「女の敵」


 ナーリがセイヤを二人に紹介すると、モーナの方は比較的やわらかい態度で接してくれるが、アイシィの方は侮蔑のまなざしで見ていた。


 「違いますよ。それはお姉ちゃんが」

 「そうよ。二人とも。この男が私たち生徒会の敵よ。いますぐ処罰してあげるわ」


 セレナはそう言うと、魔力の練成を始める。


 「お姉ちゃん!?」

 「ちょっと、セレナ?」

 「セレナ先輩」


 突然魔力の練成を始めたセレナをあわてて止めようとする三人。しかし、セレナは三人の言っていることを気にも留めず、魔力練成を続ける。


 ナーリはどうしようと慌てるが、生徒会の二人はすぐに説得をやめて、セレナの魔法発動と同時にその魔法を打ち砕こうと、魔力練成を始めた。


 「さっ、三人とも、やめてください」

 「大丈夫よナーリ、このロリコンは私が処罰するから」

 「セレナ、落ち着きなさい」

 「そうですよ、セレナさん」

 「大丈夫よ」


 セレナは説得に聞く耳を持たず、魔力をどんどん練成していく。


 もしセレナが魔法を発動したら、この家に何かあるかもしれない。そしてそのセレナを止めるために、モーナとアイシィが魔法を発動すれば、最悪の場合は家が崩れる。


 だが、二人がうまくやれば、被害をゼロにできる。しかし、成功率はよくて五割と言ったところだ。


 「先輩……」


 ナーリはセイヤにどうしようと言った目を向ける。


 「大丈夫だ」


 セイヤはナーリの頭の上に自分の手を乗せ、頭を撫で始め、ナーリのことを安心させた。


 そして次の瞬間、躊躇いもなく、闇属性の魔法を発動する。


 セイヤは心の中で『闇波』と呟いた。すると、生徒会の三人が練成されていた魔力が、一瞬にして消滅する。


 「えっ?」

 「これは?」

 「?」


 突然のことに、生徒会の三人は何が起きたか理解できてないようだ。それもそのはず。セイヤは闇属性の魔法を使ったのだから。初めての感覚でも仕方がない。


 セイヤがなぜ闇属性の魔法を使うことを決心したのかというと、事の発端はセイヤであり、セイヤが今日ここに来なければ起きなかった事件であるからだ。


 同時に、リリィの友達であり、自分にとっても大切な後輩が不安がっているのだから、使うのは当然である。


 「お姉ちゃん、先輩はいい人だよ」

 「でも、」

 「でもじゃないよ。お姉ちゃんはあとちょっとで、家を壊すところだったんだよ」

 「うっ……ごめん」


 ナーリに説教されるセレナはどこか面白かった。そんな二人を見ながら笑っていたセイヤに、モーナが近づいてくる。


 「今のは、あなたが?」

 「まあな」

 「あのようなこと、初めての体験です。魔力が消されるなんて、いったいどうやって?」

 「秘密だ」


 何をしたかと聞かれたところで、セイヤが闇属性と答えるわけがない。


 「ふふ、そうですよね。なにはともわれ、今回の事は感謝致します、キリスナ=セイヤ君」

 「どうも」


 セイヤがそういうと、モーナは笑ってセレナのところへ行き、ナーリと一緒に説教を始める。


 アイシィもセイヤのところに来て、「感謝します」と一言言って、すぐにセレナのところへ戻る。


 「セイヤ……」

 「セイヤ!」


 セイヤが声のした方を見ると、そこにはナーリの部屋から出てきたユアとリリィの姿があった。二人はすぐにセイヤのところ来て聞く。


 「闇属性使った……?」

 「ああ。でも大丈夫だ」

 「わかった……」


 どうやら、二人はセイヤの闇属性を感じて、部屋から出てきたらしい。そんな二人に気付いたセレナたちが、セイヤに聞いた。


 「もしかしてロリコンの婚約者ってユアさん?」

 「そう……セイヤは私の夫……」


 セイヤに聞かれた質問なのだが、なぜかユアが答える。


 しかし、セレナはそんなこと気にするよりも、セイヤが特級魔法師一族の婚約者と言うことに驚いていた。それは、他の生徒会メンバーも同じらしく、セイヤのことを驚きの表情で見つめていた。


 「まさかあなただったとはね。特級の婚約者が」

 「なるほど、セイヤ君の力も納得ね」

 「ライバル」


 生徒会の面々は、なぜかセイヤのことを知っているらしい。


 「どういうことだ?」


 セイヤが聞くと、モーナが答えた。


 「今、学園で噂になっているのです。今年の選抜は荒れると。生徒会と、特級の婚約者たちのチームによって」

 「なるほど。それで?」


 答えたのはセレナだった。


 「あなたたちには絶対勝たないといけないのよ。それが、生徒会が最強の証になるから。それにロリコンには負ける気ないし」


 戦意むき出しのセレナ。


 「悪いが、勝つのは俺らだ」

 「ロリコンには負けない」


 アイシィが静かに言う。


 「まあ、戦うことがあれば、ですけど。セイヤ君のチームと当たるとしたら、最後の選抜決定の戦いになるので、お互い頑張りましょう」

 「ああ」


 生徒会の面々はそう言い残して、セレナの部屋へ戻っていった。


 「セイヤ……」

 「勝つぞ。ロリコンって言われたまま、黙っておくことはできない」

 「うん……」

 「うん!」

 「じゃあ私の部屋で作戦会議ですね」

 「頼む」


 セイヤたちもナーリの部屋へと戻り、作戦を立てるのであった。


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