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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
番外編 事件は現場以外でも起きている
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番外編Ⅰ 第4話 怪しい人影

 第一次警戒態勢が発令されたことにより、セナビア魔法学園の全校生徒たちが強制下校していた。それはリュカたちも例外ではない。


 「それにしても、第一次とはいえ警戒態勢とはな」

 「確かにね。被害は絶対それ以上だと思うんだけど」

 「ラーニャちゃんどういうこと?」


 ラーニャの言葉にリュカが質問する。リュカの質問に答えたのはラーニャではなくジンとクリス。


 「ラーニャが言いたいのは少女一人だけでないということ」

 「それか少女が大物」

 「クリスとジンの言う通り。明らかにおかしい」

 「言われてみればそうだな」


 考えてみればおかしいことだ。


 魔法師四人が攫われたというのに教会は警戒態勢を発令するどころかまだ極秘に動いていた。


 しかし非魔法師の少女が攫われた途端、すぐに警戒態勢の発令の要請をしてきたのだ。そんなの少女が大物か被害がそれ以上でなきゃおかしい。


 「でも大物って誰だろう?」

 「いや、大物じゃないと思うよ。おそらく被害者は一人じゃないんだと思う」

 「おそらく三十人以上はいる」

 「それは物騒だな」


 ジンの見積もりにカイルドは困りながら言った。


 三十人、その数は誘拐するには多すぎる数だ。誘拐するということにはそれそうおうのリスクが伴うが、三十人となればそれはもうプロの犯行である。


 金目当てとかよりも、誘拐の際の緊張感に快感を覚えているのではないかと思うくらいのレベルに近い。


 「でも先生たちが動いてくれるんじゃないの?」

 「それでも不安っていうことよ」

 「こういう時にあいつがいてくれるといいんだが」

 「あいつってレアルのこと?」

 「あぁ」

 「確かにレアルがいればいいけど、今はいないわ」

 「案外、今頃動いていたりしているかも」 

 「ははっ、それはありそうだね」


 レアルとはこの五人とよく一緒にいた少年である。


 今はわけあってセナビア魔法学園にはいないが、在学時には六人の中でリーダー的なポジションだった正義感の強い少年だ。


 そんなことを話しながら五人はオルナの街中に来ていた。そんな時ジンが不審な人物を見つける。


 「どうしたの、ジン君?」

 「あそこに怪しい人がいる」

 「確かにあれは怪しいな」


 五人の視線の先には路地裏にいる二人の男がいた。いかにも人が入ってそうな麻袋もちながら、逆の通りの人の流れを念入りに伺っている怪しい二人組だ。


 「あれ、どう見ても人攫いにしか見えないのは私だけ?」

 「安心してラーニャ。僕にも人攫いにしか見えないよ」


 もし何事もなかった状態で、大きな麻袋を持ちながら人の流れを伺っている人がいても、そう簡単には人攫いだとは思わないだろう。


 しかし今は違う。この街では人攫いが現在進行形で人攫いが発生しており、先ほども新たな被害者が出たところだ。


 そんな状態で大きな麻袋を持った、見るからに怪しい男たちを人攫い疑わずどうする。


 「どうする? とっ捕まえて聞いてみるか」

 「だめ、尾行しよう」

 「ジンの意見に乗るわ。カイルド、何もないのにいきなり捕まえたら私たちが人攫いよ。それに、このまま拠点を見つけられたらみんな助けられるわ」

 「そうだね」

 「わかったよ。じゃ尾行と行くか」


 五人はこそこそしている二人の後ろに気配を殺して尾行を始める。


 さすがは魔法学園の生徒だけあって気配はほとんどない。不審な二人の男たちは非魔法師であるため、尾行に気づく様子など一向になかった。


 尾行されているとは露知らずの男たちは、前方しか警戒しないまま、人の目を盗んでオルナの街郊外にある大きな工場たどり着き、そのまま中に入っていった。


 どうやらこの工場が奴らの拠点になっているらしい。


 「ここだな」

 「いかにもって感じね」


 ラーニャの言う通り、男たちの入っていった場所は、昔使われていたのであろう大きな廃工場。


 壁はところどころさびており、屋根なども一部剥がれている。一見するとかなり不気味で誰も近づこうとはしないため、人を隠しておくにはもってこいの場所だ。


 「どうする?」

 「僕は突入すべきだと思うね。ジンは?」

 「クリスに賛成。みんなは?」

 「俺はもちろん賛成だ」

 「私も賛成よ」

 「私も」


 クリスの意見に四人は賛成をする。せっかく見つけた犯人たちの拠点、魔法師としてここで突入せずいつ突入するのか。


 五人はそう思い、突入を決める。それに先ほどの動きを見る限り犯人たちは非魔法師である可能性が高く、魔法のあるジンたちなら余裕だ。


 「決まった」

 「よし、じゃあまずは作戦だけど二手に分かれよう。ジンとカイルドチーム、僕とラーニャとリュカチームの二つだ。最初に僕らが潜入して人質を解放するから、それが終わったら二人は派手にやっちゃっていいよ。そのかわり殺すのはダメね」


 スラスラと作戦を説明していくクリス。そんなクリスの説明を聞く四人はとっさに思い付いたとは思えないほど考えられている作戦に感心し、流石は我らの参謀と思うのだった。


 「わかったぜ」

 「わかった」

 「私もわかったけど、なんで私も潜入?」

 「それは人質を解放するときに、ラーニャには壁を斬ってもらうからだよ。そして僕らはその壁を使って人質たちと逃げる」

 「なるほどね。潜入にはリュカの力が必要だからよろしくね」

 「うん、わかった」


 全員が自分の役割を理解したところで作戦が始まるのだった。


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