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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
7章 レイリア王国編
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第290話 久しぶりのレイリア

 セイヤが魔王会議で大魔王に就任していた頃、時を同じくしてレイリアに戻っていたアーサーとダルタの姿は首都ラインッツにあった。


 二人はキレル山脈でセイヤたちと別れた後、ロナの作った扉でレイリア近くの暗黒領に出て、フレスタン地方を経由してレイリアに戻ってきていたのだ。ロナの魔法を使えば直接聖教会に中に移動することも可能だったが、それでは帰国の手続き等をしていないために色々と面倒なことになるので二人はわざわざ遠回りをしたのだ。


 そのおかげで首都に戻ってくるまでに一週間程度要したが、その分収穫もあったので結果的には無駄足とはならなかった。二人は首都に戻ってくる間に様々な街を経由し、その都度レイリアの最新情報を得ていた。


 一般の民衆レベルでは新たな特級魔法師であるセイヤのことが話題の中心だったが、ひとたび裏の世界に入ればライガーを中心とした一部の特級魔法師たちに不穏な動きがあるや、レイリア魔法大会襲撃はライガーたちがセイヤを特級魔法師にするために仕組んだものであるなどといった憶測も耳に入った。


 その情報の真偽はともかくとして、一部の界隈ではセイヤの魔法に疑念を抱いたりしているのは確かだろう。それらの情報を耳にしたアーサーは何かを決めた表情だ。


 一方のダルタは特に気にした様子も見せず、呑気にアーサーに話しかける。その態度はであった当初に比べればかなり緊張が解けた様子だ。


 「それにしてもロナさんの魔法ってすごいですよね」

 「あの扉か?」

 「はい。遠距離を一瞬で移動できるなんて夢みたいです」


 ダルタが感動しているのはロナが夜属性を駆使して長距離移動を可能にする扉のことだ。この世界に長距離を移動する魔法など存在しないためにダルタの受けた衝撃は相当なものだろう。


 しかしロナの魔法の原理を知っているアーサーからしてみれば凄いとは思うものの、そこまで感動するものではない。むしろ長距離を移動する魔法は成功例こそないものの、古代から取り組まれてきた魔法の一つだ。


 「長距離移動魔法は昔から開発が進められているぞ」

 「そうなんですか? でもそんな話聞いたことありません」

 「だろうな。聖教会の上層部が長年にわたって極秘で取り組んでいる一種の国家機密だから」

 「そんな秘密をこんなところで言っていいんですか?」


 周りを確認しながら慎重に確認するダルタ。首都の、それもこんな街中で国家機密を話されたら周囲を気にしてしまうにきまっている。幸い二人の会話を聞いていた人物は近場にはいなかったので安心するダルタ。一方のアーサーは特に気にした様子を見せない。


 「別に気にする必要はない。どうせ成功しない魔法なんだから」

 「成功しないんですか?」

 「ああ。あいつらの取り組み方は精霊ルナのやり方とは根本的に違う上に要求される技術レベルが極端に高い。それこそ複数の魔法を同時に緻密に計算されたタイミングで行使しないと成功しない代物だ。おそらく向こう百年は完成しないだろうな」


 話のスケールの大きさに首をかしげるダルタ。どうやら彼女はアーサーが意図していることを全く理解できていないようだ。


 そんなダルタに対してアーサーが分かりやすく説明を始める。こういう面倒見の良さがダルタの緊張を解いた一因でもあるのだろう。


 「現在聖教会が開発に着手している魔法の固有名称は長距離移動魔法、通称ワープ魔法だ。ワープ魔法の原理としては事前にマーキングされた地点、ここでは魔晶石を埋め込まれた装置のことをさすが、その装置間に存在する物理的な距離を捻じ曲げることで近距離にしようと試みている」


 なんとなくだが理解してそうなダルタにアーサーは説明を続ける。


 「しかしここで問題になるのがどうやって物理的な距離を捻じ曲げるかだ。現存する魔法では物理的な構造が存在しないものには干渉することができないために距離という概念に干渉することができない。それでも聖教会が必死になって距離に干渉しようとなれるのは水属性の沈静化が痛みを鎮静させることができるからなんだがな」


 水属性を得意とするダルタは最後の言葉の意図していることは理解できた。そしてアーサーが何を言いたいのかもなんとなくだが察する。


 「でもその距離に干渉できるのが夜属性ってことですか?」

 「随分と勘がいいじゃねーか。その通り、精霊ルナは距離という概念に夜属性で干渉することによって長距離移動を一瞬で可能にする。だが精霊ルナの場合、距離を捻じ曲げるのではなく、消失させることで長距離そのものを消しているんだ。つまり夜属性を使えない時点で聖教会が魔法の開発に成功することはないって意味さ」


 夜属性の力をその身で体験したことのあるダルタは感覚的にその理論を理解した。確かに夜属性どころか闇属性も存在しないレイリアではワープ魔法を実現するのは不可能だろう。


 そこでアーサーが補足をする。


 「ちなみに昔は光属性を使って光の速さで移動する手法も取られたが、実験自体は成功したものの届いたものはグチャグチャになっていたためにお蔵入りだ」

 「それは……」


 アーサーの補足に呆れ顔のダルタ。光速で移動すれば体がどうなるかはセイヤを見ていればよくわかる。セイヤの『纏光』はその手法と根本的に同じなので耐久力を上昇させなければ崩壊するのは必至だ。


 「ま、その方法が一番成功に近いんだが、光速の移動に耐えられる装置を開発できるほどレイリアの技術力は高くないんでな」


 それはダクリアの技術があれば可能なのでは、と思ったダルタがそれ以上は口にしなかった。なぜならそうこう話しているうちに聖教会に到着したから。


 目の前にそびえ立つ建物はこの国の中枢機関にして、かつてダルタが所属していた場所。これから二人は国のトップである七賢人たちにセイヤ討伐失敗の報告に向かうのだ。


 七賢人たちに面会するとなると自ずと緊張してしまうダルタ。アーサーには慣れても七賢人たちには慣れないようだ。


 受付で手続きを終えると二人は奥へと通される。その際、受付嬢がアーサーのことを見て「聖騎士様!?」と声を上げてしまい、周りにいた人々も初めて見る聖騎士を物珍しそうに見ていたのは別の話だ。


 奥に通された二人は階段を使って最上階にいる七賢人たちのもとに向かうことになっている。しかしアーサーは上に通ずる階段を無視してそのまま奥へと進む。最初は久しぶりに訪れたから道を間違えたのかな、と思ったダルタだが、どうやら違うようだ。


 アーサーは何かの目的をもって進んでいる。聖教会の奥へ奥へと進んでいくアーサー。その区域は聖教会に所属していたダルタも訪れたことのない場所だ。


 そして一番奥にある古びた部屋の扉を開けて中に入る二人。その部屋はもう何十年も使われていないのか、部屋中に埃が蔓延し、至るところにクモの巣が掛かっている。その部屋を一言で表すなら忘れ去られた廃屋だろうか。


 初めて見るその部屋にダルタは驚きを隠せない。


 「まさかこんなところがあるなんて」

 「まだ驚くのは早いぜ」


 ニヤリと笑みを浮かべたアーサーが身の丈ほどある大きな箱を移動させると、その下には地下へと通ずる階段が現れる。


 「えっと、七賢人様のもとへ向かうのでは?」

 「残念だが連中のところにはいかない。今からあたしたちは地下に行くのさ」

 「……………………え?」


 突然の宣言にダルタは間抜けな声を発する以外できなかった。


いよいよ7章が始まります。これまでの話を振り返りつつ、新キャラを考えてやっと構想が固まってきました。そして振り返りついでにカクヨム版の落ちこぼれを読んだらいろいろ閃きました。2年前の高巻曰く、カクヨム版はリメイクしたものらしいです。なので振り返りがてら是非読んでみてください(という宣伝をしてみたり)。そのついでに評価して頂けるとテンション上がります。ピコンって通知来る度にワクワクです。インスピレーションも湧く湧くです。


とまあ醜い宣伝は置いておき、7章では最初から伏線回収&新事実発覚祭りになる予定なので七賢人共々宜しく御願い致します。


https://kakuyomu.jp/works/1177354054881263629#work-information

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