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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
2章 アルセニア魔法学園編
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第37話 セレナ

 アルセニア魔法学園はセナビア魔法学園と同じくらい広く、職員室の近くへ行くと、生徒たちの数も減ってほとんどいない。


 だが、ほとんどいないと言っても、少しはおり、仲良く手をつないでいるセイヤとリリィのことをチラチラと見ていた。そんな二人に対して誰かが呼び止める。


 「ちょっとそこの二人」


 セイヤとリリィは自分たちのことだとは思わず、そのまま学園長室に向かう。そんな二人に対し、声の主は先ほどよりも大声で呼び止める。


 「ちょっと待ちなさいよ。そこの手を繋いでいる二人よ」


 セイヤは大声に気づき、周りを見た。


 周りには生徒たちが少しいるが、手を繋いでいるのはセイヤとリリィだけだ。


 そのことに気づいたセイヤは声の主がいるのであろう方向を見る。リリィもセイヤが後ろを見たので、立ち止まって振り返る。


 そこにいたのはきれいな赤髪をツインテールにして、トパーズのようにきれいな黄色の眼をした少女だった。


 しかしその顔はどこか怒っているようで、周りにいた生徒はその少女を見ると、足早にその場から立ち去る。


 そして赤髪ツインテールの少女は、まっすぐとセイヤとリリィのことを睨んでいた。


 「俺たちの事か?」


 一応だが、セイヤは聞いてみる。すると、赤髪ツインテールの少女は怒りながら答えた。


 「そうよ。ほかにだれがいるのよ?」

 「確かにそうだな」


 赤髪ツインテールの少女の言う通り、セイヤたち以外に手を繋いでいる人は近くにいなかった。


 「それで何の用だ?」


 セイヤは赤髪の少女に用件を聞くと、赤髪の少女は不機嫌そうに答えた。


 「あなたたち見ない顔ね。侵入者かしら?」

 「違うぞ、転校生だ」

 「転校生?  聞いてないわよ」

 「それはクラスが違うなら普通知らないだろ」


  魔法学園は各地方に三校しか存在しないため、かなりのマンモス校だ。


 なので、転校生が来たところでいちいち他の生徒に知らされるわけもなく、知らない顔があったって当然のはずだ。


 この少女は一体何を言っているんだ? と思うセイヤ。そんなセイヤに対して、赤髪ツインテールの少女は理由を答えた。


 「違うわ。転校生が来るならふつう私のところにも連絡が来るのよ」

 「お前何者だ?」

 

 よくわからない少女に対し、セイヤは一瞬、本気でイタイ少女かと考えてしまったが、少女の纏う雰囲気を見て、すぐに違うと理解する。


 少女が纏う雰囲気はセイヤ程ではないにしろ、かなりの実力者だった。


 警戒しながら聞いたセイヤに対し、少女の答えは意外なものだった。


 「私はアルセニア魔法学園生徒会副会長、セレナ=フェニックスよ」


 アルセニア魔法学園生徒会。


 これは文字通り、アルセニア魔法学園の生徒会であるが、魔法学園の生徒会は普通の学園の生徒会とは違う。


 魔法学園の生徒会は、風紀委員なども兼任しており、実力は学園でもトップクラスが集まる集団だ。


 セイヤの通っていたセナビア魔法学園にも生徒会は存在していたが、彼らも相当の実力者たちだった。


 ちなみに、セナビア魔法学園の生徒会にはジンなどが所属している。生徒会の実力はとても強く、学園側と同等の権利を持っていたりするほどだ。


 そんな生徒会の中でも、少女は副会長だ。目の前の少女のレベルが高いことなどセイヤもわかっていたため、セイヤは一応自己紹介をしておく。


 「俺は今日二年A組に転校してきたキリスナ=セイヤだ」

 「二年生って私と同じじゃない。私は二年C組よ。よろしくね」

 「そうだったのか、よろしく。で、こっちが訓生二年のリリィだ。俺と一緒で今日からこの学園に通うことになった」

 「そうなの? よろしくね。リリィちゃん」


 セレナはリリィの可愛さにもためらわず挨拶をする。リリィもそれに応えて挨拶をする。


 「よろしく!」


 ここまでは至って友好的な挨拶だ。最初こそ機嫌の悪かったセレナだが、事情を知った今では優しい副会長である。


 しかし、セレナの機嫌はまたすぐに悪くなるのだった。


 「ところで二人は婚約者なの? 仲良く手を繋いでいたけど」


 セレナの質問に答えるのをためらうセイヤ。


 相手はアルセニア魔法学園の生徒会だ。


 もしここで変なことを答えてしまい、目をつけられるような事があれば、セイヤは親衛隊とファンクラブ、そして生徒会から目をつけられることになってしまう。


 そんなのはとても面倒で、セイヤは御免だった。


 しかし、セイヤがどう答えるか考えていると、セイヤと手をつないでいた美幼女が再び爆弾を落とす。


 「違うよ! リリィはね、セイヤの愛人なの!」

 「えっ……」


 リリィの発言にセレナは固まる。それもそのはず、なにせ目の前の十四歳の少女(仮)が、いきなり婚約者ではなく、愛人と言いだしたのだから。


 「おっ、面白いね、リリィちゃんは。でもそんな冗談言っちゃだめだよ?」

 

 セレナは何とか口から言葉を発したが、その声は動揺によって震えている。


 「冗談じゃないよ? リリィは本当にセイヤの愛人だよ! だってセイヤには婚約者がいるもん!」


 リリィがどんどんとセイヤたちの特別な家庭環境を暴露していく。これにはセレナだけでなく、セイヤも固まるしかなかった。


 そしてセレナはわなわなと震えながら、セイヤのことを睨む。


 「あなた、どういうつもり?」

 「えっと……」

 「婚約者がいるのに、こんな小さい子を愛人って?」

 「それはだな……」


 セイヤは必死に弁解の言葉を探すが、見つからない。なぜなら、それが事実だから。


 「あなた、もしかしてロリコンか何か?」

 「ちっ、違うぞ」

 

 ロリコン疑惑を掛けられたセイヤは、必死に弁解を探すが、その前にセレナがリリィに問う。


 「リリィちゃんは愛人の意味を知っているの?」

 「うん! 結婚している人と不倫する人!」


 セイヤのHPがどんどん削られていく。しかしセレナもどうしていいかわからず、目がグルグルしだしていた。


 「リ、リリィちゃん、こいつの婚約者はリリィちゃんのことを知っているの?」


 アワアワとしだすセレナに対し、リリィはお構いなく爆弾を投下する。


 「うん! お姉ちゃんはリリィのことを知っているよ!」

 「えっ、おっ、お姉ちゃん!?」

 「ま、待て、リリィ。誤解を招く言い方は……」


 セイヤは残り少ないHPを何とか振り絞ってリリィを止めようとしたが、その前にセレナが軽蔑のまなざしでセイヤのことを睨む。


 「あんた、何考えているの?」

 「そ、それはだな」

 「婚約者の妹と不倫って。しかもこんな小さい子を」

 「まっ、待て」

  

 セイヤを見るセレナの目がどんどんとひどくなっていく。


 それに伴いセイヤの残り少ないHPもさらに減少していく。そんなセイヤに、リリィがとどめを刺そうとばかりに、最後の爆弾を投下した。


 「リリィは全然いいの。お姉ちゃんもリリィのことを認めてくれているよ! それにリリィとセイヤはもう繋がったから!」

 「つっ、繋がった!?」


 リリィは妖精と人間の完全契約のことを言っているのだが、セレナは完全に誤解をしている。


 けれども、本当のことを言えば大人バージョンのリリィとは…………(この後はご想像にお任せします)


 セレナは蔑みの目よりも更にひどい目でセイヤのことを睨む。


 「私はアルセニア魔法学園生徒会、副会長セレナ=フェニックスの名のおいて誓うわ。女の敵、キリスナ=セイヤ。あなたのことを生徒会は認めない。覚悟しておくことね」


 セレナはそう言い残して、どこかへと走り去ってしまった。


 セイヤは生徒会までを敵に回してしまったことに、何とも言えない感情になりながら、学園長室に向かうのであった。


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