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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
番外編 事件は現場以外でも起きている
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番外編Ⅱ 第4話 犯人の目的

 五人は約三日をかけて、フレスタン地方中部のウォッカの街に到着した。


 時刻は夜になっていたため、五人は事前に連絡しておいたポールとケインと合流して宿に入る。


 そして食事が終わると、バジルは全員を宿に借りた会議室に集めて、怒りを必死に押し殺しながら言う。


 「犯人の目的がわかった」

 「本当ですか隊長?」


 何も知らされていないポールが聞く。


 「ああ、犯人の黒幕はおそらくフレスタンの上級魔法師一族だ」

 「隊長、それは……」


 グリスがそんなことを言っていいのか、と言う顔をするが、バジルが答える前にワルツが質問をする。


 「隊長、それで犯人の目的はなんですか?」

 「魔法師の大量生産だ」

 「まさか……」


 モーラスはバジルの言葉で気づき、驚いた顔をする。ケインもモーラスと同じく気づいたようでバジルに聞いた。


 「魔法師と少女って……」

 「おそらくそうだろうな」

 「そんな……酷いこと……」


 ケインの言葉で、唯一の女性であるエリエラも犯人の目的がわかり怒り、をあらわにする。グリスたちも犯人の目的がわかったようで、言葉を失っていた。


 「おそらく犯人はフレスタンの上級魔法師一族に依頼を受けて犯行をしている。フレスタンは実力で地位が決まる場所だ」


 バジルがたどり着いた結論、それは魔法師の大量生産。


 犯人たちは拉致した魔法師と少女の間に子供を作らせて、魔法師を大量に作り出し、一族の戦力を底上げしようとしているのだ。さらにバジルが言う。


 「黒幕は火属性魔法を使う一族だ」

 「なぜですか?」


 バジルの言ったことにワルツが尋ねる。そこには今の段階ではそこまで絞っていいのか、という質問も入っていた。


 なので、バジルはちゃんと理由を説明する。


 「攫われた魔法師の中に火属性使いの魔法師が多かった。おそらく子供に火属性の適性を付けて、自分たちで育てようという根端だ」

 「確かにそれなら子どもの能力が上がりますね……」


 エリエラが同意する。しかし彼女も、いやこの場にいる全員が本当にそんな事があるのかと半信半疑だ。


 そんな部下たちに対してバジルは明日の行動について説明する。


 「明日は教会に行き、火属性を中心とする上級魔法師について調べる。わかった場合は、すぐにその家に向かい、人質の場所を聞き出す。最悪の場合そこで戦闘になるかもしれないから、準備をしていてくれ」

 「「「「「「了解」」」」」」


 その日の会議はそこで終わり、バジルと小隊長たちは各々複雑な面持ちで自分の部屋へと帰っていくのだった。






 翌日、バジル一同がフレスタン教会に行くと、教会ではちょうどトップたちの会議をしていた。


 バジルは受付で会議が行われていることを聞くと、小隊長たちを待機させ、単身で会議室に乗り込む。


 怒りを何とか抑え込んでいるバジルは、会議をしている部屋の扉をドバッと大きな音と共に開けて言う。


 「失礼する」

 「貴様何者だ? 今は会議中だぞ」


 会議室の中では五人の男が会議をしていたが、急に入ってきたバジルに対して非難の声を上げる。


 五人のうち、聖教会からの派遣されている者は二人で、残り三人はこの地の代表者たちだ。その三人のうちの一人で五十過ぎの男、トズが急に入ってきたバジルに向かってどなりつけた。


 「部外者は帰れ。今は重要な会議中だ」

 「トッ、トズ殿! その方は聖教会十三使徒のひとり、バジル=エイト様だ」

 「なっ、なに?」


 聖教会から派遣されている四十前後の男、トルバンの言葉で、トズが驚きながらバジルを見る。


 彼の装備している白い鎧は、まさしく聖教会十三使徒のものであり、トズは慌てて態度を変える。


 「こ、これは失礼しました。それで用件はなんでございましょうか?」


 バジルは態度を変えたトズに対して率直に用件を言う。


 「フレスタンにいる火属性を使う上級魔法師一族のリストがほしい」

 「な、なぜでしょうか?」


 なぜ十三使徒であるバジルがそんなものを欲しているのか、気になるトズだが、バジルには答えることはできない。


 「それは言えない。しかし、これは十三使徒としての要求である」

 「わかりました」


 そう言い、トズは一度部屋を出て行き、ファイルのようなものを持ってきた。


 そこにはフレスタン所属の上級魔法師一族のリストが載っており、バジルはそのリストを見る。


 トズの持ってきたリストには、上級魔法師一族がかなり載っており、バジルはその中から火属性を使う一族を絞る。


 絞った結果、火属性を使う上級魔法師一族は全部で十五あり、まだ多い。バジルはその中からさらに絞る。


 「この中で資金が潤沢な一族は?」

 「こちらの六家になります。」


 人攫いには資金が必要なため、バジルは資金の潤沢な一族に絞った。トズの指した一族は全部で六家、それでもまだ多い。バジルはさらに条件を絞る。


 「この六家の中で暗黒領に討伐に行ったことのある戦闘を得意とするのは?」

 「こちらの二家です」


 トズが指したのは二つの一族。ここまで来ればあとは虱潰し(しらみつぶし)に探すことも可能だが、バジルは一応聞いた。


 「もしかして、この二家のうち弱い方は最近不穏な動きをしては?」

 「はい、確かにグルスベール家は最近不穏な動きをしていますが……なぜそれを? 今ちょうどそのことについて会議していたのに……」

 「いろいろありまして。それでグルスベール家にはどうやったら行けるのですか?」


 バジルは内心当たったと思った。犯人まであと少し、バジルは早く誘拐された人々を救出したいという一心で聞く。


 「それでしたらこの近くにあるのですぐに行けます」

 「わかりました。では今からグルスベール家の周辺に警備を配置してもらえますか?」

 「なぜですか?」

 「今から訪ねて、もしグルスベール家が攻撃をしてきた場合、聖教会十三使徒の名の下に殲滅しますので」

 「そ、それは……」


 バジルの殲滅という言葉に、教会のトップたちは悟る。聖教会は教会では把握していない事件を捜査しており、その中心にいるのがグルスベール家だと。


 「わかりました」

 「協力感謝します」


 バジルはそう言い残して、会議室から出た。


 そして小隊長たちと合流して、教会から貰った地図を頼りに、グルスベール家へと向かうのだった。


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