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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
2章 アルセニア魔法学園編
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第41話 下校

 実践訓練の授業が終わり、教室に戻ってきたセイヤとクラスメイトたち。全員が自分の席に着き、担任のヤユーナが来るのを待っていた。


 セイヤが帰る準備をしていると、隣の席のアルナがセイヤに話しかけてくる。


 「セイヤ君、凄いね」

 「凄いって?」

 

 セイヤはいきなりアルナに褒められ、何のことか理解できなかった。そんなセイヤに対し、理由を説明したのは左斜め前の席に座るコニーだ。


 「あのブリックを瞬殺だよ」

 「ブリック? あぁ~あのファンクラブの」

 「そうだよ。ブリックはこのクラスの中でもトップクラスの実力の持ち主なんだ。それを瞬殺するなんて」


 興奮気味に話してくるコニーの姿を見て、セイヤはよほどコニーがファンクラブ関係に巻き込まれて、いろいろあったのであろうと察する。


 セイヤがそんなことを考えていると、前の席に座るグレンがセイヤに聞いてきた。


 「ところでセイヤ、さっきの瞬殺はどうやったんだ?」

 「秘密だ」

 「まあ、そうなるよな」


 秘密にされたグレンだが、まったく嫌な顔はしていない。なぜなら魔法師の使う魔法は基本的に個人の秘密とされているから。


 説明を嫌がっている魔法師に対し、しつこく聞けば、それはマナー違反である。そして最悪の場合、教会に捕まってしまうことだってありうる。


 「でも、セイヤ君まだ力を隠しているでしょ?」

 「なぜそう思うんだ?」

 

 アルナの質問に、セイヤは顔色一つ変えずに聞き返したが、心の中ではかなり驚いていた。


 もしかしたらアルナはセイヤの持つ闇属性に気づいているのではないか、と焦ったが、それは杞憂に終わる。


 「だってエレンとの決闘を見たらわかるよ。セイヤ君、最初の一手でエレンの剣筋を完全に見極めていたでしょ?」

 「まあな」


 アルナの洞察力に対して素直に驚くセイヤ。確かにセイヤはエレンの剣筋を初手で見極めたが、そのことを悟られないようにしていた。


 しかしそんなセイヤの動きを、アルナは見破っていたのだ。


 「でも、あえて後ろに回避して、エレンにストレスを感じさせたでしょ。しかも同時にブリックを油断させた。そんなことができるのは、格の差がある相手じゃないとできないよ」

 「なるほどな」


 アルナが言った通りだ。エレンの剣筋を初手で完全に見極めていたセイヤが、その後も回避し続けた理由も当たっている。


 セイヤは目の前の華麗な一勝よりも、その戦いで、いかにしてその後の相手を油断させるか、をとった。これはセイヤが暗黒領で感じた本物の戦い方であり、魔法学園では学ぶことのできないものだ。


 そんなことをあの戦いで見抜いたアルナは、相当な実力者だと感じたセイヤ。だからセイヤはアルナに対する警戒を強めることを決心する。


 しかし、どうやらアルナだけを警戒しておくだけではいけないらしい。


 「ブリックへのあの技、どっかの流派のもの?」

 「違うぞ。俺のオリジナルだ」

 「それはすごいね。あの首を落とす技術は相当なものだよね! まったく無駄がなく、かつ最適な斬り方をしないとできないよ!」

 「そっ、そうなのか」

 「そうだよ!」


 やはりコニーはどこか興奮した様子で話をしているが、驚くべきはコニーの洞察力だ。


 セイヤはブリックの首を落とす際、人間の視認不可能なスピードで行動をした。だというのに、コニーの言い方はまるでセイヤの動きが見えていたかのようである。


 アルナといい、コニーといい、警戒する実力者が多いな、と思うセイヤであった。


 そんなセイヤに対し、グレンが提案をしてくる。


 「なあ、セイヤ。今度、俺と決闘しないか?」

 「なんでだ?」


 急にそんなことを言い出したグレン。しかし急な提案過ぎて、セイヤは理由を聞いた。


 「お前と決闘したらなんかわかりそうだからな」

 「わかるって、何がだ?」

 「俺が進化するために必要なことだ」

 「なるほど。わかった、今度の訓練で決闘があったらな」

 「おう! ありがとな」


 どうやらグレンは警戒する必要がないと思ったセイヤ。


 そして話は変わる。


 「でも、セイヤ君がそんなに強いと、生徒会にスカウトされるんじゃない?」

 「確かにありそうだね」


 アルナの発言にコニーが同意をする。セイヤはいい機会と思い、生徒会について聞いてみることにした。


 「生徒会ってどんな奴らなんだ?」

 「おお、セイヤ君興味がおありですか?」


 なぜか嬉しそうに聞いてくるアルナ。だがセイヤは興味無さげに答える。


 「まあな」

 「そうなんだ。えっとね、生徒会の説明はコニーに任せるよ」

 「えっ?」


 アルナがいきなりコニーに振ったので驚くコニー。


 「だって説明面倒くさいじゃん。だからコニーよろしく」

 「仕方ないなぁ」


 アルナに不満そうな顔をしながらも、説明を始めるコニーは、どこかセイヤのかつてのクラスメイトの一人に似ていた。


 「生徒会は現在三名で構成されているんだ」

 「三人?」


 この数字にはさすがにセイヤも驚く。


 セイヤのいたセナビア魔法学園の生徒会は、軽く十人以上はいた。それに対し、三人という人数は明らかに少なすぎる。そんな少数で、やっていけるのかと本気で思うセイヤ。


 「うん。三年生の生徒会長に二年生の副会長、そして一年生の書記の三人だよ」

 「副会長ならさっき会ったぞ」

 「それってスカウトされたの?」


 セイヤの発言にすぐにアルナが食いつく。しかしセイヤはアルナが期待するような答えを言うことはできなかった。


 「違うぞ。見知らぬ顔だから不審者扱いされただけだ」

 「な~んだ」


 セイヤの答えに対して、あからさまに興味を失うアルナ。


 「それでその三人がとても強いんだ。この学園の中でも格が違うと言われているけど、彼女たちの本気を体験したことがある人はいないらしい。戦っても本気を出す前にみんな倒されちゃうから」

 「それは怖いな。じゃあグレンはそいつらに決闘申し込んだらどうなんだ?」


 何かをつかむためには、セイヤじゃなくてもいいはずだと思い、聞いてみたセイヤ。本音を言えば、何かの拍子に闇属性を使ってしまうかもしれないので、不用意な戦闘は避けたかった。


 「冗談きついぜ、セイヤ。あいつらに近づくなんてごめんだね」

 「そうなのか?」

 「あぁ、学園生活を楽しみたいなら、あいつらには関わらない方がいいぞ」

 「なるほど」


 これで先ほどセレナのことを見た周りの生徒たちが、すぐに立ち去った理由を理解した。


 それにしても、この学園には関わらないほうがいい集団が多いな、と思う、かつて関わらないほうがいいと言われたセイヤ。


 そんなことを話していると、担任のヤユーナが教室に入ってきて、すぐに解散になった。連絡は、明日と明後日が休みだから、しっかりと休息をとること、だけだ。


 解散になると、セイヤはユアと共にリリィのことを迎えに行く。その際、親衛隊やファンクラブは何も言わず、ただ黙っていた。


 リリィと合流すると、ナーリも一緒に帰ることになり、セイヤたちはナーリを家まで送ってから帰宅する。


 こうしてセイヤの転校初日は終るのだった。


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