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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
番外編 事件は現場以外でも起きている
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番外編Ⅰ 第3話 セナビア魔法学園から(下)

 座学の時間、担当教師の配慮もあり自衛などに使える魔法を中心に勉強することになった。


 目的は自衛の魔法の復習と同時に、生徒たちの不安を少しは紛らそうとしたのだ。


 ちなみに、なぜ休校ではなく、午前中だけ授業があるのかというと、拉致した犯人へのけん制と、拉致などでは魔法学園動じないという威厳を示すためである。


 といっても、普段から学園にいる学園長のエドワードはセイヤが拉致されたことを聞いて、教会支部に行っている。


 なぜなら教会支部にいるほうが、情報を集めやすいから。エドワードは名目上、セナビア魔法学園学園長として教会支部に行っているが、内心は完全にセイヤの保護者であった。


 ちなみに教会支部とは各地に置かれた教会の支部で教会ともすぐに連絡できる機関だ。


 自衛に関しての復習の座学が二時間続き、セナビア魔法学園は中休みになる。


 クラスには複数のグループができており、そのうちの一つのグループに見覚えのある顔があった。カイルドとクリスだ。カイルドとクリスは二人の女子と話している。


 一人はきれいな黒髪をポニーテイルにしてクールな雰囲気を纏ったラーニャ=アルンという少女。


 ラーニャはアルン家の長女で、風属性魔法を得意としている初級魔法師だ。アルン家は中級魔法師一族であるが、その実態はほとんど上級魔法師に近いと言われている。


 なぜならアルン家にはアルン流魔装剣術という魔法と剣術を組み合わせた流派が代々伝承されており、アルン流魔装剣術は魔法と同時に使用することによって、上級魔法師一族に引けを取らないほどの強さになるから。


 魔法師の間では、アルン流魔装剣術は固有魔法と同じように認識されていた。


 もう一人の少女は、きれいな金髪の髪を伸ばした赤っぽい眼をしている少女、リュカ=ティーナモである。


 纏っている雰囲気はどこかのほほんとしており、その優しい心と美しい見た目から姫と呼ばれていた。


 リュカはティーナモ家の次女で光属性魔法を得意としており、ティーナモ家は上級魔法師に分類される一族だ。そして戦闘時には後方支援を得意としている一族である。


 リュカはラーニャと並びこのクラスでもトップクラスの美少女であり、その見た目から、ラーニャが姫であるリュカの護衛という認識をされている。


 二人はとても仲が良く、天然なリュカはいつもラーニャに甘えており、その様子は仲のいい姉妹であった。


 さらにティーナモ家とアルン家は家同士もかなり仲が良く、リュカがラーニャに甘える理由の一つがここにあった。


 四人が教室で話していると、ラミアに連れていかれたジンが帰ってくる。


 ジンは昨日の実践訓練での四人の様子をラミアに説明し、授業に戻ろうとしたのだが、そこにエドワードが運悪く戻ってきて、もう一度同じ説明をさせられた。


 そのため、戻ってくるのが中休みまでずれ込んでしまったのだ。戻ってきたジンにリュカが話しかける。


 「あ~、ジンおかえり。遅かったね、何していたの?」

 「昨日、訓練で最後に四人をリタイヤさせたのが俺だったから、その時の四人の様子とかをラミア先生とエドワード学園長に話していた」

 「それはお疲れだな、ジン」

 「最後、四人はどんな感じだったの?」


 カイルドがジンのことをねぎらい、ラーニャが四人の様子を聞いた。


 「ザックはアンノーンがリタイヤさせて、ほかの三人は俺がリタイヤさせた」

 「何!? アンノーンがザックをリタイヤさせたのか!?」

  「そう」


 セイヤがザックをリタイヤさせたことに驚くカイルド。


 無理もない、いつも三人の暴行に耐えているセイヤが、まさかザックたちを攻撃するなど考えられなかったから。声には出していないもののラーニャやリュカも驚いている。


  「なるほど、そのことに事に腹を立てた三人がアンノーンを学校外に連れ出したら拉致されたってとこかな」

 「クリスの言う通りだと思う。先生たちも同じ風に考えていた」

 「四人は帰ってくるのかな?」

 「リュカ、それを今言うのはどうかと思うよ」

 「ラーニャの言う通りだぞ、リュカ」

 「ごめん……」


 リュカがしょんぼりとしながら謝る。


 「でも、リュカの言うことは気になるな」

 「うん、俺は四人がフレスタンに連れてかれたと思う」

 「僕もジンに賛成だ」


 ジンの考えに同意するクリス、しかし他の三人はジンがなぜそう思ったのか、理解できていない。


 「どういうことだ?」

 「簡単な話。犯人が金を要求してこない理由は一つ」

 「ジンの言う通りだ。犯人は四人を人体実験に使う気だと思うよ」


 二人はセイヤたちが人体の被験者になると考えていた。


 要求がない時点で金目当てではないことがわかり、衝動的に殺されたという線も低い。


 なぜなら遺体が見つからないからだ。衝動的に殺された場合、犯人は死体を隠そうとするが、教会が本気を出してしまえば、すぐに見つかってしまう。


 だが、セイヤたちの遺体は見つかっていない、となると、残る可能性は人体実験、そして人体実験が盛んなのがフレスタン地方なのだ。


 「ク、クリス君、人体実験って?」

 「実験内容まではわからないけど、生きている可能性は少ないだろうね」

 「生きているとしたら中級魔法師一族のザックが一番高いのかしら?」

 「そうだな。そして生存している可能性が一番低いのは」

 「アンノーン」

 「そんな……」


 五人がそんな暗い話をしていると、担任であるラミアが教室に入ってきた。


 しかし次の授業は自主練のため、この時間にラミアが入ってくるのはおかしい。だが、すぐに全員ラミアの深刻な顔を見て察する。


 「突然だが、今日はこの後の授業を中止にして、全員強制下校にする」

 「先生なぜですか? 四人のことですか?」


 クラスの一人であるナーズという男子生徒がラミアに質問した。


 「違う、それだけではない。先ほどこのオルナの街でまた人が攫われた。

  今度は非魔法師の少女だ。それにより、セナビア魔法学園はウィンディスタン教会から第一次警戒態勢の発令を要請され、学園長がこれに応じた。

  そのため、教師陣はこのままオルナの街とオルナの街周辺の警戒に当たることになり、生徒の安全を保障できなくからだ」


 生徒たちは何も言えない様子になってしまう。


 それもそのはずなので仕方ない。魔法学園には教会から緊急事態などに警戒態勢の要請されることがあり、その被害状況に応じてレベルが存在する。


 レベルは全部五段階あるが、警戒態勢になることなどそうそうない。


 第一次警戒態勢により、教師陣は教会と連携して速やかに問題解決に当たるため、普段安全な魔法学園も安全とは言えなくなり、生徒たちは強制的に下校させられる。


 「下校の際は必ず三人以上で帰るように、以上だ」


 そう言ってラミアは足早に教室から出ていく。残された生徒達も続々と下校を始めていき、リュカたちももちろん下校する。


 しかし彼らはどこか不満そうな顔をするのだった。


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