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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
2章 アルセニア魔法学園編
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第48話 新たな嵐の予感

 二日間の休日が終わり、今日からまた、アルセニア魔法学園の新たな一日が始まる。


 時刻は一時間目と二時間目の間。セイヤは妙にクラスメイトたちがざわついていることが気になり、隣に座るオレンジの髪の少女に聞いてみた。


 「今日はやけにみんなざわついているが、なにかあるのか?」


 セイヤが隣のアルナに聞いてみると、アルナが笑顔を浮かべながら、すぐに理由を教えてくれた。


 転校初日にいろいろあったセイヤだが、隣のアルナ、前のグレン、斜め前のコニーとは良好な関係を築いている。


 それに他のクラスメイトたちとも普通に会話をする。


 ファンクラブの会員たちはセイヤのことを避け、親衛隊たちはセイヤがユアに近づくと、殺気立つだけ。親衛隊も殺気立つだけで、攻撃をしてきたり、文句を言ってきたりはしない。


 そして他の生徒とはかなり友好的になったセイヤ。


 「なにって、そろそろレイリア魔法大会の予選が始まるんだよ。セイヤ君の前の学校でもこの時期にやっていたでしょ?」

 「そう言えば、そんな時期か」


 セイヤは教室の天井を見つめながら、セナビア魔法学園時代を思い出す。


 レイリア魔法大会とは、レイリア王国内で毎年開かれる学生魔法師の大会であり、レイリア国内の最強学生魔法師を決める大会だ。


 レイリア王国全土には、合わせて十の魔法学園があり、その十校の中から各代表の魔法師が出て戦う。


 レイリア王国にある魔法学園は、中央王国に一つ、フレスタン、ウィンディスタン、アクエリスタンにそれぞれ三つずつある。


 中央王国に唯一ある魔法学園はセントルシフェール魔法学園といい、レイリア王国の首都ラインッツにある。おもに卒業後は聖教会や各地の教会のトップになる生徒が多く、どちらかと言うと戦闘というよりは戦略を得意とする学園である。


 といっても、戦略は時に戦闘よりも大切になるものなので、この学園では戦略を重視し、未来のリーダーを作るという目標のもと生徒の育成が行われていた。


 フレスタン北西部の街、カルデの街にあるのがサラディティウス魔法学園。カルデの街はレイリア王国で最も北にある街で、その分暗黒領とも近い。そのため、サラディティウス魔法学園は授業の一環で近場の魔獣討伐などをしていた。


 暗黒領での魔獣討伐の授業を導入している魔法学園は、レイリア王国の中でもこのサラディティウス魔法学園だけであり、そのためか、卒業後は暗黒領での魔獣討伐経験を生かし、暗黒領討伐隊の指揮や育成を務めることが多い。


 フレスタン中部のウォッカの街にあるのがカマエリーナ魔法学園。ウォッカの街にはフレスタンの教会もあるため、カマエリーナ魔法学園の生徒は教会の実力主義を間近で見ており、生徒達の中でも闘争意識が高い。


 そのため、生徒同士の決闘がよく行われており、カマエリーナ魔法学園はレイリア王国の中で一番の武闘派とも呼ばれている。


 だからこの学園の警備は意外とゆるく、人攫いでもしようとすれば、学園内には簡単に入れるが、簡単に出ることはできないと言われていた。


 フレスタン南東部レデカの街にあるのがクレアニアス魔法学園。クレアニアス魔法学園は中央王国に近いため、戦闘の能力のうち、技術を中心に教えられる。


 技術とは剣術、槍術、弓術などであり、そのため武術流派の跡取りたちが多く通っている。


 なので、レデカの街には各流派の道場などが多く存在し、この道場への修行を求めてレイリア王国各地から人が集まっていた。


 ウィンディスタン北部オルナの街にあるのがセナビア魔法学園。この学園はウィンディスタンの中でもとくに名高い魔法学園であり、有名な上級魔法師一族や中級魔法師一族が通っている。


 さらにセナビア魔法学園は昨年のレイリア魔法大会において輝かしい戦績を誇っているため、よりいっそう有名になっていた。


 ウィンディスタン中部クロクレの街にあるのがエレネスピア魔法学園だ。エレネスピア魔法学園があるクロクレの街には、ウィンディスタンの教会があり、ここの生徒はウィンディスタンの教会との関わりが強い。


 ウィンディスタン南部エルネルニタの街にあるのがフージロングス魔法学園。ウィンディスタン南部は、間に海を挟み、アクエリスタン南部と繋がっている。


 まるで半島のようなウィンディスタン南部と、アクエリスタン南部に挟まれた海のことをカトラルカ湾といい、魚だけでなく、強力な魔獣などが住み着いている。


 さらにフージロングス魔法学園は海の近くにあるため、潮風によく当たる。そのため、レイリア王国の中でもかなり過酷な環境にある魔法学園とも言われているのだ。


 しかし、その分だけタフな生徒達が生まれるのも事実だった。


 アクエリスタン北部ワンデールの街にあるのがホルキナール魔法学園。ホルキナール魔法学園はアクエリスタン北部にあるため、フレスタン北西部にあるサラディティウス魔法学園と合同授業などをすることが多々ある。


 理由は二つの学園の近くにある暗黒領のダリス大峡谷だ。


 ダリス大峡谷には強力な魔獣たちがいるため、もし魔獣が街を襲ってきた場合、サラディティウス魔法学園とホルキナール魔法学園が連携して魔獣の進行を食い止められるように訓練されているのだ。


 魔獣を食い止めている間に、教会や、場合によっては聖教会から援軍が来て、魔獣を討伐することになっている。


 アクエリスタン中部モルの街にあるのが、セイヤたちが通うアルセニア魔法学園だ。アルセニア魔法学園のあるモルの街にはアクエリスタンの教会があるが、アルセニア魔法学園との距離は街の端から端と一番離れている。


 理由はモルの街がレイリア王国の中でも観光名所だからだ。


 観光名所ということは、当然ながら数多くの人がモルの街を訪れる。その中には当然、観光目当てじゃない輩も存在する。


 なので、教会は街の中心部に観光名所を集め、街のはずれに教会とアルセニア魔法学園を設立することによって、観光客以外の怪しい人物の特定は楽にしたのだ。


 それにもし、片方の機関が襲撃を受けたとしても、片方とは距離があるため、同時の襲撃の可能性は低い。


 それにアルセニア魔法学園の生徒たちは比較的戦闘能力に長けた優秀な生徒たちが多く、教会とアルセニア魔法学園が街の端と端にあることで、そう簡単に事件は起こせない。


 よって観光客は安心してモルの街を楽しめるのだ。


 アクエリスタン南部モグノディアラの街にあるのがクルニセテウス魔法学園。モグノディアラの街はエルネルニタの街と同様、海に面した街である。だがエルネルニタの街とは違い、穏やかな港町であり、比較的住みやすい。


 そのため、クルニセテウス魔法学園は海の一部に柵を設けて、プールのような空間を作り、その中で魔法の行使を訓練したりする授業を導入していた。


 だからクルニセテウス魔法学園の生徒たちは水中戦を得意としている。


 以上の十校から学園代表が六名ずつ出て、レイリア魔法大会で戦い、その年のレイリア王国最強の学生魔法師を決定する。


 大会の方式は六名でチームを組み戦う。だから単純に強い六人を選ぶと、パワーバランスが悪く負けてしまうこともある。


 そのため、各校はチーム力も見て、代表の選定をするため、予選をそれぞれ工夫して行うのだ。


 レイリア魔法大会は六人一チームを合計十チーム、一斉に大会が行われる異空間に転送する。


 異空間と言っても周りを結界で囲まれた大きな島であり、結界構築には結界魔法のエキスパートたちが各地から集められて行われる。


 なので、結界内はかなり安全であり、代表選手たちは安心して戦うことができるのだ。


 さらに、結界には例のよう死ぬことは決してない。そんな結界内で優勝者、または優勝学園が決まるまで永遠に終わらないのがレイリア魔法大会である。


 レイリア魔法大会は学生魔法師にとって憧れの存在だ。しかし、セイヤはこの大会の本戦どころか予選にも出たことがない。


 理由は簡単、セイヤとチームを組んでくれる人はいなかったから。この大会はチームを組む際、学年などは関係なく、魔法学園の生徒ならだれでも参加可能だ。


 それはもちろん訓練生も同じであり、セナビア魔法学園の各チームは人数不足になると、セイヤでなく、訓練生を自分のチームに入れていた。


 レイリア魔法大会の前年度優勝はかつてセイヤが通っていたセナビア魔法学園の代表だ。セナビア魔法学園は、訓練生から魔法学園の生徒になったばかりの六名で、レイリア魔法大会を制していた。


 昨年のレイリア最強の称号を手に入れた六名の魔法師は、カイルド=デーナス、クリス=ハニアート、ジン=ハイント、ラーニャ=アルン、リュカ=ティーナモ、そして、リーダーのレアル=クリストファー。


 彼らは若干十六歳にして、レイリア王国最強の学生魔法師の栄光を手にしたのだ。


 セイヤも当時のことはよく覚えている。自分のクラスメイトたちが、レイリア王国最強の学生魔法師になったのだ。それに刺激され、自分の特訓も厳しくしたに決まっている。


 ちなみに、今年のレイリア魔法大会の優勝候補はセナビア学園ではない。理由はレアルがセナビア魔法学園から去り、セナビア魔法学園の代表が圧倒的に弱くなったから。


 昨年のレイリア魔法大会でのレアルの活躍は凄まじいものであり、観客から畏怖されたほどであった。


 そのため、セナビア魔法学園代表がレイリア王国最強の学生魔法師たち、ではなく、レアル=クリストファーがレイリア王国最強の学生魔法師として認識されていた。


 世代最強と言われるレアル。彼とセイヤとでは、魔法師の格が違っていた。


 セイヤが昔の記憶を思い出していると、お隣のアルナが聞いてきた。


 「ところでセイヤ君はユアさんと出るの?」


 アルナにそう聞かれたセイヤだったが、あまり出る気はなかった。


 今まで自分が出なかったというのもあるが、一番の理由は人数である。予選も通常六人で行うため、チームも当然ながら六人が必要になる。


 しかし、セイヤとユア、そして訓練生のリリィを加えても六人の半分にしかならない。


 どこからか補強する手もあるが、三人の実力に合わせられる魔法師などそう簡単にはいない。


 そうなってくると、結局今年も出場を断念するしかないのだ。


 「いや、出ないかな。六人も集められないし」

 「えっ?」


 セイヤは当然の事を言ったつもりだが、アルナは「何言っているのだ、こいつ?」みたいな顔をしていた。


 セイヤも「どういうことだ?」と理解してない様子、そんな二人に対し、コニーが教えてくれた。


 「うちの学園は特別なんだよ、アルナ」

 「あっ、そうか」


 アルナはコニーにそう言われ、なにかを納得した。


 「ごめん、セイヤ君。えっとね、うちの学園は他とはちょっと違って、予選は一チーム三人なんだ」

 「三人?」

 「そう。予選で勝ち残った三人を中心に、息が合いそうなもう三人を選んで、アルセニア魔法学園最強チームを作るの」


 アルナの言う通り、アルセニア魔法学園の予選方式は他の学園と違っていた。


 一チーム三人として、参加チームを八ブロックに分ける。そしてブロック内で総当たり戦を行い、最終的に勝率が一番高い一チームが決勝トーナメントに進出する。


 決勝トーナメントは各ブロック勝率一位のチーム同士によるトーナメント制であり、そのトーナメントを勝ち抜いた三人こそがアルセニア魔法学園の代表の座をつかむ。


 そしてその三人を中心とし、チームの欠点を補える生徒や、息の合う生徒などを三人選び、合計六名のアルセニア魔法学園代表が決まるのだ。


 「そうなのか。なら、出るかもな」


 セイヤは頭の中でユアとリリィならいけると考える。


 今まで出られなかったレイリア魔法大会だが、本音を言えば予選には出てみたかった。


 セイヤの中で、出場してみるか、という思いが生れるのだった。


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