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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
9章 革命軍編
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革命軍27

 大剣デスエンドを再び手中に収めたセイヤはミカエラに向かって問う。


「どうして世界の上書きなどという回りくどいことをした」

「私にしてみれば世界の上書きも再編も大差のないことだ」

「ならば再編しなかったことを後悔させてやる」


 大剣デスエンドを構えるとセイヤはミカエラの周囲に聖属性の魔法を行使する。内容は《固有世界内における魔法行使の不可》であり、これによって固有世界内にいる者たちは術者であるセイヤも含めて魔法の行使が不可能になった。


 するとミカエラがすぐにセイヤの魔法に対して《固有世界内の魔法行使が可能になる》というルールを上書きする。これによって固有世界内で再び魔法が行使できるようになった。けれどもセイヤが再び聖属性の魔法を使用する。


 内容は《魔法に魔法で上書きを禁止する》というもの。このルールが設定されたことによってミカエラが後出しで行使した魔法が無効となり、セイヤの《固有世界内での魔法行使が不可能》というルールが有効になった。


 ただ、ここで一つの矛盾が生じる。セイヤが最後に使った《上書き禁止》というルールは、それ自体がセイヤが最初に設定した《魔法行使不可能》というルールに直接の上書きはしていないが、包括的に見れば上書きしていることになり、《上書き禁止》というルール自体が上書きのルールになっている。


 そこでセイヤは《上書き禁止》のルールに対して《上書き可能》のルールを設定する。これによって最後に設定された上書き可能のルールが適用されて、上書きができるようになる。だが一方で《上書き禁止》が残っているために《上書き可能》が正常に機能しない。


 またこの時点で《上書き可能》の余地が残っているためにミカエラが設定した《魔法行使可能》というルールも有効となる余地を残す。


 セイヤは構わずに《上書き可能》に《上書き禁止》をもう一度行使する。そして今度は《上書き禁止》に《上書き可能》を行使する。こうして何度も何度も先行するルールに矛盾が生じるようにルールを設定することで、いつしか固有世界のルールは複雑化し、まるで何本もの糸が絡まったような状態へとなる。


 そしてセイヤが一番最初に設定した《魔法行使不可能》というルールに干渉するには何重にも絡まった複雑なルールを紐解いて行使しなければならなくなった。けれども複雑化したルールの中にはミカエラが設定したルールも残されているため、ミカエラが聖属性の魔法で新たに干渉しようとしても無意識領域で相殺し合って上手く機能しなくなる。


 先ほどまで自分が陥っていたジレンマにミカエラも陥れたのだ。


「随分と手の込んだ愚行だが、この世界に置いては有効な一手であることを認めよう」

「これでお前は魔法が行使できない」

「確かに世界の法則に干渉するのは難しそうだ。だが、それは貴様とて同じではないか」


 ミカエラほどの実力者でも苦労する複雑化されたルールならば、彼に聖属性の力で劣るセイヤも例外ではない。むしろ何重にもルールを設定したセイヤの方が世界の法則に干渉することが難しくなっている。


 しかし、それはセイヤが聖属性しか使えないという場合においてだ。複雑化されたルールへの干渉が厳しくなるのは同じ聖属性によって干渉しようとしているから。ましてや自分の設定した先行するルールに干渉するために普通以上の労力を必要としている。


 聖属性でも時間をかければ複雑化されたルールを紐解くことは可能だが、それにはかなりの集中力を要するために戦闘中には難しいだろう。


 それならば聖属性ではない方法で世界の法則に干渉すればいい。光属性の上位互換ともいえる聖属性に対応しうる魔法、それは夜属性の魔法だ。


 セイヤは自身に闇属性の薄くながら纏わせる。一歩間違えれば己の肉体を消失させてしまうほど危険な行為であるが、普段から魔力を纏って激しい戦闘に身を投じているセイヤに万が一ということはない。


 夜属性の魔力を纏うことでセイヤは固有世界に設定された複雑なルールが自身に干渉することを防ぐ。これによってセイヤは魔法の行使に一切の支障をきたさない。


「存外、貴様も頭が切れるということか」

「これで俺の優勢だ」

「確かにこの状況は不利に間違いない」


 追い詰められているというのにミカエラには焦りの様子はない。むしろ今まで以上に余裕の表情さえ浮かべている。


「降参するなら今の内だ」

「この私に降伏しろと」

「魔法が使えない状況なら、いくら特級魔法師といえどもただの人間だ」

「ふん」


 ミカエラが笑みをこぼす。


「フハハハハハ、この我をただの人間呼ばわりとするとはいい度胸じゃないか」


 ミカエラの口調が変わった。


「面白い、面白いぞ、キリスナ=セイヤ!」


 これまでセイヤのことを十三人目と呼んでいたミカエラが初めてセイヤの名前を呼んだ瞬間だった。


「認めてやろうではないか。貴様があのとち狂った餓鬼と同等以上の存在だとな」


 頭を抑えながら笑っていたミカエラが表情を変えてセイヤを睨む。


「だが、喧嘩を売る相手を間違えたな」

「なっ……」


 次の瞬間、セイヤは信じられない光景を目の当たりにする。


 貴公子ともいわれる整った容姿をしているミカエラの顔にひびが入ると、そのひびは全身へと広がっていく。そしてポロポロと皮の破片が地面に零れ落ちていき、燃えて灰になる。その姿はまるで爬虫類の脱皮の様であるが、ただの脱皮ではないのは明らかだ。


 まるで人間の皮を脱ぎ捨てるようにして姿を現したのは燃え盛る炎のように真っ赤な髪色をした男の姿である。


 一体それは何なのか、セイヤにはわからない。ただ一つだけ確かに言えることは目の前に現れた赤髪の男は先ほどまでセイヤが戦っていたミカエラとは別人であるということだ。容姿もさることながら、纏う空気、滲み出る膨大な力、目の当たりにして感じる存在感。


 どれをとってもセイヤが今まで会ってきた人間とは一線を画す存在である。


「改めて名乗ろう、我が名は大天使ミカエル。貴様ら人類を超越する存在だ」

書いてて意味わからなくなってきた

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