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落ちこぼれ魔法師と異端の力  作者: 高巻 柚宇
1章 出会いと新たな人生
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第30話 雷神の真意

 「『避雷針』」

 「!?」


 突然展開された緑の魔法陣。その色は雷神の名にふさわしい、雷属性の魔法であることを表している。


 「『闇波』」


 セイヤはこれから行使されるのであろうライガーの魔法に対して、『闇波』を行使して、その魔方陣を消滅させる。


 そしてそのままライガーに向けて殺気を放ち、聞いた。


 「『闇波』か」

 「どういうつもりだ?」


 セイヤから発せられる濃密な殺気を前に、ライガーがにやりと笑みを浮かべる。


 「許せ。ちょっと娘の選んだ相手を見極めただけだ」

 「それであの魔法か?」

 「安心しろ、くらったところで痺れるだけだ」


 ライガーに言う通り、ライガーが行使した魔法は対象を痺れさせ、動きを封じる魔法であり、そこに殺傷能力はない。


 しかし、ライガーが言っていることは普通の魔法師が使った時の話だ。ライガーのような特級魔法師が行使すれば、話は別である。


 もしセイヤがなにもせずライガーの攻撃を受けていたら、痺れる程度では済まない。最悪の場合、命にもかかわってくる。


 ライガーの魔法はそれほどの威力だった。


 だからこそ、セイヤは殺気を放ちながら、ライガーに聞いたのだ。


 「いくら見極めるからといっても、やりすぎだろ」

 「許せ、現に死んではいない」

 「そうかよ」


 セイヤはライガーという男がなんとでたらめなのだと思った。そんなセイヤに、ライガーが聞く。


 「ところでセイヤ、お前はこれからどうするんだ?」

 「どうするって?」

 「この後のことだ」

 「ああ、そのことか。決めてはないが、おそらくウィンディスタンに戻る」


 セイヤは突然この先のことを聞かれて、少し考えてから答えた。


 もともとウィンディスタン地方の人間であるセイヤは、結局のところ生活していくにはウィンディスタンに戻るしかない。


 魔法学園に復帰することは不可能かもしれないが、それでもウィンディスタンでなら何とかやっていける。


 異端の力を手にしてしまったセイヤはおそらくもう魔法師としてレイリア王国では生きていけない。


 そうなると、これからは非魔法師として異端の力である闇属性を隠して生きていくしかならない。


 魔法を使わない生活が、この先どのようになるかわからないが、エドワードの秘書やパン屋であるジョンに弟子入りして、パン屋を開く手だってある。


 セイヤはそう考えていた。しかし、そんな不安を一掃する提案をライガーがする。


 「ならうちに住め」

 「はぁ?」

 「うちなら部屋も余っているし、なあによりその方がユアも喜ぶ。それにユアにボディーガードを付けようと思っていたんだが、ユアが嫌がってな。

  それで今回の事件が起きた。さすがにボディーガードつけないわけにはいから、探しているんだが、お前ならユアも問題ないだろう」

 「ずいぶん勝手だな」


 文句を言いつつも、内心ではライガーの提案をうれしく思うセイヤ。


 「お前にもメリットがあるはずだぜ。お前は闇属性を使うのがばれたらまずいだろ? だがここだったら俺がいるから教会も好き勝手に手を出せない。それに、あのウンディーネの存在もここなら大丈夫だ」


 確かにライガーの言っていることは正しい。ライガーが特級魔法師である以上、この家に住めば、聖教会も簡単には手を出すことができない。


 「だが、俺には学園があるしな」


 もしユアのボディーガードをするのなら魔法学園を卒業していないと、「あそこのボディーガードは魔法学園も卒業できない奴だ」と守る対象であるユアが笑われてしまう。


 そんなことをセイヤは望まない。


 魔法学園は基本的に転向不可のため、卒業するにはセナビア魔法学園でなくてはいけない。


 「それに関しても問題ない。お前もウンディーネもユアと一緒にこっちの学園に通わせてやる。戸籍は偽造するが、俺たちにとっては朝飯前だ」

 「確かにそれは嬉しい話だが」

 「俺のメリットがないってか?」

 「まあな」


 たしかにセイヤたちにとっては、これでもかというくらいいい条件だ。だがライガーにとってみたら全くと言っていいほどメリットがない。


 どちらかというと、問題児を二人抱えるわけで逆にデメリットである。


 「メリットならある。ユアが安全で楽しい学園生活を送れるというな。あいつは言わないが、あの性格ではおそらく学園に友達がいないはずだ。だからお前たちがいれば、ユアにはいいと思う」

 「なるほどな」


 ライガーの回答は一理ある。だがライガーにはもう一つ大きな理由があった。


 「あとは恩返しっていうところだ。ユア一人ではおそらく帰っては来られなかったと思う。つまりお前への感謝だよ」

 「なるほど」


 セイヤは少しだけ考えるそぶりを見せたが、答えはすぐに決まった。


 「ならその提案を受けさせてもらう」

 「そうか。ありがとな、セイヤ」


 二人は話し終えると、二人で城の中へと戻っていく。


 客間に戻るとカナたち三人がガールズトークに話を咲かせており、戻ってきたライガーたちに話しかける。


 「あら、あなたおかえりなさい」

 「セイヤおかえり……」

 「セイヤおかえり!」


 戻ってきた三人を出迎えるカナたち。ライガーは、先ほど決まったことをユアに伝える。


 「ユア大事な話がある」

 「なに?」

 「こいつとそこのウンディーネがお前の護衛として一緒に学園に通うことになった」


 一瞬、何を言われたのか理解できていないユア。次第に理解していったのかセイヤの顔を見て一言。


 「セイヤ、本当?」 

 「ああ、まあな」

 「セイヤ……ありがとう……」


 そう言いながらユアはセイヤに抱きつく。それを見たリリィは「リリィも!」と言いながら、セイヤに抱きつく。


 そんなユアを見たライガーが、さらにユアに聞いた。

 

 「ユア、もしお前が望むのだったらセイヤをユアの婚約者と認めてもいい」

 「あら、あなたったら」

 「はぁ?」


 何言っているんだ、このおっさん? と言いたげな表情をするセイヤだったが、ユアがすぐに即答した。


 「婚約者にする……」

 「ちょっ、ユア?」

 「セイヤは私が婚約者だと嫌……?」

 「もちろん嫌じゃないが」

 「ありがとう……」


 不安そうに自分のことを見上げてくるユアに対して、嫌だといえないセイヤ。そもそも嫌だとは思っていないのだが、婚約といわれても心の準備が必要になる。


 そんなことを考えていたセイヤにリリィが爆弾発言をする。


 「じゃあリリィはセイヤの愛人!」

 「おいリリィ!?」

 「リリィよろしく……」

 「うん! よろしくお姉ちゃん」


 セイヤを置いて、二人でこの先について話し出すユアとリリィを見ながら、セイヤは仕方ないといった顔をする。


 美少女二人と特級魔法師の家で暮らすなど、前までのセイヤには考えられなかったが、今ではそれがセイヤの中では楽しみになっていた。


 心の中で異端の力を返してくれた声に感謝するセイヤ。


 こうして異端の力を手に入れたセイヤ、聖属性を操るユア、水の妖精リリィの新たな生活が始まるのであった。


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