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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
2章 アルセニア魔法学園編
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第50話 予選開幕

 セイヤは帰宅すると、ライガーにアルセニア魔法学園の代表予選に登録したことを伝えた。すると、ライガーが難しそうな顔をして言う。


 「いくらおまえでも、闇属性なしじゃきついだろ?」

 「まあな。それに詠唱も入れるから面倒だ」


 セイヤの言う通り、学園では詠唱が必要だ。もし無詠唱なんかをしたら、すぐに注目されてしまい、有名人になってしまう。


 そうなってしまえば、聖教会に目を付けられてもおかしくはない。


 しかしセイヤのそんな考えは杞憂に終わる。


 「それに関しては大丈夫だ。ユアはもう、無詠唱ができることで通っているから、今更うちの一族から無詠唱が増えたことで、問題にはならん」

 「まじかよ……」


 ライガーの理由に唖然とするしかないセイヤ。ユアが学園で無詠唱をしていたことにも驚きだが、その無詠唱が増えても全く気にしないライガーにも驚きである。


 十三使徒のバジルは詠唱省略で選ばれていた。それなら、詠唱省略の上を行く無詠唱は、もっと貴重なスキルのはずである。しかし、それを隠そうともしないライガー。


 一体何を考えているのか、セイヤには理解できなかった。


 だが、無詠唱でいいのなら、それに越したことない。


 「無詠唱でいいんだな?」

 「ああ。それとお前らのところの生徒会は強いらしいから気を付けろよ」

 「わかっているよ」

 「そうか、ならいい」


 セイヤはライガーに報告を終えると、部屋から退出した。


 「さて、帝王はどうするのかね~」


 ライガーの部屋には、そんな声が響いたが、その声を聴いたのはライガーだけだった。






 翌日、アルセニア魔法学園では朝の連絡で各担任から予選ブロックの組み合わせが発表されていた。セイヤのクラスでの発表は、当然ヤながらユーヤによってだ


「以上が予選ブロックになります。予選ブロックの試合は今日の午後から始まります。なので皆さん頑張ってください。午前中は全時間作戦会議になりますので、各チーム有意義に使ってください」


 担任のヤユーヤがそう言い残し、教室から出ていくと、セイヤの隣に座るオレンジ色の髪の少女が話しかけてくる。


 「ねぇねぇ、セイヤ君たちは何ブロックだった?」

 「俺らはCブロックだ」

 「そうなんだ。私たちはHブロックだから戦うとしても決勝ブロックで、だね」

 「そうだな」

 「決勝ブロックで試合しようぜ、セイヤ」

 「僕たちも頑張るから」


 アルナに続き、セイヤの前に座るグレン、左斜め前に座るコニーがそんなことを言ってくる。どうやらアルナ、グレン、コニーは同じチームらしい。


 「ああ、決勝ブロックでな」


 セイヤはそう言い残して教室から出る。


 そしてセイヤに続き、ユアも教室から出た。


 その後、セイヤとユアはリリィを迎えに行き、いつものように屋上で作戦会議を始める。ナーリも作戦会議に誘ったのだが、自分は少しでも強くなるために自主練をすると言って、セイヤの誘いを断っていた。


 そのため、屋上にはセイヤ、ユア、リリィの三人の姿がある。


 「まず、予選は八ブロックに分かれて行われるから、一ブロックは大体十六か十七チームだろうな」

 「その中で総当たり……」

 「大変ね」

 「ああ」


 セイヤの言う通り、予選は八ブロックによって行われ、セイヤたちのCブロックは十六チームが組み込まれていた。そんなことを考えていたセイヤは、ある違和感を覚える。


 「ん?」


 セイヤは、なぜか今の会話に違和感を覚えた。なぜなら妙に色っぽい声がしたからだ。


 セイヤは色っぽい声の主を見てみると、そこにはいつもの子供らしいリリィではなく、妖艶さを纏った大人バージョンのリリィがいた。


 「なんでお前がいるんだ?」

 「いやん、セイヤ君酷い~。そんな言い方しなくても~」


 リリィは妖艶な雰囲気を纏いながら、色っぽく体をくねらせる。その際、リリィの大きな双丘が零れそうになる。


 大人バージョンになったリリィの制服は、奇妙なことに幼女の時とは違っていた。


 普段は校則に則った制服を着ているリリィ(美幼女)だが、大人バージョンになると、胸をはだけさせる。黒いストッキングと、大きく開いた胸元が繰り出すコンボは、セイヤにとっても刺激的だ。


 しかしリリィはすぐにまじめな顔になって答える。


 「冗談よ。私の方が作戦説明において楽でしょ? あとであの子にわかりやすく教えるから」

 「なるほど。それは助かる」

 「でしょ!」


 リリィが色っぽい笑顔をセイヤに向けると、ユアがそれに対抗し、セイヤの隣に移動して、腕に抱きつく。リリィはそんなユアの様子を見て、「あらあら」などと言いながら、空いているもう片方の腕に胸を押し当てる。


 セイヤはそんな二人を気にせず、作戦の説明を続けた。


 「予選は学園の裏手にある広大な森を七か所に分けて行われるんだよな?」

 「そう……」


 セイヤの問いかけにユアが頷く。


 予選ブロックは学園にある森を七か所に分け、学園の訓練場と合わせた計八か所で行われる。森の大きさはかなり広い。


 「ということは、場合によっては連戦もあるってことかしら?」

 「ああ、その通りだ。もし、試合が速く終われば、試合は前倒しで行われるらしい」

 「そうすると、ペース配分も大切ね」


 リリィとセイヤがそんなことを話していると、ユアが言った。


 「試合は反射魔法によって中継される……」

 「そうだったな。戦い方も考えなきゃいけないな」

 「それってかなり難しくない? 十五回も戦うんでしょ。それに決勝ブロックのことも考えると」

 「もちろん研究されるだろうな」


 試合内容は光属性魔法に分類される反射魔法によって全生徒が視聴可能だ。つまり、次戦相手の研究や、訓練生の参考にもなったりする。


 「どうする……セイヤ……?」

 「とりあえず、予選は俺とユアを中心で戦う。リリィはなるべく戦わず、もし戦う場合でも、弱い水魔法を使って力を隠してくれ」

 「わかったわ」


 セイヤは学園でもあまり力を知られていないリリィを決勝ブロックまで温存し、魔法などが知られているユアを中心に予選ブロックは戦おうと考えた。


 「俺はホリンズと身体能力上昇系の魔法を使い、スピードタイプの双剣使いになる。『纏光(てんこう)』は使わないから、かなりきつくなると思う。だからユアにはサポートを頼みたい」 

 「わかった……」


 セイヤも予選ブロックでは力を隠す予定だ。


 「次に作戦だが、予選ブロックは森だ。木の陰から相手の背後をユアのユリアルで狙う。弓のユリアルなら遠距離からの攻撃が可能なはずだ。それで倒せなかった場合は、俺が囮になるから二人は急いで離脱しろ。

  確実に相手を一人消してから、近接戦闘に持ち込む。リリィはユアに付いて、力を使わないように」

 「わかった……」

 「わかったわ」


 三人はその後も新たな作戦を考えながら、午後から始まる予選ブロックに備えた。四時間目の時間に少し早い昼食を三人をとり、三人は会場入りをする。


 セイヤたちが着くと、C会場にはすでに選手たちが集まっていた。その中に、親衛隊の姿もある。


 ちなみに、会場入りの際だが、リリィはすでに子供バージョンへと戻っている。昼食までは大人バージョンだったのだが、さすがに会場ではまずいので変わっていた。


 子供バージョンのリリィもしっかりと作戦を理解している。


 昼休み終了のチャイムが鳴ると、会場に二人の教師が姿を現した。一人は身長の高い若い男、もう一人は二十代後半のクールそうな女性。


 若い男性が教師が選手たちの前に出て、予選ブロックの説明を始める。


 「ええ、皆さんこんにちは。今回この予選Cブロックの審判を務めるセランと言います」

 「同じくナジェンダだ」


 自己紹介を終えると、セランが小さな箱を取り出して、説明を続ける。


 「この箱の中には皆さんの各対戦カードが書かれた紙が入っています。この箱の中から私とナジェンダ先生が交互に引いていきますので、その紙に書かれていた対象チームは結界内に入り、十分後の合図で試合を開始して下さい」


 セレンが箱を全員に見せる。


 「これは運も試される。最悪の場合、十五連戦になるかもしれないからな。運は勝負においても大切だ。なので、頑張るように」

 「予選ブロックを突破できるのは勝率一位のチームだけですので、皆さん頑張ってください。それでは初戦のカードを発表します」


 セランはそう言い、箱の中に手を突っ込む。そして一枚のカードを引き、初戦の対戦カードを発表した。


 「Cブロック初戦は登録番号27と登録番号86。対象者はすぐに結界内に入ってください」


 いきなりの出番に驚くセイヤ。


 「おいおい、いきなりかよ」


 セイヤはそんなことを言いながらも、ユアとリリィを連れて、結界内に入っていく。


 セイヤたちの相手は見たところ、全員男のチームで、学年は三年生のようだ。眼鏡をかけた男に、坊主頭の大男、そして茶髪の男による強そうなチームだ。


 「見ろよ、訓練生がいるぜ」


 坊主頭の男が大声でそんなことを言う。


 「これは貰ったな」


 続いて茶髪が余裕そうに言った。そして眼鏡をかけた男がセイヤの方に来て手を差し出す。


 「いい女だな。女と一緒に記念大会か? せいぜいがんばって、先輩の踏み台になってくれよ」


 眼鏡の男がそんなことを言うと、会場にいた親衛隊が殺気立つ。そんなメガネの男に対し、セイヤは握手に応じて言う。


 「まあ、そんなところですね。手加減はしなくていいので、頑張ってください」

 「ふふ、そうか」


 眼鏡の男はニヤニヤしながら、ユアとリリィの方を見た。そして後ろからは、茶髪の男に坊主頭の男も近づいてくる。


 「こんな男よりも、俺らと遊ばないか? この試合が終わったら、一緒にどうだい?」

 「この金髪よりはいいと思うぜ」


 眼鏡の男と茶髪の男が、ユアとリリィに向かってそんなことを言う。


 坊主頭の男は何も言わないが、三人の目には下心がしっかりとある。会場の親衛隊が今にも斬りかかりそうな剣幕でセイヤたちを見ていたが、その前にユアとリリィが答えた。


 「セイヤがいい……」

 「リリィも!」


 ユアとリリィはそう言って、セイヤの袖をつかみ背後に隠れるように抱きついた。そんな二人を見た男たちが、セイヤのことを睨む。


 「ずいぶんと懐かれているようだな」


 眼鏡の男がセイヤを睨みながら言う。そんな時だった。ナジェンダが六人に対して強い口調で言う。


 「貴様ら、速く入らんか。両方とも失格にするぞ」


 ナジェンダが怒ると、男たち三人は結界の方へ行く。そして結界に入る直前、セイヤの方を見ていった。


 「お前はすぐには殺らない。女たちの前で無様に許しを請わせてからだ。楽しみにしていろ」


 男たちはそう言い残して結界内に入って行くのだった。


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